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アールグレイの日常  作者: さくら
赤龍討伐
255/615

破・赤龍討伐戦(弍)

 土煙りが舞っている。

 赤龍が起き上がる様子は、まだない。

 しかし下手に近寄ることはしない。

 飛び込もうとしているジャンヌを手で制す。


 感じる…こちらを探っている。

 赤龍は転じるだけで僕らを押し潰せる。


 だけど赤龍よ。そんな呪縛陣のど真ん中で、そんな悠長にしていていいの?

 僕自身は呪縛を使えない。

 僕と呪縛は相当に相性が悪いらしい…練習はしたけどウンともスンとも言わず起動すらしなかった。


 でも、それは得意な人に依頼すれば良いのだ。

 携帯から電話を掛ける。

 「もしもし、先程はありがとう。これで覗いていたことは相殺してあげる。ところで、その位置から赤龍を呪縛できますか?出来れば依頼したいです。…うんうん。…頭だけでも良いのだけど。…報酬は今回僕が受け取る報酬の1/10でいかがでしょうか?…はい、それでは宜しくお願いします。」

 …お願いすると携帯を握りながら頭を下げる。

 これは前世からの癖です。

 よしよし。こちらの意図が即伝わる…打てば響く会話は気持ちが良い。

 フォーチュン准尉は、やはり優秀ですね。

 僕の眼に狂いは無い。


 「…少尉殿、お助け下さりありがとうございます。…しかしながらこのジャンヌ未だ本領を発揮しておりませぬ。今一度チャンスをくださるようお願いしたい。…今の助力依頼は誰に電話されてたのでしょうか?」

 僕の隣りに立ち上がったジャンヌが、悔しがるのと訝しむ顔半々で聞いてくる。


 僕はジャンヌを見た。

 

 うんうん…美人さんは、土砂にまみれても美人です。

 眼福です。美しいものを見るのは心に潤いをもたらします。

 「ジャンヌ、僕最近気がついたんだけどさ…視線を感じるんだよね。それが悪意ある視線ではなくて、こう護るような見守るような暖かい視線なんで放っているけどさ…。」

 ジャンヌの表情がギクリとした顔になる。


 「視線にも指紋なみに個人の特徴があってね。だから僕は視る紋と書いて視紋と呼んでるんだけど、約16の特徴を照合したら個人が特定できてしまうんだ。既知の人なら尚更だよね…。」

 「え!う、あ、それは…。」

 僕は、明からさまに狼狽えるジャンヌをマジマジと見た…うん、ジャンヌの美しさは純粋な心の美しさであるな。

 陰謀や策謀を捻る参謀や策士にはなれませんね。でもそれがジャンヌの良さでもある。


 「責めてません。どんな理由でジャンヌ達が僕を見守っているのか分からないけど…嫌ではないから、負担が掛からないようにもっと近場に来てくれてもいいよ。僕の察知圏内は最大100kmだから、遠くても近くても一緒だから。」

 「ひゃ、100kmですか…?!…さ、流石です。少尉殿。」

 ジャンヌは目を白黒さして驚いてから、最後には僕を賞賛するキラキラした目に変わる。


 ジャンヌとそんな遣り取りをしている間にも、倒れた赤龍の身体に大地から伸びた白銀の糸が巻き付き始めた。

 魔法陣に輝きが戻っている。

 白銀色の輝きが文字や線から炎のように立ち昇り、辺りに粒子が舞っている。

 うんうん…とっても綺麗です。

 あの魔力の色と輝きは使用者の内面を表す光りです。

 フォーチュン准尉も、外面がスケベでなければ絶対モテるに違いないのに残念…もっとも半分は演技のような気がしますけど。…胸とお尻に視線を集中させるのだけは恥ずかしいので止めて欲しいです。


 今更、赤龍がジタバタし始めているけど、気付きと初動が遅いよ。

 こちらは電話一本で即時に取り掛かり着手している。

 ふふん…僕の仲間が優秀過ぎるんですが。

 一般的に早さとは勝利に直結しやすい。

 何故なら主導権を取れるから。


 「ジャンヌ、あれ!」

 僕は、ジャンヌに赤龍の頸にある逆鱗を刀で指し示した。

 僕の意図に頷いたジャンヌが槍を構えて赤龍にゆっくりと近づく。

 赤龍の左眼がこちらを向く。

 その眼は恐怖に慄いていた。



 赤龍よ、お前の敗因は傲慢に過ぎたことだ。


 女の子を足下にして笑うとは言語道断…礼儀知らずにも程がある。

 一度生まれ変わって礼儀を一から習ってくるがいい。

 

 

 

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