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アールグレイの日常  作者: さくら
赤龍討伐
257/615

驚愕憔悴のアナスタシア(中編)

 ドラゴンブレスが火を噴く。

 その正体は、超超高熱の炎熱線です。


 ヤバい、ヤバい、ヤバい。

 ドラゴンの口蓋の方向と奥に灯った炎の明かりを見て、ドラゴンブレスの方向とタイミングを予測する。

 光りの速さで飛んでくるので、撃たれてから避けては遅いのです。

 少尉からクドイほど事前に、逃げるタイミングと仕方を練習させられてたので、身体がその通りに動く。


 呪印を崩すことなく、全力で走り、最後には跳んで避ける。


 鮮紅色のドラゴンブレスが私が元いた位置に直撃!

 ブレスの周りに付随する超高熱のジェット気流が、輻射熱を放射して、周辺を焼く、焼く、炎を上げて焼き上げていく。

 私が元いた場所周辺は、あまりの熱に樹々が一瞬で燃え消失し、大穴が空いて、辺りの土がマグマ状に炎熱で紅く光っていてブスブスと煙を上げている。


 振り返りガン見する…あの場所は、私が居た場所である…今では跡形もない。

 心がハンマーで叩いたようにショックを受ける。

 今の一瞬で、私は生と死の狭間にいることを痛感した。

 …少尉の言う通り、全力で避けなければ…多分、私、死んでいた。


 直撃なら蒸発。

 かすっても気化する

 近づくだけで、焦げ焦げの炭墨化。

 輻射熱でコンガリローストです。


 …当たってはいない。

 …かすりもしてない。

 それなのに、あらかじめ耐熱性防御膜を纏い、耐熱性防御壁を重ね掛けして、身体、膜、壁間に冷気を多層に流しているに関わらず、汗が滴り落ちるほどに熱い。

 ところどころ、身体が痛い…火傷しているなと思う。


 私は、赤龍と戦う危険を初めて認識した。

 身体がガクガクと震え、大量の汗がドゥッと出る。


 わ、わ、わたし、アールグレイ少尉の提案を受け入れていて…本当に良かった。

 知らず知らずに涙が溢れ落ちていく。

 あの時の会議が、私の生命を生かしてくれている。

 あの時侮っていた少尉に、今では感謝の気持ちしか思い浮かんでは来ない。

 少尉…殿からは、くどいほどに何回も何回も意見具申され、最後は根負けして、提案を受け入れた。

 …心配性にも程がある。

 もしもの時の為の微細に渡る提案に辟易しながらも、爺様達や私が提案を受け入れたのは、少尉殿が私達の事を心配しているのが何となく伝わったから…。


 心配の仕方が、まるで母親のようですよ、少尉殿。

 でも、ありがとう。


 ずり落ちた眼鏡を、呪印を組んだまま左手の甲で押し上げる。

 戦いは、これからです。

 戦い始めたら、結末が着くまでは終わらない。

 そう…赤龍が死ぬか、私達が死ぬまで終わりはしないのだ。


 だからこそ戦う覚悟が無ければ、戦ってはいけなかったんだ。

 言われたままに戦うのが軍人の務めなれど、その責を命で負うのは現場で戦う私達だ。


 なんたる認識不足。


 なんたる覚悟の無さ。


 おそらく教官や少尉殿、私の周りの人達は教えてくれていたのだろう。

 だがその助言を重要視せず、一笑に伏し、教えてくれた人を心配性過ぎると侮り、聞く耳を持たなかったのは私だ。

 まさに赤面ものの恥晒し。

 私は大馬鹿者だ。

 分かった今では、恥ずかし過ぎて涙が出てくる。


 だからこそ、私は私の務めを果たす。

 呪印は崩さない。

 避けて、避けて、避けまくり生き残るのだ。


 涙目になりながら、赤龍を睨む。

 見とれよ、生き残り勝つのは私達だ。

 

 

 

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