激・赤龍討伐戦(拾)
声では伝わらない。
searchに意志を込めて飛ばす。
(煙幕弾撃て!撤退だ!)
ヒョコリと塹壕から頭の中を出した少年従士に魔力波が当たった。
既にアナさん達も限界です。
顔色が青白くなってフラフラです。
僕が、もっと早く撤退を決めていれば…。
後悔先に立たずとはよく言ったもの。
赤龍から距離を取り、皆に撤退の合図とsearchを放つ。
従士達の居る塹壕から迫撃砲が何発も撃たれ、白煙がたなびきながら赤龍の周りを何本も白い線を描く。
立ち竦むアナさんに何度もsearchを打つ。
煙幕弾を撃ち尽くした従士達が、撤退していく。
それを見て呪印を解き、後方へ駆け出すアナさん。
さぞや無念なことだろう…御免なさい。
地上からの紫の呪縛線が解かれていく。
続いて、上空の呪縛線も解かれていった。
二ヤード君を先頭に撤退していく空馬に乗った老騎士達。
これにて赤龍は全くの自由となった。
赤龍の咆哮が木霊する。
辺りの空気圧が変化したかのように耳が痛い。
喜びと怒りと勝ちどきの雄叫びです。
白煙が散ってしまった。
赤龍の眼がギョロリと僕を睨む。
なんてしつこい奴、まだ僕を恨んでいるらしい。
まあ、気持ちは分からんでもないがね。
赤龍の顔が悪意ある笑いに見えた。
僕は知っている。
あの顔は強き立場から弱きものを嬲ろうとする下賤な笑い顔だ。
人の悪意を集約したような醜悪な顔。
赤龍の視線が僕から、足元にいるジャンヌに移る。
…そして片脚を上げた。
全てがスローモーションのようだった。
僕は叫ぶ。
何て言ったのか覚えていない。
ジャンヌも僕を振り返り何かを言っていた。
そして、赤龍は上げた片脚をジャンヌの真上から踏み降ろした。