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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの救出
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辺境伯の娘(後編)

 一年前の私は、まだ幼かった。

 寂しがりやの子供だった。

 自分の中で、幼い子供であることを、言い訳にしていた。


 今思えば、なんて幼かったんだと感傷に浸ることすらできる。

 今では、当時の私を客観視出来るまで、成長したと思える。

 でも、…まだまだダメだ。


 私には憧れがある。

 アールグレイお姉様のようになりたい…でも、多分成れないだろうなと既に諦めの境地もあるけど、少なくともお姉様に恥じない生き方をしたい。


 お姉様とは、たった一週間だけの短いお付き合いでした。

 でも、お姉様の強固な意志力は、顔に似合わぬ、あの大胆不敵で強引かつ果断な行動力で、私の目に強烈に焼きついている。まるで頼りになる凛々しくて格好良いお父さんみたい。


 それなのに繊細で感受性豊かで、全てを包み込む包容力があるのだ…あの抱き締めたときの柔らかさと良い香りは反則です。…安心感が半端無いです。まるで私の事を全て理解して許してくれる優しいお母さんみたい。


 こんなに神々しくて、遥か高みにいるはずの人なのに、私の処に降りて来てくれた。

 手に取り、抱き締めて、元気づけてくれたり、ご飯を作ってくれたり、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、いつも隣りにいてくれる。


 …こんな人、他にいないよ。


 お姉様の事を考えるだけで、涙がツーと出て来る。

 胸が、ポカポカと暖かくなる。


 ああ、お姉様のような人が、この世の中にいるならば、…存外、大人になってこの世界を謳歌するのも悪くはないと思う。


 

 …




 アールグレイお姉様は、約束を守って私を護りきった。

 怪異を倒し、ドラゴンさえも征伐し、悪魔と交渉して自分の生命を天秤に賭け、世界までも救った…。

 そればかりか更に敵を赦し、改心させて昇天させてしまったのだ。


 …実は、本当は何処ぞの神様なんじゃないの?

 

 でも、私は思うのだ。

 お姉様の本当の凄さは、あの力や技ではない。

 選択の幅はいくらでもあったはず….それこそ無数に。


 なのに彼女は選んだのだ…私を命懸けで護ることを…戦った敵を赦すことを…そして、生命を悪魔に差し出して、この世界を救うことを。

 

 こんなに崇高なのに、身近にいて抱き締めることが出来て、良い匂いだし、超絶可愛いし、もうずっと一緒にいたいよ。

 …好き、大好き、許せるならば結婚したい。

 …女の子同士だから無理だけど。


 ならば家臣として抜擢したいとも考えたけど、….しばし逡巡して言うのをやめた。

 だって、お姉様は、無限に広い、この青空を彼方まで羽ばたいていく自由な鳥だ。

 私という狭い鳥籠だけに、囲うことなど出来やしない。



 …




 お姉様と別れた後、私は車中で泣いた。

 だってボロボロと後から後から涙が出て来るし…


 そうしたら、隣りにいたギャルが抱き締めて頭を撫でてくれた。

 私はアールグレイお姉様のような大人の女性を目指す。

 でも、たまには、…まだ子供でも良いよね。





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