蜂
ギャルさんが落ち込んでいる。
「私は役立たず、私は役立たず、私は役立たず…。」
おうっ、ギャルさんが、鬱めいてブツブツ呟いている。
まるで、顔に黒の縦線が入っているかのような落ち込みようだ。
時折り、こちらをチラチラ見ている。
殿下がお茶を、飲みながら、アレ何とかしろと目で訴えかけてくる。
今日は、護衛任務三日目。
昨日、襲撃を無事にかわしてからは、再度の襲撃はなく、邸宅に戻って、夜の護衛はギャルさんに任せ、一旦、僕は自宅に帰った。
ペンペン様がご飯を作ってくれていた。
感動だ。
お風呂に入って、ペンペン様と一緒に食べて、寝た。
起きて、まずは皿洗い。ペンペン様は皿洗いは苦手なのだ。ペンペン様が寝ているうちに自宅を出る。
邸宅に着き、居間に入っていくと、こんな状況であった。
うーん。
「ギャルさん、昨日襲撃してきたのは、多分、あれホーネット[蜂]だよ。一流の殺し専門組織で、成功率九割を越える。しかも、あれは蜂の中でもエース級の雀蜂の一人に該当してる。個体名通称[小雀蜂]、暗殺成功率98%の化け物です。ギルドに照会しての回答だから間違いないよ。僕達生きてるだけでラッキーだよ。ギャルさんが殿下に着いてたから集中して戦えたけど、もしギャルさんが居なかったら、僕負けてたかも。」
「そーお?」
少し嬉しそうに振り向くギャルさん。
僕の言葉に、クラッシュさんも続けて言う。
「うむ、それがしなど敵の姦計に引っ掛かってしまって、殿下の側を離れてしまった。ギャル衛士が殿下のお側に張りついてくれて本当に助かった。貴殿は衛士の鑑だな。」
「そーお?」
また振り向くギャルさん。
顔がニヤついてるかも知れない。
続いて殿下が言葉を紡ぐ。
「ギャルは、立派に衛士の務めを果たしている。いつも私を守ってくれてありがとう。感謝している、ギャル。」
「あ、殿下ぁ、…。」
真心こもった言葉って、伝わるもんだなぁ。
感動からかギャルさんの身体が震えてる。
どうやら,立ち直ったみたいで、良かった良かった。
「みんなぁ、ありがとう。」
ギャルさん、お礼は良いけど、何故僕に抱きつくのさ?
「ほら、だって、流石にクラッシュ様には抱きつけないし、殿下は主人で畏れ多いし、アールちゃんしかいないでしょう。」
さいですか。
…でも、ギャルさん。
息を荒くして、あちこち触るのは止めてください。