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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
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蝉の鳴く頃④

 今世のこの世界は、男女による能力の区分けはない。

 ただ職種により男女の偏りは存在する。

 冒険者なぞは、その最もなもので、その偏りの比率は、なんと男9対女1である。

 だが僕が実際一緒に働くならば、男女関係なく役に立つ人を選びたいから、体感なれどその比率は自然な結果なのだろう。

 今世では、女性枠などと、高下駄を無理矢理履かすそんな歪な発想する者はいない。


 地位や役職とは、実力や能力で自然と決まるもの。

 でなければ意味をなさない。


 だから、僕が公爵家のお姫様や、万能の天才と持て囃されるエトワールと対等な立場で、この場にいるのも、僕のこれまでの努力と流した血と汗を正当に評価されての結果だと分かるので…僕はあんまり気にしない方だけど…些かなれど誇らしく感じる。


 この世界には男女どちらかを優遇する発想がないから、今回トップが女ばかりなのは、本当に偶然の賜物である。

 ただ珍しいのは事実なので、口には出さないが、最後の一人も、女の子だったら面白いかなとは内心ちょっとだけ考えてしまった。

 どちらにしろ1/2の確率である。

 僕の恣意的な思惑は脇に置き、人事とは他人の人生がかかっているので公正に判断して決断したい。


 だが人見知りする僕には推薦できる人数に限りがあり狭い。その点ルピナス公爵家の令嬢は、人脈が途轍もなく広く、エトワールの頭脳に収まっている人事DATAも多岐に渡る。

 自然、ルピナス嬢とエトワールとの人事の推薦合戦の様相となり、残りの僕が絞ることになった。


 条件は、総代、副総代の子飼いや色に染まっていない独立した人、思想的に偏りのない人格的に問題ない人、ある程度一目置かれる実力者の平民である。

 今回、夏季講習に参加したのは40人、今回割りと平民率が高いとはいえ、選ぶとなると難しい。

 因みに貴族の子女は、騎士や準男爵のような一代貴族の子女でない限り、平民枠には入らないとするからルフナ、レイ、フォーチュン君らも資格外である。

クールは騎士の子だからギリ入るけど、僕の仲間と見なされているらしくルピナス嬢からクレームが入った。

 そんな調子でドンドン省いて検討した結果、消去法で決まってしまった。


 該当者は5人いたが、そこから条件に一番相応しい人を選ぶとなると、平均値が一番高い人となる。

 その人の名は、カール・イングラム・エヴァ准尉と言う。

 …

 …

 …

 …… … …誰?

 初耳の名前で、僕の知らない人だ。

 ルピナス嬢もエトワールも知らないと言う。

 先程の沈黙は、三者三様の理由があると思っていたけど、どうやら誰も知らない故の沈黙だったらしい。

 但し、エトワールはDATA上は把握していて、情報開示してくれた。

 …それほど能力・成果は突出していない。

 しかし、最後まで閲覧し終えた時、僕はイングラム准尉の異常さに気がついた。

 どの能力も一番ではないが、二番、三番の位置にいる。総じて能力は抜きん出て遥かに高い。

 成績表を付ければ、どの分野の能力も上位5%に必ず入っているから、オール5の優等生だ。


 なんてこと…全然目立たないから、今まで誰にも知られることなく埋もれていた。

 今回、護民官選出の機会がなければ、これからも当分の間、誰にも知られずにギルドに在籍してたに違いない…目立つ成果を出すまで。


 それとも、目立ちたくないから、ワザと一番にならず、目立つ成果も出さなかったとか…??

 …ありうる。

 なかなか良い手だ…真似してみたい。

 しかし、いったい、どんな人なの?

 同じ数少ないレッドだから、本部で顔ぐらい、通りすがりに合わせているはず。

 でも、…全然、顔が思い浮かばない。

 どれほど、目立つのに慎重な人なの…?!

 

 でも、もし目立ちたくなくてワザと埋没してるなら、護民官など引き受けてはくれないだろう。

 次点は、能力が著しく落ちるし偏っている。

 …比較にならないほど。

 ここは、皆の平和の為に、是非引き受けて欲しい。

 ルピナス嬢の権威と権力で強引に説得か、エトワールの合理性と功利に富んだ実理ある説得と、どちらかよかろうかと瞬時悩んだら、僕の両肩をそれぞれルピナス嬢とエトワールにポンと叩かれた。


 「お任せしましたわ。」

 「うむ、アールならば適任だろう、頼んだ。」


 …は?!


 え?

 えー、二人共、な、な、何言ってくれてんの?

 コミ障の僕にスカウトなんて、無理無理、絶対無理。

 そんな、面倒なことしたくない!

 

 このとき、無情にも、昼休み終了の予鈴が鳴った。


 会議室に使用していた臨時生徒会室から、二人はゾロゾロと帰り出す。


 「…有意義な会議でしたわ。」

 「うむ、重要懸案が一つ片付いて安心した。」

 

 ハッ!

 ま、待て!ステイだ!

 君達、話が終わったような雰囲気を醸し出しているが、まだ、何一つも片付いてないぞ。

 そんな僕の願い虚しく、二人は談笑しながら仲良く足早に遠ざかっていく。

 

 二人共、初対面のはずなのに、なんでそんなに息が合っているの?!

 





 

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