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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの救出
330/618

鎖断ち

 暗闇に目を凝らす。

 何かが動いている気配がしている。

 

 僕がいるのはバレている…気がする。

 廊下のかなり向こうには、扉を形どった明かりが漏れている。

 …遠いな。

 強行して押し通るには遠過ぎる。

 …退くことは出来ない。

 もはやキャン殿下を救出するには戦うしかない。


 心中で溜め息を吐く。

 勘違いして欲しくないけど、僕は戦うことは好まない。

 春の陽だまりで日向ぼっこしてるだけで生活出来るなら、そうしている。

 事実、避けられる戦いは避けてるし、僕が戦うのは如何ともし難いときだけ。

 例えば、誰かを救けるとか護るとか…そして僕の自由を阻害したとか…。


 どうも今回は、誰かの思惑に誘導された妙な心持ちがするなぁ。

 それは猫の髭に糸が絡まるような不快な気分…。


 ここには自分で探り特定して強襲した。

 サンシャに来たのは全部自分で決めたことで、誰かに指図されたわけではない。

 だが何やら反発心が湧き起こるのだ。

 上を見上げる…人形を操る1本の細き糸が見えた気がした。


 僕の心を、意思を、誘導されたくはない。

 遥か昔の鎖に縛られて身動きすら取れなかった記憶が僕に告げる。



 捕らわれてはいけない。

 見えない鎖を断ち切れ。



 だから、僕は今世では、自分の道は、自分で選び、自分で動くと決めている。

 僕の人生を決めるのは、僕自身だ。

 それは僕の思考にまで及ぶ。


 僕の行動ばかりか、意思までも誘導する鎖や糸があるならば断ち切るまで…。

 

 細かいことは考えない。

 邪魔立てするのならば、全て斬るまでのこと。

 

 緩急自在、歩きながら刹那の時の狭間に刃を徹す。

 暗闇に鈴の()を鳴らす。


 …


 時を分割したら、何処まで人はそれを認識出来るか?

 実は答えは既に判明している。

 1秒の18分の1秒以下まで分割したら、その間の出来事は人には認識出来ないのだ。

 つまり、その間に刃を徹すと斬られたことすら気付かない。


 …


 「橘流居合術、鎖断ち…縦横無尽撃。」

 幾度もなく鯉口を切り、刃を元に戻す度に鈴の()の様な音が暗闇に響く。

 その連撃の範囲は廊下の中央は勿論上下左右いずれも網羅している。

 誰も逃げる事かなわずの剣である。

 そして刀に神気を通した鎖断ちの連撃であるからして、見えない糸も鎖も全て斬り裂く。

 「誰だが知らないけど、…全てお返し申す。」


 刃が何かを通るような感触が偶にする。

 人では無い、何か小さくて飛んでる感じがする。

 舞うように刃を振り抜きて、前へ前へと進む。


 斬る、斬る、全て斬り裂いていく。

 

 辺りが僕の神気で満ちて廊下が完全浄化された頃、扉の前に着きました。

 暗闇で何か倒したみたいだけど正体は不明。

 だって見えないし…。


 でも質量が人間大のモノが逃げていく気配がした…。

 去る者は追わず、消え去るならば良し。


 扉の前まで来たから、後は開けるだけ。

 鬼が出るか邪が出るか、さあ、僕の前に立ち塞がりし者よ。

 覚悟は良いか?


 殺意には殺意で返すまで…。

 

 僕は扉を開けた。



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