暴風とペンドラゴン(続編)
鎧武者さん達とのわだかまりが、すっかり解消した処で、僕の腕の中で、おとなしくなったルーシー君に問うた。
「ねえルーシー君、僕の処に来るのはどうかな?君さえ良ければ、うちは僕と二匹だから、一緒に住んで養うことも出来る。君は歳から言えば、まだまだ子供だから…子供は大人に甘えて良いのですよ。」
周りでは、鎧武者さん達も僕の話しを静かに聞いている。
彼らも、壇上でのルーシー君の懺悔にも似た心の叫びを聞いてしまっていたから…思う処もあるのだろう。
もしかしたら、僕が引き取りを言い出さなければ、黒鎧武者さん辺りが声を掛けていたかもしれない。
ルーシー君は、腕の中でおとなしい。
きっと色々と考えてるに違いない。
うんうん…君の人生だもの。
僕としては、放って置けないので来て欲しいけど。
僕が決めるべき事柄ではない。
でも、よくよく考えてから、来ると決めて欲しいと願う。
…しばし待ちます。
…
…ん…まだかしら。
…
ん…あれれ?
…
何だか寝息が聞こえる…まさか?!
僕は、ルーシー君に回した腕を解いた。
そこにはすっかり熟睡して意識の無いルーシー君がいた。
僕に、もたれ掛かって瞼を閉じて脱力して寝息を立てている。
すっかり安心しきって寝てしまったのか…。
…顔が綻んでしまう。
だって、これって、信頼されてるんだよね?
ルーシー君の寝顔を見てると、痺れる程に小さい子って可愛いなと思ってしまう。
別に僕はショタコンでは無いよ。
僕が今感じているこの暖かい思い…これは生物の本能に根付く感情であるに違いないと思う。
…
そうそう…母性本能というものに違いない…きっとそう。
ルーシー君の頭を膝に乗せて、しばし休む事にした。
窓から差し込んくる朝陽の明かりが眩しい。
ルーシー君の寝顔を見ながら、頭を撫でる。
こんなに朝早くから起きて働くとは、ルーシー君は偉いなぁ。
うんうん…偉い偉い。
僕が、君の歳の時は、こんなにも朝早くなんて起きたこともない。
…
だって、朝はゆっくりと寝てたいものです。
…
朝はね、…珈琲の香りと焼けたパンの匂いがする中、幸せな気分で起きるのが素晴らしい。
寝惚け眼で起きると、居間で、父が珈琲を飲み、母がパンを焼いて、姉が食べて、皆んな笑っている。
窓から朝陽が差し込んで、皆を照らしている。
今は遠い二度と戻らない僕の幸せな記憶…。
…
人生とは、生きるとは、それだけで大変なもの。
…大人になれば尚更です。
だからさ…子供の時ぐらいは、思い切り大人に甘えて、夢をみて、将来に胸を膨らませて、幸せいっぱいの記憶を刻めば良いのだ。
その幸せの記憶が、将来どんなツライ目に合っても耐えられる糧になる。