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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
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鏡の中のアールグレイ③

 フォーチュン君に逃げられ?て、贈呈されたオレンジジュースを持って、部屋に戻ると、ラピスが起きて身支度を整えていた。


 そう言えば、ラピスはオクタマ湖トレイルを余裕のていで船に戻り、夕御飯を食べたあと日常と同じ時間帯に船室で豪快に寝てたと聞きました。

 その常に自分ファーストな行動は、終始一貫してブレがない。

 それはペンペン様に通ずるペンペン道の心構え。

 人生とは、気づかないだけで無限に選択肢があるのだけれども、もし、ペンペン道を行くならば、最低限ツラの皮の厚さと孤高を貫く覚悟は標準装備しなければ、通ることさえかなわない。


 僕は、知り合った皆とは仲良くしたい。

 互いの関係を大切にしたい。

 なにより、僕が一人では寂しいから。


 羨ましいけれど、僕には、ペンペン道を歩くことはかなわないと推察する。

 道を選ぶは、人の本質に由来するから、合わない道を無理に行くことは可能だけれども、行けば行くほどに噛み合わず、苦しい人生を歩むことになるはずだ。

 しかし、その本道を通らずとも、借りたり、真似したり、いっ時だけ歩むのならば、可能かもしれない。

 だから、僕は諦めず模索するとしよう。


 そこで、僕は考える。

 僕の本質とは、何なのだろうか?

 それが分からなければ、道を選べない。


 いや、既に無意識には、選んでいるはず。

 人生とは、選択の連続。

 僕は、もう自分の道を選んで、ここまで歩んで来た。



 …



 …



 顧みるに、僕は自分から茨の道を選んでいる気がするよ。

 あの時も、あの時も…。

 自分ファーストで、楽の方、危険からは遁走すると口では言っておきながら、全く真逆の方向へ、突っ走っている。

 それも、大抵は全身全霊を込めた全速力です。

 いったい何やってるの、過去の自分は!?

 うん、うん、今の僕、良く五体満足で生き残っているよ。


 ああ…あり得ない、あり得ない。

 僕の、危険からは、なるべく遠ざかりたい、全力で逃げ出す思想からは、相入れない数々の行動。

 しかし、もう一度同じ場面に遭遇したとしても、僕の選択行動は変わらない。

 ならば、僕の目指す思想と現実の行動に乖離があるのだ。

 これ如何に?


 僕は、首を捻った。



 …




 この時、ラピスが僕の方に振り向いた。

 ジッと、僕を真剣に見つめて来る。

 …

 「姫さま、アンタ大丈夫なの?」 

 挨拶も何もない、つっけんどんな口調で聞いて来る。

 姫さまと形容してるけど、アンタ呼ばわりの敬意もへったくれもない口調です。

 「アンタが帰って来ないから、皆、寝ないで心配してたんだからね。アンタ弱っちーんだから、無理すんじゃないわよ。ハハン。」

 後半に至っては、鼻息荒く、マウント取るような物言いになっています。


 ああ…歳下で、豪快に寝ていたラピスに、こんなことを言われるなんて…


 僕は、刮目して、ラピスの眼の奥を垣間見た。

 「な、なによ!…やるっていうの?」

 小さくファイティングポーズを取るラピス。

 

 けど僕は、…普通に歩いて、ラピスの前まで来るとラピスを抱き締めた。

 「あ?あ?あー!あきゅぅー…。」

 ラピスは棒のように硬直して、奇妙な声を上げている。

 …でも、逃げてなく、その場にとどまっているから、拒否られてはいないと解釈する。

 

 僕は、ラピスの瞳の奥に、心配してくれた心の動きを見たのだ。

 (…ありがとう。心配させて、ごめんね。)

 僕の胸のうちで、膨れた思いは言葉には出来ない。


 だから、僕はラピスを抱きしめた。

 けど、思えばこの手段は、女の子同士でしか使えないから、今世、女の子で産まれたのは、僕には都合が良かったかもしれない。

 感謝の思いを込めて、ギュッとする。


 …


「…ふしゅゅ。」

 ラピスが妙な音を出して脱力してしまったので、抱擁を解いて、抱き上げて見ると真っ赤な顔して口を半開きにして、ヘラヘラ顔で気絶していた。

 …

 あれ?僕、そんなにキツく抱き締めてないよ。

 何故に?あわわわ…




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