ペコーの休日(前編)
私の名は、ペコーです。
初めまして。よろしくお願いします。
まず、始めに私の生い立ちを話します。
私に両親は無く、孤児院で育ちました。
孤児院では、食べるのも汲々で、いつもお腹を空かしていました。院では力の強い子に虐げられ辛い思いもしましたが、私は負けませんでした。
街中にある図書館が、私の居場所。
ここに逃げてくれば大丈夫。いじめっ子も、ここには来ませんから。
院で、最低限以下の食べ物を食すと、直ぐに私は図書館に逃げ込むようになりました。
だから、私が育ったのは、図書館です。
なんて、素晴らしい施設なんだろう。
考えた人に感謝を送りたい。
これで、食べ物と宿泊出来れば完璧なのに。
私のお気に入りの本は、冒険者記録。
誰か執筆してるのか不明だけれども、冒険者ギルドから毎月発行しているもので、この本の凄い所は、ギルドに都合悪いことでも平気で本当の事が書いてある点です。リアリティのある話しに、毎月ドキドキして読んでいました。
そして、いつしか私も冒険者になりたいと思うようになったのです。
顔見知りの司書さんに、相談して、学校の特待生制度を受験して、無償の奨学金制度を申請する事にしました。
幸い合格して、学校の寄宿舎にも住めるようになりました。
だから、後にした孤児院がどうなったかは分かりません。
しかし、孤児が成人まで生き残るのは、里親に引き取られるしかありません。
おそらく、私からパンを強奪していた、あのいじめっ子も、今でも生きているかは分かりません。
私は、運が良かった。
都市政府からの援助を受けてるとは言え、それだけでは生活できません。衣食が足りないのです。
そこで、私は課外と休日にアルバイトをする事にしました。
でも、子供を雇ってくれる所は、なかなかありません。
そこで、私は薄給ながら公正に扱ってくれる冒険者ギルドで、星無しのグリーン(仮)で、アルバイトをする事にしました。私が所属した西ギルドは、吉祥天様を守り神として祀っている冒険者ギルドで、規律と公正と実力を重んじている、とても評判の良いギルドなんですよ。
私が主に受注する仕事は、都市清掃です。
本来、ボランティアさんが清掃しているのですが、都市内でもスラムや治安の悪いところ、汚い所はギルドが都市政府から清掃を請け負っているのです。
もし、私達ギルドのグリーンに手を出す輩は、ギルドが緊急重要案件として発注し、ブルーやブラックが受注して退治してくれる慣わしになっているので、おいそれとは手を出して来ませんが、それでも毎年何人かは怪我したり行方不明になっています。でも受ければ薄給ながら生活のタシになるし、階級も依頼達成数に寄って上がります。
私も、これまで7年以上勤めていますので、これでも仮免ながら星が二つ付いてます。
卒業までには、星を三つ貰って、ギルドに登録する時には、直ぐにブラックから始められる野望も、持っておりました。
ところが私には弱点がありました。
特待生ですから、頭の良さには自信があります。
ですが、私は無茶苦茶弱かったのです。
冒険者とは、ある意味強さの象徴。
ブラックは当然強く、ブルーに喧嘩を売る者はいない。レッドは化け物と言われるくらい。
それに比べて私は、一般学生にすら100戦、対戦して100敗なのです。
武術教官からは、お前の様な弱い奴は、学校開校以来、俺が知る限り二人目だ。致命的に武術センスが無い。悪いことは言わん。冒険者だけは止めとけと言われる始末。
なんと言うことでしょう。
しかし、ここで、私に転機が起きるのです。
本当に私は、運が良い。