表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの救出
329/618

女王蜂(後編)

 早朝、目覚めのベッドで秘書子ちゃんから、[暴風(テンペスト)]の戦闘データに目を通す。

 心地良い目覚めだった。

 身体中をエナジーが巡っているのが分かる。


 ふんふん…。

 最初に結論が記載されているのを見る。


 [暴風テンペスト]の圧勝。


 やはり、一蹴されたか…その戦闘内容を見ると、てんで相手になっていない。

 秘書子ちゃんはあれから至急で殺し屋、戦闘屋、傭兵に[暴風(テンペスト)]抹殺を依頼してくれたみたい。

 そればかりか、あの短時間で情報を活用、解析、絵図を描きワザと情報を流して[暴風(テンペスト)]を罠に掛けた。

 今現在の状況を活用しているだけだから不自然さが全く無い。恐るべき手腕だ。

 昔、妾が潰した[蜘蛛]のアジトにいた小さいこの子を秘書に妾がスカウトした。

 言わば[仔蜘蛛]であるが、妾の役に立つならば、それで良い。


 ふふん、仕事が早いのは良い事よ。

 当たり前の事だけど、それが為されるのは気分が良い。

 鼻歌混じりに報告書のページをめくる。


 こいつらが[暴風(テンペスト)]に勝てないのは分かっていた。しかし、その戦闘内容はプロなのに何て情け無いていたらくだ。

 もし、うちの社員だったならば懲罰房入りで叩き直される弱さよ。

 これが中堅の最良処かと思うと、質が下がった感があるわ。

 

 まあ、結果は分かっていたけどね。

 [暴風(テンペスト)]は、私と同じ表最強十本指入りしてる程だから…つまり私と同じ位の強さだということ。

 だから、これは確認作業。

 私と真に同格であるのかどうかの。


 詳細に目を通す。

 蝙蝠、武者鎧、etc…冷徹者(アイスマン)…ギョッとした。

 表最強十本指の[冷徹者アイスマン]の名が載っている!?

 詳細欄には、偶然邂逅したらしいこと、[冷徹者アイスマン]の主の息子が戦うことを命令したらしいが、その命を退け、戦いには至らなかった事が記載されていた。

 [冷徹者アイスマン]が戦うのを避けた…?!


 報告書をグシャリと握り潰す。

 いかなる理由があろうとも、何の躊躇なく生命を摘み取る百戦錬磨の[冷徹者アイスマン]が命令されたのに戦うのを避けたのだ。

 妾にとってこの意味は大きい。

 つまり[暴風(テンペスト)]は、[冷徹者アイスマン]に認められたのだ。

 少なくとも戦うには一筋縄ではいかないと。


 身体がガタガタ震える。

 涙がポロポロと溢れて落ちる。

 

 いつしか妾は泣いていた。

 嬉しい…嬉しい…嬉しい…。

 これは、嬉し涙だ。


 これで妾が戦う事が出来る…全力で。

 いつから手加減をし始めてたのだろう

 戦うことに飽きを感じたのはいつからだ?


 両手の平を見るとブルブルと震えているのが見てとれた。

 その手の平に、興奮し過ぎて鼻血がポタポタと垂れた…。

 「アズ!」

 思い出した秘書子ちゃんの名前を叫ぶ。


 急いで入って来た秘書子のアズが、妾の姿を見てギョッとしたのが見て取れた。

 アズが急いでティッシュを手にして持って来る。

 妾はティッシュで涙と鼻血を乱暴に拭き取りながら、アズに命令を出す。

 「[暴風(テンペスト)]の位置の特定と案内しなさい。出陣よ、妾が出るわ、…そして勝つ!」


 寝室内に妾の大声が響き渡る。

 エナジーが身体を巡り満ちて、身体中が熱くて震えてる。

 分かっている…久方ぶりだ…これは武者震い。


 …


 まずは冷たいシャワーを頭から浴びて、冷やす。

 冷たい水が心地良い。

 多少は頭が冷えた。


 …


 それにしても、秘書子ちゃん、呼んだら直ぐ来たわ。

 いったい、いつ寝てるのかしら?

 確か妾が寝る際、まだ居て、起きたらもう居たし。

 あの子ったら全く秘書の鑑ねぇ…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ