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アールグレイの日常  作者: さくら
赤龍討伐
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ダルジャン・ブルー危機一髪

 不調の少尉殿をお救けしようと先陣をきったはよいが、赤龍の足首はなかなか斬れず往生した。


 アールグレイ少尉殿は、私の友であり、ライバルであり、師匠でもあり、敬愛と崇拝の対象であり、推しでもある。

 可愛い妹のようでもあり、信頼できる姉のようでもあり、慈愛と包容力のある母であり、厳しく凛々しい父でもある。

 同性だから恋人は無理だけど、(いにしえ)の書物では同性でも恋人可能な記述があった。よく分からないけど、もしそうならば、とっくに私は少尉殿を押し倒している。


 つまり、少尉殿は全兼任であり、私の大事な人だ。


 一緒にいるだけで、ドキドキして心臓が飛び出しそうになる。この気持ちが愛なのか分からないけど、少尉殿を思うだけで幸せな気持ちになり世界が輝いて見えるので好きなことに間違いはない。

 最近では、好き過ぎて不純な気持ちになってしまう事がしばしばあるのが困りもの。


 少尉殿の御御足を散々触りまくり、果ては舐めて、甘噛みした時を思い出す。

 …少尉殿も嫌がってはいなかった。

 気持ち良さに出た声を押し殺していた少尉殿の艶やかな姿体と声が耳目に浮かぶ。


 ああ、少尉殿を抱き締めたい。

 抱き締めてからの私の手により乱れる少尉殿を思わず…想像する。



 …



 はっ…いけない!

 戦闘中である。鼻血が出ていないか左手で確かめた。

 自分の気持ちと想像に一旦ロックを掛ける。


 少尉殿は私を信頼してくれているのだ。

 その気持ちは純真すぎて、まだ誰も踏み締めていない降り積もった真白の新雪のよう。

 そんな少尉殿を穢すことはできようはずがない。裏切ることはできない。少尉殿はNo touchです。

 駄目、絶対。

 でなければ、好き過ぎて理性が持ちそうにありません。

 ああ、こんな気持ちは初めてなので、私がこんなにも好きな人に執着するなんて自分でも知らなかった。


 壮大に脱線しましたけど、私が話したいのは少尉殿を好きだという話しではなく、御御足を触らせて舐めて甘噛みした研究成果なのです。

 なんだか事実を話しているだけなのに私が変態みたいです。

 もちろん私は、フォーチュン、クール・アッサム両准尉のように変態では無いので誤解を受けないか少々心配です。


 さて、少尉殿の御御足の筋肉は硬くなく滑らかで柔らかい。

 それでいて、しなやかで強靭でした。

 これは私の筋肉と比べてあまりにも異質、全く違う、より高品質の筋肉であると感じました。


 筋肉の機動力に太さ大きさは必要ないのか?

 この細い筋肉に高密度に高圧縮されているの?

 筋肉を大きくするでなく質を高品質にする肉体改造。

 でもそれだけではない。あの味は…。

 そう現実の肉体の味だけでない。

 (いにしえ)の書物には人は多層の次元の違う身体で構成されてあるとの記述がありました。

 多分、少尉殿は肉体のみならず、重なりあっている別次元の身体も鍛えている。

 それに合わせて現実の肉体も改造しているのだ。

 エペ家の総合図書館に赴き、調べあげた。

 それは数十冊もの古代N語で書かれている中にあった。

 少尉殿の御御足は、[精霊の脚]と言われているらしい。

 身に付ければ、大地を滑るように駆けることができ、極めれば空さえも駆けることが出来るらしい…凄い、信じられない。

 嘘のような記述だが本当だ。

 私の身近に身に付けてる人が実際に存在しているから。

 でも、私も少尉殿を知らなかったら一笑に伏していたかもしれない。


 ここから身に付けるまでの訓練方法が試行錯誤の連続で、その成果が出たのは最近の話しです。

 今では不調の少尉殿より早く速く移動が可能。

 まるで足に車輪が付いてるように滑らかに地面を走れる。

 [精霊の脚]を身に付ける過程で[連環駆動]も拙いながら修得しました…そうか、繋がっているのか、少尉殿の技は単独ではないのだ。

 かつての少尉殿が歩いた過程を、今、私が歩いているのだ。

 この道の先に少尉殿がいる…私達は繋がっている…一人ではない…それがとても嬉しい。


 しかし、私が身に付けた技を持ってしても赤龍は倒れず。


 なんと少尉殿が下した判断は撤退。

 

 なんたること。

 味方が次々と撤退していく。


 …



 この時私は自分の実力の無さが悲しく悔しくて注意を怠ってしまった。

 大地の揺れに、バランスを崩し地面に倒れる私。


 その私の上に振り下ろされる赤龍の足が。

 倒れた私に天上から赤龍の足底が迫る。

 私は死を予感した。


 アア…コンナトコロデ、ワタシオワリ…ナノ?


 深い後悔が残る。

 ああ、こんなことなら少尉殿を思い切り抱き締めておけば良かった。そして首筋にキスをして恥ずかしがる少尉殿の匂いを思い切り嗅ぎたかった。

 言っておくが私は変態ではないぞ。

 好きな子にそう懸想するのは自然な事で恥ずかしいことではない。そう…魅力的な少尉殿が悪いのだ。

 でも私の、この思いも少尉殿に知られることもないまま終わる。

 赤龍の闇のような足裏が近づいて来る。

 龍の汚い足に踏み潰されるのは、嫌だな…。

 私は眼を瞑った。


 …


 ヒューと何かが上空を走って行く音がする。

 やけに遅いと感じ、おそるおそる眼を開けると、側に大好きな少尉殿が居た。

 少尉殿は、何と右手の人差し指一本で赤龍の足裏を支えていた。

 信じられない光景に夢ではないかと疑う。

 それにしては少尉殿はリアルで超絶に可愛いく、そして凛々しい。私の心がドクンと脈を打った。


 途端に赤龍の頭付近から大爆発音がする。

 赤龍の悲鳴が辺りに木霊する。


 ハッとして夢ではなく現実であると分かる。

 同時に少尉殿が、支えていた赤龍の足裏ごと右手の人差し指を真横に滑らせる。

 その指先の指揮に従うように、赤龍の片脚が真横に宙を流れるように滑っていった。

 「橘流合気柔術…浮舟。」

 少尉殿が、そっと呟やく。


 重心を崩された赤龍の巨大な身体がゆっくりと倒れていく。

 まるでビルが突然倒壊するように…。

 倒れ伏した音、舞い上がる土煙り…。


 信じられない…赤龍を投げ飛ばした?嘘でしょう。

 でも、少尉殿が技名を呟いていたのを聞いた。


 少尉殿が私の手を握り、私をその場から連れ出してくれた。

 ああ、この時、私の心は少尉殿に捕まれてしまったのが分かった。

 だって少尉殿は私の窮地に、命を懸けて救けに来てくれたのだ。


 こんなことされて惚れない女の子はいないよ!


 この場合、惜しむらくは少尉殿が女の子であることだが…。

 そ、それでも親友にならばなれる。…なれるから。


 …変わらない。私の少尉殿への思いは変わらないのだ。

 そう、少し深くなっただけの話しで、問題はない…多分。

 より崇高に、より親密になっただけですから…ふふ。

 



 

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