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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの救出
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キャンブリック決意し行動を起こす

 人が幸せそうに微笑んでるのが好き。

 それは光り輝く春風が吹くのに似て、幸せな気持ちを運んでくれる。

 そう…幸せとは一人だけのものではなく、伝播していくものだと、私は思う。


 ここに住む全ての民に幸せになってもらいたい。

 その為の努力を惜しむ気はない。

 だが、神ではなく人の身であるならば、出来る事と出来ない事がある。

 ましてや私は、伯爵家の後継候補の一人であるとはいえ、未だ幼い子供に過ぎない。

 歯痒い…限られた力しか持たない我が身が悔しいと思う。

 そんな気持ちで熟慮に熟慮を重ねた結果、私は結論をだした。


 …自分が出来る事を為す。


 だから、私の立場で利用出来るものは利用する。

 準備は怠らない…用意は周到に、人事を尽くして天命を待つのだ。


 ロンフェルト卿の死の真相については、情報収集に時間を掛けた…足跡は残るだろうが仕方ない。

 或いは私が万が一の時は、誰かが足跡を辿り追い付くサインになるかもしれない。

 ブツクサ文句を言いながら、心配して私を追って来るギャルの姿を想像する。

 或いは、それはジルや、もしかしたらメイドのメイベルかもしれない。


 結局、ギャル達には面倒を掛けてしまう。

 しかし、それでも私は単独で行動することを選んだ。

 或いは、私が指示すれば力ある有能な彼らは、ロンフェルト卿の名誉を回復させ、仇を討ってくれるかもしれない。

 

 だが、それではダメなのだ。

 何がダメかと言うと、私自身が納得しないだろう。

 何故なら私がロンフェルト卿と約束したのだ。


 あなたの窮地には、私が助けに行くと。


 それは、ロンフェルト卿自身も知らない私の中の約束。

 果たされなかった約束…それは暖炉の灰の中の熾火のように今尚私の中で燻っている。

 

 ロンフェルト卿が、私の事をどう思っていたかは分からないけど、幼い私にとって、あなたは、父であり母であり家族であった。

 身内の仇討ちは、身内であろう私自身が取らなくてはならない。

 この様な考え方は、領主候補としては失格かもしれない。


 だけど私には理想の姿がある。


 私はあの時、魅せられたのだ。

 なによりも、大地に降り立ち、身を呈して私を護り切った[暴風(テンペスト)]と呼ばれる少女の姿に。

 彼女は、行動で語ってくれた。

 …力強く、雄弁に。

 (絶対に護り切ってみせる…たとえこの身が砕けようとも。)

 彼女に護られている間、彼女の力強い暖かな思いが沸々と伝わって来て泣きたくなった。


 私もかくありたい。

 上から指示だけするでなく、皆と同じ大地に立って生きていきたいのだ。

 怖いけど…今はその為の第一歩を踏み出す。


 …


 ここ半年以上、努めて体力作りに力を注いだ。

 短距離の走力に関しては、ギャルに匹敵するまでになった。

 人間やれば、出来るものですね。

 魔法に関しては、お姉様を真似してsearchを密かに修得することにした。

 そのコツをお姉様と端末で連絡を取り合いながら伝授してもらった。

 修得してから、分かりましたけどsearchの魔法とは、魔力による耳目に相当します。

 凄い…私の世界が広がったような感覚です。


 …


 

 調査活動は、とにかく確証を得るまで聞き回りました。

 但し、意図を誤魔化す為に、質問は多岐に渡るようにする。

 城内を巡り、見聞を広げると称して、質問をしまくる。

 皆、幼い姿の私に油断して、親しくなると情報を喜んで提供してくれる。

 その際、searchを使い潜在的な敵味方を判別する。

 パターン赤は、意外と少なかった…全体の0.01%。

 それでも、私にはショックだったけど。

 …大丈夫だ。

 お姉様の姿を脳裏に思い描く。

 彼らが私に恭順するほどに、私自身が今よりも、より強くなり、彼らが幸せになるよう働きかければよいのだ。



 城内の話しからでも、ある程度確証は得られました。

 経理部長は黒だ。真っ黒です。

 ここからは、悔しいけど大人に動いてもらわなければならない。


 …


 お父様と非公式に面談し、後継者候補として経理部長を告発する為の証拠固めを依頼した。

 お父様からは、政治とは清濁合わせ呑むことも必要であり、ある程度は泳がし、意図を辿るのが大事であると…やんわりと拒否されたが…最終的には頷いてくれた。


 大丈夫…私には理想の姿がある。


 私は、私で、やるべき事をやるのだ。

 ロンフェルト卿には、私と似たようた歳の嫡男がいると聞きました。

 …会いに行くと決めた。

 私のスケジュールは数ヶ月先まで空かない。

 言えば絶対に止められる。

 ならば、迷惑を掛けるのは承知の上で、一人で行くしかない。


 ああ…彼には酷いことをした…詫びて、許しを請いたい。

 招聘して、出来得るものならロンフェルト家を復興したいのだ。



 ジックリと計画を寝る。

 計画を実行すると、お姉様には会えない。

 でも、ここで私は保険を掛けることを思いついた。

 少し、ズルいかもしれない。

 ギルドにお姉様を指定して、護衛を依頼する際、期日だけ指定して、ワザと具体性を持たせずに単に護衛として依頼したのだ。

 もし、私が窮地に陥ればお姉様が護衛として助けに来てくれるはず。


 飛ぶ時は、いつも一人だ。

 お姉様がいつしか呟いていた言葉を思い出す。

 怖い…怖いけど勇気を振り絞り私は行く。


 保険は…実際には、そう上手くいかないのは分かっているけど、これは御守りみたいなものだから…良いよね?



 

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