激・赤龍討伐戦(漆)
ジャンヌが赤龍に向かって走る。疾風のようだ。
初動が早い。そして速い。
初めて会って戦ったときとは格段の差。
その人間業では無い速さは、[精霊の脚]を身に付けたかのよう…まるで足下に車輪が回っているかの如く滑らかに走っていく。騎馬が突進するかのトップスピードです。
僕を置いて、先行するジャンヌ。
ジャンヌは、今の僕よりも速い。
僕の霞がかった目と頭でも、目前の事実は分かる。
…吐息をつく。
身体が酷く重く感じる。
常時、倦怠感が付き纏う。喉が痛い。
ふらついて、少し動くだけで疲労する。
幸い熱はない。
医師の見立てでは、ただの風邪。
実は僕、超体調悪し。
でも仕事中は、クールな顔付きを装っているので、周りにはバレることは今まで無かった。
違いは、反応が多少鈍い程度ですし。
でも、ジャンヌには、さっきバレたかも…勘ですが。
意識が振らつきながら考える。
正直言うと自宅に帰って寝てたい。
でも、これくらいで仕事は休むことは出来ない。
そういうものでしょう?
僕の身体は強くない、何かあると熱出るし、すぐ風邪をひいてしまう。
僕にとって、子供の頃から体調が悪いのは日常茶飯事で、休む事由には当たらないのだ。
あるがままの体調を維持管理しながら日常を過ごす…コツは決して無理はしない事。
低出力のつらく苦しい体調の時こそが本来の自分である。
今の僕が、100%の自分なのだと思う。
よって最低の体調の自分を基準にして行動計画を立てる。
だから今回の依頼も問題は無い…だって本来の自分だから。
思えばハクバ探索時は、すこぶる体調が良かった。
自然豊かな山奥の方が、都市部よりも体調には良いのかも知れない…。
先行したジャンヌが、赤龍の向かって右側を走り抜き様、槍を回転させて振り抜く。
鮮血が、辺りに飛び散った。
おお…excellent!…流石ジャンヌです。
一瞬置いて、赤龍が苦しみ染みた咆哮を上げた。
効いている?!
ジャンヌが、今回持参した槍は、穂先の横にも片刃が付いた、突くだけでなく切ることも可能なハルバートタイプの槍。
効果ありありです。
今の赤龍は脱皮したてで皮の装甲が薄い。
私も体調悪しでfifty fiftyで対等ですね。
ジャンヌより格段に遅く、些かよろめきながら赤龍の向かって左側を走り抜け様、僕は右手に持ち替えた鞘から左手で抜刀する。
血飛沫が辺りを染めあげる。
うんうん…手応えがあり過ぎる。コンクリートを斬ったような感触です。
これで赤龍のHPが9999/10000になったかな?
因みに僕は左手で抜刀でも問題は無い。想定内。
僕は武器に関しては両利きにしました。
それに刀は抜く際は右手ですが、本来握って使う比重が高いのは左手ですから、毎日の左右の練習で両利きの習得は割と簡単でした。
赤龍を斬った印象は、ビルの壁面を多少削ったかのよう。
あと1万回突攻すれば倒せる…かな?
それまで拘束の呪縛が持つのが問題です。