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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの冒険
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保険

 ああ、僕があらかじめ、こうなると分かっていたなら……。





 実は、僕は、あらかじめ、こうなると分かっていた。


 予知ではない。

 予測だ。

 大抵の事象は、過去の蓄積から予測できる。

 急変するのでは無い。

 臨界を越えて、現象に現れるから急なように見えるだけで、一つの大きな現象は、その前に約30の小さな現象があり、一つの小さな現象の前には、約30の兆しがある。


 全ては、必然なんだ。


 結果には、原因が必ずある、因果と呼ばれるものだ。

 無から、有が急に現れることはない。

 急なように見えるのは、僕達が、見ようとせず、聞こうとせず、考えようとせず、感じないからだ。

 見えなきものを見て、声なきものの声を聞く…。


 本当は皆分かっている。

 感じている。

 無視してるだけ。

 もっと丁寧に周りの事象を、そう、それは

    滝を外側から眺めるように観れば

    内側から流れを感じるように観れば

大抵の結果は分かるはずだ。

 だって、滝は上から下に流れるだけだろう。



 予測は特別なものではない、誰でもできる。

 今選択した行動が、未来にどうなるか、想像は誰でも容易にできるだろ。出来ないではない、やらないだけ、気づかないふりをしてるだけだった、前世の僕は。


 今世では、一つ一つを丁寧に慈しむように生きている。

 それは僕自身を含んでいる。

 だって僕自身も世界の一部だからだ。


 自分ができることに気づけば、あとは精度を上げるだけ、僕は凡人だから、毎日を丁寧に生きるだけ。

 生まれ落ちてから19年の成果が今の僕だ。




 僕は、今、無数にあった世界線の一つを歩んでいる。

 遅いか早いだけで、大抵の世界線に襲撃は存在していた。

 煙に巻かれ絶対絶命前の状況になるのは分かっていた。

 クラッシュさんが麻酔弾で寝てしまうのは、予測できなかったけど…。



 …だから、僕は、保険を掛けていたんだ。





 10メートル先の壁が壊れ、黒色の兵隊が蟻の様にワラワラと進入してきた。

 本邸は火に巻かれている。流れてくる煙越しに兵隊がこちらに来る様子が、見えた。

 僕はそっと呟く。

 「search。」…パターン赤。


 ジリジリと近づいてくる黒蟻のような兵隊。

 一個分隊はいるにちがいない。

 頭を覆う兜状のモノは、よくよく見ると目元が紅く光っている。

 暗闇でも見えるサーモスキャン機能?


 指揮官と思われる者を先頭に、銃火器を構えて、近づいてきている。

 だが、10メートルから近づいて来ない。足が止まった。


 「投降しろ!テンペスト、周りは完全に包囲されている。いくらお前が抵抗しても無駄だ。抵抗するな、いくらお前でも、100人以上相手に勝てるわけがない。勝てるわけがないんだ。手を挙げて武装を解除しろ、抵抗はするな、するなよ、絶対に抵抗はするなよ。」

 敵指揮官からの投降勧告だ。

 よく見ると、銃を構える手がカタカタ震えている。


 これではまるで、僕が人を襲う大型獣のようだ…少し心外です。


 ああ、僕は悪いスライムじゃないよ。と言いたい。


 さすがに、この距離で一部隊に囲まれて銃弾の雨に晒されるのは勘弁願いたい。僕は魔力防御膜を常時展開してるけど、地味に痛いし。

 痛いのは嫌い。


 指揮官が、銃を突きつけ、再度、口を開き掛けたとき、それは現れた。






 空を一頭の青い馬が、駆けていく。

 まるで青い流星のようだ。


 次いで、青い流星群が降ってきたかのように感じた。

 庭に次々と降り立つ青い人馬。


 空から投光器の光が何本を地上を照らして、辺りは昼間のようだ。

 本邸の火災も、いつのまにか消火活動中だ、あの水量では直ぐに鎮火するだろう。

 空を駆けて次々と現れる青い人馬は、地上の蟻達を囲んで剣を突きつけていく。

 トビラ市を守る最強の盾の一枚、青藍騎士団だ。

 過去現在の事象のカケラから、近々に襲撃があること予測していたので、根回ししていた、あと外周にも警戒員は張っていて、異常があれば騎士団まで直接連絡するようにしていた。

 これは用意していた保険の一つが効力を発揮した当然の結果だ。


 黒蟻の指揮官が、顔を覆っていた面体を上げ、信じられないように辺りを見渡した。

 そこで僕は、遊び心で指揮官を指差し、こう言った。

 「おまえは、「そんなバカな。」と言う。」

 「そんなバカな…。」

 指揮官は、ハッとした顔をして、僕を見た。



 そんなに穴が開くように見つめられても、何もでませんよ。

 



 

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