蝉の鳴く頃⑥
うかうかしてても蒼天の下、僕の青春は過ぎ去っていく。
流れていくのだ。
貴重な青春を無駄遣いしたくない。
だから、自分で、ままならない分野は、素直に助けを求めることにした。
僕も反省し、改善し、変わっていくのだ。
だって意固地に自分が頑張ることで、人に迷惑はかけられない。
そこら辺が僕の分水嶺である。
同部屋の誼でアリス准尉に尋ねたら、アッサリ紹介してくれて、挨拶を交わし、早速役職就任をお願いしたら、、僭越ながらと頷いてくれた。
ああ、良い人で本当に良かった。
マジマジと良く見る。
僕と同じ背丈と同じ長さの黒髪。
柔らかで清楚そうな控えめな印象です。
薄らと幸せそうに微笑む姿が、絶対良い子であると確信できるような、カール・イングラム・エヴァ准尉は、そんな女の子でした。
押し出しの強い冒険者間でよくレッドまで昇りつめたのが不思議なくらいの当たりの柔らかいマシュマロみたいな子です。
きっとこの彼女の性格は、天性のものなのでしょう。魂に品格すら感ずる。
そこらの下級貴族では、最初から格負けするような感じです。
なるほど、…最初から格が上位であると分かれば争いすら起こらないもの。
是非見習いたいですが、これは一朝一夕で身に付けるのは流石に無理ですね。
初対面ながら、何でも許してくれるような柔らかな印象に、人見知りな僕から、いろいろと話し掛けて当日直ぐに仲良くなりました。
きっとこれは彼女の人徳に違いなく、その心地良さに甘えたくなる。
それにしても、結果、生徒会4人共同性で女子率100%になってしまいました。
これは士官学校創立以来、近年には記録にない事らしいです。
全くの実力至上主義による偶然とは言え快挙です。
士官学校生徒会役員の歴史上、これからも展開される諸々の快挙から、後々の後輩により、華と嵐の生徒会と謳われて語られることになるとは、この時、僕は露の先にも思い至りませんでした。