僕の休日(後編)
雑木林を抜ける。
雑木林を抜けると、そこはまた雑木林であった。
何となく楽しい。
僕の心の中の澱が解れて剥がれ落ちて行く気がする。
…なるほどなるほど。
この世界を歩き、前世と今世、二つの似た世界を比べるのは案外楽しい。
関連と違いを検証する。
前世の世界から今世の世界へ。
何故に僕は渡ったのだろうか?
もし二つの世界の時間軸が直結しているとしたら、….悠久の歴史の流れを感じてしまう。
壮大で膨大な情報量の流れが映像として、月日の流れ流れに思いを馳せる。
…面白い。
違い、同一、何故、原因と結果。
更にそれが原因となり…ふむふむ。
僕自身は、今、河川沿いの道から折れた獣道をテクテク歩いているに過ぎないのに、でも正に今僕自身の中では先の世界の違いとか同一とかの膨大な高速映像がめくるめく流れていって、それを僕が検証している…のだ。
…めっちゃ楽しい。
遥かな大昔の超古代と似ている僕の前世の世界。
そして今世の現代は、あまりにも似過ぎている。
もしかしたら異世界ではないのかもしれない。
今世では魔法があるから、全くの異世界であると思っていたけど、もしかして時間上直列した世界なのか?
…いやいや、今世は人種が雑多だし、地形も多少何か違う。
割と近い異世界と見たほうが良いだろう。
それにしても前世で、知っている痕跡があちこちに見つかるのが楽しい。
時折り、倒木とか小さい水流を渡る。
僕の頭の中では、同時に重なった前世の世界映像も流れている。
たまにある人類の痕跡がそれを惹起させるのだ。
それにしても今世では富士山が跡形も無いのは何故であろうか?
前世の川沿いからは、晴れた日には日本一の山が見えていたはずなのに…。
…
僕一人きりなので、基本周りは静寂ですが、時折り枝葉が落ちる音とか、突然の鳥の囀りにドキッとする。
…
しばらく行った所で、地図にコンパスを合わせて行き先を決めた。
まるっきり自由でも興を削がれるもの。
目的地ぐらいは決めといた方が良い。
…このまま真っ直ぐにいけば、シナガに着きますね。
シナガは一度は悪性生物の強襲を受け滅亡した都市だが、都市政府の決議により、入植が行われ復興著しい都市である。
まだ廃墟部分もあり、人の営みと廃棄されたものがモザイク状に入り混じった面白い衛星都市になりつつある。
中央付近には商店街もあるはずだから、持って来たお握りは途中休憩の行動食にして、お昼ご飯はそこで食べても良いかもしれない…。
うん、そうしたい…お腹空いたし。
距離と速さから、辿り着く時間を計算する。
これは…お昼頃には着けますね…多分。
僕は、自然の景観を楽しみつつ、獣道を北東方向へと足を進めた。