君に贈る夢(後編)
初め、何だか理解出来なかった。
何故、おじさんが、娘さんに頼まれたと言っていた紙袋が瓦礫の側に転がっているのだろう?
あれ?あのおじさんは何処だろうか…?
僕は、辺りを見渡した。
何処にも、彼の姿は見つからなかった…。
…
……………………
僕は、瓦礫の山に近づいた。
近づくのが、何故だか怖い。
紙袋と瓦礫の間には、…主のいない革靴が片方だけ転がっているのが見えた。
ああ…
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……………………………………。
…………………………………。
……………………………………。
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もう一度、瓦礫の山を見る。
…………………、この質量は……………。……分かっている。
………………………………………………。
僕の心臓は、バクバクとうるさいほど脈を打っているというのに、身体の芯が、とても冷たく感じられた。
ああ…あの時、…………………………………
この結果は、僕の……………。
…
「やあ、美しいお嬢さん、其処は危ないよ。良ければ僕が側に付いて一緒に避難しようじゃないか。俺の名前はギア・ドリュー・ニルギリ。ニルギリ公爵家の次代の当主さ。」
呼びかける声に、反射的に顔を向けると、被災地に相応しくない派手な衣装の若い男が、蒸気した顔で僕を見つめていた。
その男の足元から、グシャリと何かが潰れた音がした。
目線を下に向けると、イヅヅ屋の紙袋が踏み潰されていた。




