自己紹介
さて、ここで皆さんに自己紹介しておこう。
僕の名はアール・グレイ。
まるで紅茶の名前のようだが、この世界では、とんと紅茶とは関係ない名前です。
ご先祖様の名前がアールでグレイが名字でした。
僕も、その名前を受継ぎました。
今では混同されて名字の一部となった感がありますから、姓をアールグレイとしても良いくらい。
ご先祖様以来、必ず一族の名前にはアールが付く慣わしなので、家族、親族は、全員名がアール・グレイ。
ちなみに、学生時代の僕の愛称はアルとか、アールとか呼ばれていました。
だから、アールでもグレイでも、アールグレイでも、お好きなように呼んでください。
名字があることから分かる通り、グレイ家は騎士以上の家格であったとされる。
…そう母から聞いた気がするけど…由緒正しい家柄であるとか…今では見る影もない庶民でありますが。
多分、由緒があると言っても騎士の従士の部下の傍系の傍系の立ち位置あたりではなかったかと、勝手に想像しています。
縁の切れているグレイ家の本家は、きっと都市内の一角に住居を構えているに違いない。…実際は分からないけれども。
割と近いご先祖様であるアール・グレイ様は、グレイ家を飛び出し、平民となり、農業を営みながら下役人も勤めていたらしい。
つまり半官半民だ。
私の父も、そうだからきっとグレイ家の血筋というものかもしれない。
残念ながら由緒では食べていくことはできません。
この通り、うちは裕福ではないし。
働かざる者喰うべからず…です。
だから、若くして能力あれば高収入のギルドに登録しました。
僕の年齢は、今年誕生日がくれば19歳。成人が15歳のこの世界では、大人になって4年目、就職して5年目、職場では、もう一人前なのです。
なんと組織で動く時は、部下を付けられ指揮する立場なのです。
僕が仕事を請け負う組織は、都市西門付近及び中央第三地区を管轄する吉祥天騎士団補完機構公社から仕事を請け負う互助組合である。正式名称は…忘れた。
えーと、調べるよ。
正式な名称は、騎士団補完機構公社被依頼自営業者組合及び事務執行部合議体を是とする団体及び都市政府派遣統轄執権と監察部を上部とした公共公益を目的と見做す一企業。
嘘みたいな名前だが、これが本当の名称である。
こんな長い名称、誰も使わないよ。不便だから。
だから、通常は請け負う依頼の危険さと、怪異など人類の敵と戦う武芸者が多く所存していることから冒険者ギルドと呼ばれている。
僕が所属している所は、トビラ都市西側付近を統括する吉祥天支部又は単に西ギルドとか呼ばれている。
つまり僕の身分は、依頼を受ける組合に登録している自営業者でありながら、組合と事務執行部を合議体とした団体職員であり、都市政府指揮下の公社の目的を為す一社員でもあるのだ。
…理解できた?
僕自身は、自営業者兼会社員兼みなし公務員と解釈している。
普段は、自由に依頼を受け、生活の糧とし、危急の際は、軍隊ともなる。
その中間の形態もあり、自由自在です。
なんだか、屯田兵みたい。
実際、登録だけして登録料金を貰い、普段は農業やっている人もいる。
ギルドの役職は、上部はかなり複雑怪奇化するので説明をはぶく。
実質的には、ギルド長と言われる本部組合長を筆頭に、副組合長、各種部門別の部長に、課長、係長。
支部長に、各種部門別の課長、係長となる。
僕らギルドに登録している組合員にも実力に応じた階級がある。
上から、金、銀、赤、青、黒、緑の色別に六つ。
各色別に上から星3個、星2個、星1個と三つ。
六色と星の数を組み合わせ、18階級が正規の階級で、他に星無し、星4個とか慣例や特別職の階級があります。
かく言う私は、青の星一個である。
軍隊の階級になぞらえると下士官の伍長に相応するらしいから、勤務では、通称、アールグレイ伍長と呼ばれている。
伍長は、人数のピラミッド上、一番下でもなく上でもない、ちょうど中間地帯の私好みの位置だ。
ここらへんを上限とし定位置としたいものだ。
うんうん…何事も真ん中、中庸が一番良いと思うぞ。
僕自身の外見は、中肉中背、金髪碧眼、どうにも見た目が派手で、僕好みではないけど五体満足で生まれてきたので、不満はない。
もう少し、背は伸びて欲しかったけど、これ以上は伸びそうにない。…残念無念である。
以上、自己紹介を終わる。
…
職場に着く。
お次は、仕事について。
基本、僕は個で依頼を受けてます。
ソロですね。
有事の際は、組織編成されて、強制的に召集されるけども、普段は割と自由。
仕事の受注は、新人はベテランと組んで、施設、門、市外の見回りなどの仕事に就くのが定番だが、一人前となれば個人で仕事を受けたり、グループを組んで受けたり、はたまた固定で受けることも可能だ。
つまり、一定の実力を身に付ければ、かなり自由度が広い。
僕は、もう一人前だからね。
好みの仕事を選べるよ。自由だ。
自由に仕事を選べるとは素晴らしい。
好きな時に休めるし。
もちろん、これは僕の不断の努力により培った実力によるものだと言える…うんうん。
仕事の依頼と受注、なんだかんだと需要と供給が釣り合っているみたい。
受付で、今日の仕事を請け負う。
ギルドの受付嬢は美人揃いで有名。
ギルド長の趣味ですか?
それとも運営上の方針なのか?…よく分からない。
でも一部で聞いた噂によると彼女達はスーパーエリートらしい。外見も中身も超一流の若手を登用してる話しだ。
将来のギルド代表たる幹部候補生として、まずは窓口からという噂だ。
本当かな?
…窓口には、髭面のおじさんも座っている。
…まあ、噂だから話し半分に聞いています。
受付嬢の中に、凄い美人が一人いる。
長めの金髪で、20歳位のキリッとした、如何にも有能で頭が良さそうで、上品で、スラッとした、でも性格がキツそうな美人さんだ。
あれで胸が多少でも大きかったらパーフェクトです…惜しい。
あっ、目が合った。ニッコリと睨まれる
(あなた今私の胸を見て、まさか小さいと思ってたんじゃないでしょうね。)
あわわわ…何だか受付のお姉さんの声が聞こえた気がする。
もちろん気のせいに違いないけど。
…つるかめ、つるかめ。
今日は、髭面の人の受付に行こう。