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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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最後の戦い(後編)

 「たった8人で、足りますか?」

 僕は、皆んなにニッコリ微笑んで問いかける。

 僕、すっかりリラックスしている。

 …楽しい。


 けど、何故かすっかり静まりかえり、皆の返事が無い。 

 事態は常に推移している。

 僕は待つことはしません。


 「では、やりましょう。」

 僕は、開始の合図に柏手を、打った。


 神気が波となり、広がっていく。


 これは、白家神道[白響]です。

 神気が天から瀑布の様に、僕に降りて来て、柏手から周囲に白い神気の波となって響いていく。


 悪鬼神滅!


 邪な心根に取り憑かれた者には、生きながら業火に焼かれる心持ちになる浄化の術です。


 冗談ですから…クスクス。


 「ぐぎゃあー!」「うわあーあーー!」

 クール・アッサム曹長とフォーチュン曹長が、その場から、吹っ飛び倒れて、悲鳴を上げて転げ回り、動かなくなった。


 あれ、まあ…。


 続いて、ウバ君を流し目でチラリと見る。

 眼が合った…ℹ︎魔術発動…獄炎・三昧真火!

 …のイメージを視線を通じて、脳に無理矢理押し込む。


 「うぎゃーあーあー!」

 ウバ君が、悲鳴を上げながら転げ回り、気絶して動かなくなった。


 「もう一度言います。たった8人で足りますか?」

 僕は、再度、皆んなに問うた。


 返答は無い…ちょっとガッカリ。

 リアクションが欲しいです。

 

 次いで、レイ・キームン曹長を見ようとすると、「おおー!」と掛け声を発して、大袈裟なリアクションで岩陰に隠れた。

 周りを見渡せば、皆んな隠れて姿を消している。


 いいの?

 正直、長距離では、僕には勝てないよ。

 僕の魔力量は、皆んなの魔力量を合算したより遥かに多い。


 僕にはセンスが無い。

 だから、魔力を増やす基礎訓練ばかり、やってました。

 これは、センスは関係無く、やればやるほど増やせるから。

 魔力が多いということは、便利なんですよ。


 僕にセンスは不必要。

 僕の戦術には邪魔。


 不断の錬磨で磨かれた技があり、無尽蔵の魔力があり、試行錯誤する意志があれば十分だと分かりました。

 不効率極まり無い無駄の極致、先入観無しで、失敗しても改善して何度も挑戦する。

 植物が硬いコンクリートを崩すように、風や水が岩を削るように。


 目的を達成すれば良いのであって、センスなど不確かなものは、要らないのです。


 「来ないならば、こちらから行きますよ。」

 魔力を練る。


 僕は、際立った能力の無い凡人です。

 センスのカケラも無い一般人です。

 なんの野望もないささやかな幸せを望む庶民です。

 だからと言って、さしたる理由もなく、雑草のように踏みつけられ、刈られっぱなしで良いわけではない。


 最大多数の庶民の力を舐めるな。

 僕達、庶民が社会を支えている。


 うんうん…良い具合にテンションが上がって来ました。

 前世で普段感じていた憤りを思い出すと、上がりやすいです。ガス抜きも兼ねて一石二鳥です。


 「lanser。」力を込めて、そっと呟く。

 僕の面前に光りの槍が、次々と現れ、ミサイルの如く、撃ち出されて突き進む。

 それが無数に現れ、次々と、次々と岩や壁に当たり、爆発して、辺りを削り、自然の様相を変えていく。


 いつ終わるとも言えない絨毯爆撃です。

 ドッカン、ドッカンなのです。


 僕の頭の上では、シロちゃんが、お昼寝している。

 たまに欠伸してる気配がする。

 ああ、なんて平和なんだろう。

 命のやり取りの無い戦いは、少し退屈かもしれません。

 でも、それで良い。それが良い。


 …



 隠れていた岩ごと、ルフナが爆発で、吹っ飛んだ。

 引き際の決断力の無い者の末路です。


 一旦中止して、投降を残りの皆に呼びかける。

 ショコラちゃん達が、両手を上げて出て来た。



 …




 倒れた者は、介抱し、平常に戻った所で皆んなを集める。


 少しお説教です。

 「あなた達は、自分が強くなったと勘違いしていませんか?戦いなのに余裕を見せてる場合ですか?それは余裕では無く油断と言います。」

 皆んなの顔を見る。


 約2名ほど、ピンと来てない顔をしているので、説教を続ける。

 「戦うからには勝たなければなりません。負ければ蹂躙され文句も言えずに死んでいきます。絶対勝つ覚悟がなければ、全力で逃げなさい。僕は逃げることをお薦めします。生きてさえいれば、何とかなるからです。」

 ここまで言っても、不満そうにしてる子が、約1名いる。

 溜め息をつき、話しを続ける。


 「そもそも、戦いを選んだならば、何故最初に攻撃して主導権を握ろうとしないのですか?僕の専門は、魔法・神道系と言っているはずですが、わさわざ相手の土俵で勝負する必要ありますか?知らなければ、知る努力をすべきです。知るのと知らないとでは戦い方が全然違って来ます。僕の苦手な近接戦闘に持ち込めば、まだ勝機はあったはず。違いますか?」

 皆の顔を見ると、納得してるのか分からない微妙そうな顔をしている。

 あれ?僕、言い方、何か間違えましたか?


 「…コホン、とにかく、僕は皆に死んでほしくないんです。自分の命を第一に考えて行動しましょう。そのために、今、自分が出来ることは全部やるべき…悔いを残さぬ為に。」

 お説教は、終わりです。


 今日で、解散だから、僕は、もう君らを護ることは出来ない。自分で判断し、決断し、行動し、その責任は自分で取るしかないのだ。

 諸君らの人生に幸あらん事を祈ります。

 内心で、黒山羊様に祈る。…ナムナム。

 

 「さあ、皆んな、昼ご飯の時間です。ショコラ曹長、今日のメニューは何でしょう?僕、お腹すきましたよ。」




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