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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの休日
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ペコーの休日・秋(後編)

 あーなんか流されたけど、相方とは咄嗟に手を繋いだので離れずに済みました。

 恥ずかしそうにしてたので、握った手は直ぐに離しましたけど。

 目が合ったのでお互いにご挨拶します。

 「僕はニコ・ザクセン・フリージアと言う。今日一日宜しくお願いする。」

 「私は、ペコーと言います。よろしくね。」


 うーん、フリージア系の方ですか。いわゆる貴族ですね。

 筆頭は、たしか侯爵様だと聞いてます。

 御立派な物言いと武術を習っているような姿勢の正しさで貴族かなと思っていましたが、…やはりです。

 もっともギルドのアルバイト資格のある学校の学生自体が貴族か元貴族、貴族になり得る裕福層、特待生ですから、遭遇確率は高確率です。これは致し方なしと思います。


 しかし、私が思うに真に貴族であると感じたのは、アールグレイお姉さんただ独りだけでした。

 他はペッペケペーなのです。

 

 だって本物を見てしまった後では、基準が定まってしまっているので判断が明確です。

 その判断基準はお姉さんと同じか否かで判別すること。

 あの出会い以来、私の心の中には、アールグレイお姉さんの灯火がいつでもついている。


 だから、ニコ君が自己紹介して貴族と判明した時も、これから真価を見極めて、それからだなと思ってしまいました。


 身分や生まれより、これからの行動で真価を見極めるのは、そんなに変なことでしょうか?

 私は、そうは思いませんが。

 偉い地位だとか身分だとか、私にとっては本当にどーでもよいです。

 父親が騎士爵と言ってましたが、偉い貴族ほど複数の爵位を持っています。

 ニコ君の祖父が侯爵でも私は驚きませんよ。

 でも正直、そうだったとしても、ふーん、あ、そう、てな感じです。


 まあ、はっきり言うと、そんなもんは●です。


 私にとってメリットは無いですから。

 表面上、敬して遠ざけ避けるが良いです。

 だって貴族だなんだと偉ぶっている阿呆より、毎日のご飯と私を気遣ってくれたアールグレイお姉さんの方が遥かに大事なのは当たり前ですよね?

 比べるまでもありません。

 最もニコ君の、その正々堂々とした物言いと礼儀正しさは、お姉さんに通ずるものがあるので、悪くはありません。


 「ペコー先輩、僕たちの巡回場所はシナガですよ。南の外れの衛星都市です。僕が小さい頃、一度壊滅したと聞きます。最近復興したらしいけど、田舎ですよ、今回はハズレですね。」

 つまらなそうに言っている。

 ニコ君からしてみたら、田舎よりも喧騒ある都会を巡回してみたかったのかもしれない。

 私は、報酬目当てなので、無事に済めば特に注文も期待もない。


 それよりも私の中では、ニコ君から発せられたペコー先輩という言葉が反響していた。

 …先輩、私は先輩なんだ。

 課外は働いているか勉強しているので部活動には縁の無い私には先輩、後輩などの付き合いは無い。

 生きるのに忙しいのだ。


 そんな私に、人並みに後輩が…できた。

 今までは、都市清掃では相方は白装束で正体不明だし、他のバイトでも基本ソロの私にとって、先輩と呼ばれたのは初めての経験です。

 す、少し、嬉しいかも…。


 嬉しさ反面、なんか、ちょっと気恥ずかしい。

 そして、経験の無い私には、先輩としてどう対応して良いのか分からない。


 ど、ど、ど、どうしよう?

 硬直した私を訝しげにニコ君が見ている。

 しっかりとした子だから、頼りにならないと判断されたら蔑ろにされないまでも、内心そんな感じに思われちゃうかも。


 う、うん、別にそれでも良いけどさ。

 せっかく先輩と呼ばれたのに…ちょっと私情け無いかも。


 この時、私に天啓が訪れた。

 そ、そうだ。アールグレイお姉さんの真似をすれば良い。

 私が今までの短い人生で出会った数少ない尊敬出来る人です。

 表面上でも真似すれば失敗はないですよね?

 よ、よし!


 「んん、じゃあニコ君、早速出発しようじゃないか。人生は謳歌するには、あまりにも短すぎる。」byアールグレイ。

 こ、こんな感じかしら…?

 ち、違ったかな?

 恥ずかしいけど顔には出さない。


 お姉さんにとっては、都市清掃や巡回は、仕事と言うより趣味や私生活の域に入っていると思う。

 私に対し、いつもニコニコしてるし、お姉さん子供に甘いからなぁ。

 私のこと子供だと思われてるんだろうな…まあ、まだ子供だけど。


 ニコ君がポカンとしている。

 私は、シュク駅に向かい歩きだした。

 後ろからニコ君が付いて来るのが分かる。


 因みに公共の電車バスは、腕章を着けてれば無料なのです。

 ありがたや。

 


 

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