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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの救出
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ギャル・セイロン大いに悩む(中編)

 近い、近い。

 何だか距離感が近過ぎる。

 メイベルもジルも、私との距離が近い。


 あれからメイベルはよく背中や胸に抱きついて来る。

 柔らかい感触が今も当たっている。

 それを見たジルが、私もするべきかと検討してる顔つきをしている。

 いや、止めて下さい。

 軽装備とはいえ、鎧を各所に着けているジルに抱きつかれても痛いだけです。

 それでもピタッと貼り付くように近いし、喋る時も顔を極端に近づけてくるから、思わず照れてしまう。


 なんで君達、そんなに近いの?

 そう言えば、不良娘の衛士の後輩のセロも、途中からやたらと距離感が近かった。

 昨今の、若い子は距離感が近い事に頓着しないのかも。

 もしかして私の感覚は、最早古いのかしら…?

 歳をとった可能性に密かに慄く。

 いやいや、私まだ若いからピチピチの20歳ですし。


 …


 あれから、私達はトビラ都市に無事到着した。

 冒険者ギルドにて、運転手の依頼をあらかじめ出して置き、車を預ける。

 なんと来たのは女の子だった。

 今年、学校を卒業する予定の15歳で平民でありながら特待生だから私優秀ですよ、安心して下さいなと自己紹介される。

 運転が好きで、学校のお休みの日は依頼を受けて生活費の足しにしているそうだ。


 名刺を渡された。絶賛売り出し中だという。

 可愛い女の子から、こんな風に愛想よく言われたら、男ならば即陥落するかもしれない。

 女の私にも卒なく積極的に対応してる商魂逞ましい姿勢は嫌味が無くて悪い気はしない。

 何より若いから、健気に見えてしまう。


 「パフェクトです。よろしゅうに。」

 語尾に妙な訛りがあるから、割と近い時代にトビラ都市に来た渡来人の子孫かもしれないな。

 もっともトビラ都市自体、古代に一度壊滅してるから、その人口の半分以上は渡来人です。

 名刺を見ると、名前と連絡先、ギルドの階級は緑の星が三つも付いている。

 階級の嘘は記載しないだろうから、学生で緑星3つは大したものです。安心して車を預けた。

 連絡先を互いの端末で交換して、呼んだら即時で来る様にお願いする。

 早速運転を代わってもらい、サンシャが見えた位置で降ろしてもらった。


 パフェクトちゃん、頼んだよ。

 もしクラッシュ導師の愛車が盗まれたら、きっと怒り狂った坊主が押し掛けて来るに違いないから、本当に頼むと、営業スマイルのパフェクトちゃんに念を押しといた。

 その念押しで何かを感じたらしいパフェクトちゃんが真剣な顔つきで頷いた。


 まずはサンシャに潜入です。

 もっとも密かに入る必要は無いから正面から堂々と入る。

 出入り口には、反グレ風の若者が座り込んでいた。

 だらしの無い格好で、コチラを舐めるように見てきた。


 見ず知らずの馬鹿者から舐めるように見られても、気持ちの良いものでは無い。

 だが争う必要も無いので、避けて入ろうとしたら、向こうから絡んで来た。

 「おうおう、ここからはお嬢さん方入場料が必要だぜ、もっとも身体で払ってもらっても良いぜ。へへへ。」

 途端に甘い顔をしていたメイベルとジルの顔が無表情になり、まるでゴミを見るような目付きで馬鹿者を見た。


 ああ、最初私と会った時の二人の顔付きは、冷たく思っていたけど普通だったのだなと分かるような、軽蔑した目つきをしている。

 正直私もビビるような冷たい目付きだ。

 剣呑な雰囲気に、馬鹿者の仲間であろう者達がパラパラと集まって来る。


 …ピンと来た。

 こいつら馬鹿者を装っているけど、要はサンシャの門番ですね。入る者拒まずの指針を取っているサンシャといえども害を為す存在だけは受け入れられない。

 悪の巣窟と言われるサンシャに門番がいるのは当然の話しだし、こいつらの動きと立ち位置が組織的な対応であると窺える。


 あっと言う間に囲まれた。

 少々迂闊であったかもしれない。

 でも、どちらにしても挨拶は必要だし、最初の挨拶は派手な方が良いと考える。


 何かを得るには、自力で勝ち取るしかない。

 …話し合いはその後です。

 こちらの実力を開示する良い機会を貰えた。

 …心臓がドキドキする。

 アールちゃんと共に戦った日々を思い出す。

 私は、ニッコリと心からの笑顔で微笑んだ。


 さあ、二人共、サンシャの悪党共に対し、自己紹介のお時間です。

 懲らしめておあげなさい。

 

 

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