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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
431/618

入学SUNDAY

 今日は、士官学校入学の日である。

 僕は制服に着替えて、必要最小限の手荷物を抱えてギルド前に集合した。

 他の大きな荷物は既に配達済みです。


 士官学校は都市内にはない。

 少し辺鄙な周りが海の緑もある所にあるので、ギルド前からバスと船で送ってくれるのだ。



 ・ー・ー・



 エトワールを指導役として招いた予習勉強会は、時間が足りないために、なし崩し的に合宿となり、前日まで皆んなで勉強してました。

 なんと、そのエトワール講師の恐るべき勉強方法は、…全記憶である。

 なんでもエトワール先生は、一度斜め読みすれば、自然と記憶してしまう体質の持ち主で、何故私達が覚えないのか、さかんに不思議がっていた…この天才め!

 …皆んなを呼んでいて本当に良かった。


 それでも不明な点は、エトワールが解説してくれた。

 あとは詰め込むのみです。

 エトワールが言うには、とにかく基礎を覚えなければ、理解も覚束ないという。

 こうして地獄の合宿が始まり…そして、終わった。


 内容は割愛する。

 勉強してるだけだから、特に言うこともない。

 一緒にご飯作って食べたり、洗いっこしながらお風呂に入ったり、お喋りしながら川の字で寝たのは楽しかったけどね。


 …



 ・ー・ー・


 

 …つらつらと合宿の苦楽を思い返しながら、ギルド前で待っていると、今期の夏季講習組が続々と集合してくる。

 毎年、10人と満たず、該当者なしの年もあるのに、今期は大幅に大量増員なのは、名簿で見て分かっていた。

 彼らは、貴族、平民、富裕、貧困、老若男女関係無く実力だけで選ばれたブルーの精鋭達です。



 僕らが前例を作ったハクバ山探索は、あれから定例化されて教養訓練講習兼選抜試験として本格実装されて、ショコラちゃんやルフナ達を0期生とするなら、今年度、第3期まで実施されたと聞きました。

 今日来てるのは、それら選抜に受かった者達全員です。

 だから顔馴染もいるけど、全く知らない者達も結構いる。

 …

 全体の傾向を見ると若いモフモフさん達が多い。

 彼ら獣人達は、古代以降に派生した新しい種族とされ、純粋な人族からしたら、人ではないとして受け入れがたい信条の者達も少なくはない。

 諸々の事情により、彼らの社会的地位は全体的に低く、裕福層は少なく、獣人の貴族は、神獣族、王族等の特別の血族でなければ、まずない。

 よって、今まで士官の獣人は、稀だった。

 今までは…。


 周りを見渡せば、半分近くが獣人の方々です。

 もちろん選抜試験に合格してるのだから、レッドの制服を着用し、階級は全員准尉で星は付いていない。

 …

 これは、新しい風が吹いているようで…実に喜ばしい。

 僕は、相応しい者が実力でのし上がればいいと思う。



 僕自身は、彼らを人族より下にみる意識はない。

 学校時代には獣人の友達もいたし、逆に客観的にみれば、彼ら獣人は肉体面に関して人族を遥かに凌ぐ能力を持っているから、比べてみれば獣人達の方が人族よりも優れていると思っている。

 彼らは人格的にも、おおらかで、友誼に厚く、尊敬できる人達が多い。

 力が強く感覚に優れてるから、ギルドのブルー層には獣人達の占める割合は3割と、人口割合の1割以下より多く多数を占めている。

 それでも選抜官のレッド最終面接時に落ちて、今まではブルーの層で燻っていた。

 

 僕は、これを差別とは思わない。

 獣人達全体にレッドたる実力が無かっただけの話しです。

 人族でも、ブルーからレッドに昇格するのは至難の技です。

 もし、これを前世の世界のように、獣人枠なるものを設けたりしてたら…僕は、それこそ差別だと思う。


 何故なら…それは獣人達を下に見た馬鹿にした制度だ。


 妙な概念を入れ込むと、実力制度自体が歪んで、結果、全体の質が落ちてしまう。

 それは個の誇りを傷つけ、矜持を奪う行い。

 組織内のいたる所で歪みが生じ、弱体化や滅びの一因になってしまう。

 だから、超古代の歴史に学んだギルドは、多少の誤差は承知の上で、実力至上主義を保持し、制度を変えようとはしなかった。

 もし、ギルドが主義を曲げ、妙な制度を取り入れていたら、今眼前の、この晴れやかな光景は無かったはずです。


 …彼ら獣人達の瞳は誇りに輝いている。


 厳しい環境を彼らは生き抜き、自らの実力で、この場所にたどり着いたのだ!

 

 …


 感慨深けに、うんうん頷きながら、その光景を眺めていたら、大声で声を掛けられた。

 因みに、頭にシロちゃんを乗せたペンペン様も、僕の隣りで真似して、うんうん頷いている。


 「アールグレイ様ー!」

 明朗な僕を呼ぶ声に続いて、人間大な質量がドーンとぶつかって来て、…よろけました。

 その質量は、柔らかくて暖かく良い香りがする。

 傍若無人に抱き締められて、スリスリされる。

 「お久しぶりです。アールグレイ様、お懐かしゅう御座います。」

 ショコラちゃんです。


 うんうん….久しぶり…正確に言うと一日ぶりですね。


 言うほどに久しぶりでないのは、言うまでもない。

 合宿でも24時間一緒でしたし、更にこれまでもハクバ山探索時のメンバーとは、入れ代わり立ち替わり、依頼で偶然、出会うのだ。


 ダージリンさん辺りが、贔屓にならない程度で、サービスで一緒に受注してくれてるのかも。

 ダージリンさんは、そこら辺…何も言わないけどね。



 ジャンヌとアンネの姿も、ショコラちゃんが来た方に目についた。

 仲良く一緒にきたらしい。


 この時、ゾロゾロと夏季講習の参加者が集まりつつある中、人波で見えない向こう側で、騒ぎが起こった。

 …乱暴な男の声が聞こえる。

 

 …むむ、争いですか?


 だが、僕は動かない。

 誤解してる人がいるけど、僕は争いは好まない。

 ギルドの依頼受注内容をみれば、探索、採取、清掃などなどを好んで受けて慎ましく暮らしているのが分かる。

 護衛依頼を受注するは少ない。

 危険な依頼などは、入用な時、仕方無く受注している。

 ここら辺は、今世でもままならないものです。


 要は、僕から争いに首を突っ込む趣味はない。

 僕は、実は平和主義者なのです。


 多少は気になるけど、僕に駆け付ける気はない。


 だが、この時、隣りにいたペンペン様が「…ウキョウキョ?」言いながら、テトテト歩いて行ってしまったのだ。


 …


 え?…しまった!

 こう見えてペンペン様は野次馬根性が旺盛で、普段動かないくせに、こんな時だけ腰が軽い。

 「ま、待って、ペンペン様!」

 争いに巻き込まれたら、危ないよ。


 僕は、ペンペン様の後を追うようにしと、駆け出した。



 

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