夕映え作戦
ブルーベリーの杏仁豆腐を美味しくいただいた。
あっと言う間に無くなった後のカップを見ていると哀し。
美味しさと哀しさの落差に寂しさを感じる。
ああ…きっとこれが噂に聞くジャパニーズワビサビに違いない…うんうん、きっとそう。
…ごちそうさまでした。
このあと店を後にして、シナガの商店街を胡乱にフラフラと彷徨きました。
大丈夫…弱い隠形の術を常時発動させているので、周りには居る事は認識されているけど注目はされていない…よし。
僕は注目されるのは好みません。
ましてや男性からジロジロ見られていると感じた学生時代は、…最初不思議に思い、それから男女の感覚の違いに些少驚き、終いには厭世的な気分に陥りました。
僕の自意識過剰かな?
いや、見ていると実は見られた側は分かります。
前世の鈍感な僕とは違って、今世は見られていると分かる感覚が発達してるのかな?
不思議と何処を見てるか何故か分かるのです。
今では、視線が気になったのは思春期の多感なお年頃故ではないかと自分の思惟を推察しています。
うん…僕も前世は男だから、女の子を見たい気持ちは分かります。
男性が全員嫌らしい視線だけで見ているわけでは無いことも理解してます。
しかしながら見られるのは緊張を伴います。
常時、緊張を伴う日常生活は誰しも嫌に違いあるまい。
一時期はあまりにも視線の多さに嫌気がさして引き籠りましたから。
だ、もので必要に応じて開発した隠形の術は、素晴らしい効果を発揮しました。
excellent!
これで視線を気にせずに街を彷徨くことが出来ます。
更に思春期を脱し、鈍感になったのか慣れたのか不明ですが、今では多少視線も気にならなくなりました。
フッ…。
これでまた一つ僕は内外の思惑から自由になった。
これもまた成長と言えるのかな…それとも適応?
…
歩きながら夕食の献立などを考えてみる。
身体を動かしながらだと脳細胞が賦活化して妙に頭が回る気がする…分かります?
…
だだ焼くだけで無く、こう一手間掛けたのが食べたいです。
つまり、料理と呼ぶに相応しいものが。
僕は専ら食べる専門ですけど、外食ばかりと言うわけにはいかないので必要に応じて自炊です。
同居ペンギンとモモンガの面倒も見なくてはいけないし…。
立ち止まりショウウインドを見るともなく見ていると、紐に繋がれた仔豚が、僕の脇をブヒブヒ鳴きながら通り過ぎました。
…ペットの豚さんですね。
前世の時もアウトレットで散歩しているのを見かけた記憶があります。
可愛いですよね。
…食べちゃいたいくらい。
… …。 … …!
よし!今日は酢豚にしよう。
うんうん、なかなか食欲をそそるではないですか?
いや、待て待て…豚カツも捨てがたいですよ。
揚げたての豚カツほど美味しいものはありません。
多めに揚げて残ったらカツ丼にすれば良し。
はたまた簡単に作るならば、豚キムチ炒めも美味しい。
更に醤油をひと尺入れると美味しくなります。
うーーーん、悩みます。
どれが食べたいですか?
埒もない考えにフラフラと考えながら街を彷徨いましたら、あっと言う間に夕方です。
そろそろ夕食の買い物して帰ろうかな?
ペンペン様、お腹空かして待っているかもしれないし…。
この時、僕の耳に幼な子の悲鳴と泣き声が聞こえました。
頭の中でカチリとスイッチが入る。
「search。」
冷静に呟き、魔力波を放つ。
真南方向、シナガの境界線付近に群青色が2人ヒット。
更にその直近に幼い子の白色が2人ヒット。
泣き声の方向と同じ…関係ありとみました。
精霊の脚発動!
僕は瞬時に走りだし、夕方の雑踏の隙間を駆け抜けていく。
100メートルを約4秒で走り抜けます。
1分前後で到着予定。
ステータスの数値の特徴から1人はペコちゃんに違いありません。
周りに白色3つあります。
内2人が子供です。
すると、もう一つの白色に攻撃されている?
ならば、それをペコちゃんが庇っている。
抵抗できぬ幼い子供を迫害するのは赦せません。
もしそうならば、僕容赦しませんから。