蝉の鳴く頃③
エトワールは、チョコパフェのことを全く気にして無かった。
昼休みの生徒会の会合の際、詫びを入れたらキョトンとしていた。
士官学校内の喫茶店は、何でも実家が出資してるらしく、メニューに入っているチョコは、実家が経営してるモロゾフ社の新作で、親に頼まれて試食していたそうだ。
「アールの表情が、実に参考になったぞ。」と、逆に和かに礼を言われた。
なんやてー!
昨日の僕の哀しみの気持ちを返せ。
しかし、悪いのは僕の方なので何も言い返せない。
うんうん…エトワールって結構ワルだよね
なまじ完璧だから、こちらがぐうの音も出せない点が!
もっと隙を見せてくれれば、ツッコミが出来るのにさ。
え!?僕は隙があり過ぎるだって?
そんなことは、ございませんが…。
「ちょっと、貴女達、知り合いなのかしら?」
ん?僕達がチョコパフェについて話してる際に、不機嫌そうに口出しして来たのは、ルピナス公爵令嬢とエトワールから、今、紹介されました。
慌てて丁重に自己紹介すると、ご機嫌を直してくれたみたい。
「宜しくてよ。」
口元を扇で隠しながら許してくれた。
生徒会と呼称してるが、正式名称はなく、生徒側の運営のため、自然発生した役職者と代表者の集まりです。
今回は最小の集まりで、ギルド側から総代のエトワール、貴族側から副総代のルピナス様、実力第一人者たる副総代の僕、これに本来なら平民代表たる書記・監査役の護民官が加わるが、いまだ選出されてないので今回は欠席。
実は、今回の議題はコレ。
護民官の選出は、選挙ではなく生徒会からの指名制なのだ。
それって護民・監査の意味あるの?と疑問をお持ちの方がいらっしゃるかと思うが、誰を選ぶことによって、現生徒会の色合いや度量が判断されてしまうのだ。…これは難しい。だが阿呆が選ばれる確率が高い選挙よりかは、余程確度が高いのは事実なので、制度に対する否やはない。
選挙という運に任せるよりは、責任を背負う者が問題解決出来る実力者を選ぶべきだと僕も思うから、共に闘う戦友を選ぶことができるこの制度は、現実に沿ったベターなやり方です。
因みに、各勢力の代表者を生徒会メンバーとするのは、古来からの慣わしで、その成り立ちは、最初は貴族だけだったのが、実力第一位が加わり、諍い調整のため、ギルドが介入して、最近入ったのが平民代表の護民官です。
兎に角、早急に護民官は選ばなければならない。
でなければ、生徒会として正規な活動が認められない。生徒会とはあくまでも4人(権力・実力・公正・護民)で、セットなのだ。
実際、どれが欠けても上手くいかないらしい。
今は、臨時期間、仮に認められてるに過ぎない。
因みに毎回の総代を誰にするかは、前3者から学校長が選んでいる。
今回、僕が副総代に選ばれたのは階級が最高位であり、実力ありとギルドからの評価が高かったからに違いない。
なんせ今期の依頼達成率100%だし。
累計でも99.9%ですから、僕の丁寧な仕事ぶりが分かろうというもの。
依頼者からも大変評価は高いと、ダージリンさんから聞いていて、今回辞退すると、誰かの顔を潰す可能性があると釘を刺されたので、嫌々受けました。
社会の恩恵を甘受してる以上、せざるを得ないことはある。
それにしても、今期の生徒会メンバーは、偶然でしょうが、女性ばかり。
これで、護民官も女性ならば、パーフェクトですが、まさか女性という理由で選ぶわけにはいかない。