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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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アンネの日記(前編)

 私の名は、マリー・アントワネット・ディスティルリー・エペ。

 ディスティルリー・エペ伯爵の後継者、それが私。

 何の因果か、私は冒険者ギルドに入り、只今、大事なレッド昇格試験の真っ最中。

 まあ、私が選んだ道なんですけど。


 でも親友のジャンヌと一緒だから、私は何処にでも行ける。

 そんな友達がジャンヌ以外いない、ボッチな私にも、最近大事と思える人が二人出来ました。


 一人目は、本家のショコラ・マリアージュ様。


 偶然、同じ、レッド昇格試験の依頼を受けた受験生で、ギルドの同僚です。

 ショコラ様は、エペ家一門の本家だから、あまり親し過ぎる態度は失礼に当たると思うけど、私達と仲良くさせていただいています。


 彼女の対応は、貴族としては、とても柔らかい優しげなお嬢様。

 でも、彼女の優しげで甘い雰囲気に漬け込み、侮ると手痛いしっぺ返しが来ると思う。

 彼女は、私達が思うより、遥かに芯は強くぶれる事は無い。

 そして思慮深い。


 エペ家の家訓は、誠意には誠意を持って対応すること。

 本家の彼女は、まさにエペ家一門を代表する家訓の体現者。

 この家訓には、裏の意味がある。


 やられたら、やり返す。しかも倍返しだ。


 当たりの柔らかさに調子に乗り、彼女を侮ってはいけない。

 だから、私も、ショコラ様の人の良さに甘えず、節度を持って対応している。


 ショコラ様は、私よりも歳下だけれども、とてもしっかりとなさっている。

 流石、高位貴族の本家の御息女。

 指示命令する事に慣れ、人をまとめるのが上手い。

 今回のメンバーの中では、一番家格が高くリーダー向き。

 形式上の指揮官であるアリ・ロッポ中尉より、よっぽど指揮官向きです。

 ボッチ気味な私にも、目を掛けて気遣ってくれる優しい人、言葉を交わすにつれ、人の上に立つ資格のある人とは、こうゆう人の事だと分かった。

 染み込むように、ショコラ様の優しさが伝わってくるから。


 でも、今回は、そんな彼女より凄い人達がいた。


 まずは、無名の英雄、ルフナ・セイロン。

 彼は、最近まで、階級こそブラックだったが、実力があり、人の良さと面倒見の良さから、あちこちに支援者がいる。特に派手な活躍は聞こえてこないし、特殊な技能も派手な技も無い。でも彼は、日常生活で依頼者の困り事を嫌な顔一つせず、安い依頼料でも率先して引き受けている。

 …地味に有名な人だ。で、ついた二つ名が、無名の英雄。

 地味な活動に与えられた、彼に相応しい二つ名。

 でも、おそらく本人は知らない。


 彼は、重厚で荒々しい見た目に反して、口調は軽く柔らかい。

 中身が崇高な人ほど、当たりは柔らかくなるのだろうか?

 偶にシモネタ的な物言いもするけど、嫌な感じはしない。

 逆に自分を下げて、相手を楽な気分にさせようとしているような自然な気遣いのよう。

 度量の広さを感じる。


 戦い方は、不真面目そうな見た目に反して、基本に忠実、オールラウンドで高い基礎能力を有している。

 基礎能力の化け物です。

 弱点が無いが、突出してる技能も無い。

 よって、戦いは必ず膠着状態になる。

 そこで、彼の戦闘で唯一と言えるような長所、勇気が生きてくる。あれはズルイ。

 全力を出し切り、技で無く、相手の勇気という格で負ける。

 もう、何も文句が言えない。

 結局、彼が、どの戦いも接戦から全勝して、序列第一位となった。


 凄い人の二人目が、エトワール少尉。

 ルフナ曹長と違い、鳴り物入りでギルド入りした、別名、ジーニアス。

 一言で言うと、天才です。

 逸話は、それこそ沢山ありますけど、あまり良い話は聞かない。しかし、ギルドには、良い変化を与えた劇薬のようなものだと、私は解釈している。

 ともかく、何事にも超優秀。

 指示命令、助言さえも的確で完璧。

 心配していた為人も、噂ほどではなかった。

 ちょっと変わってるけど、ちゃんと意思疎通は出来る普通の人だった。

 完璧なので、逆らうことは出来ないし、文句もつけようが無い。なにより逆らったら、どうなるか分からない怖さがある。


 凄い人の三人目。

 そして、ショコラ様に続いて、私の大事な人になった方。

 その名は、アルフィン・アルファルファ・アールグレイ少尉殿。


 最初に彼女を見たときの第一印象は、可憐で崇高、とにかく可愛い女の子だった。


 ときおり無意識に見せる微笑みが、眩しい。痺れる。

 この子に対し、悪意の持ちようがない。なにこの子は?神の使いですか?

 その子が、野戦服にレッドの階級章を付けているのが目につき、地上に舞い降りた天使などでは無く、今回のミッションの指揮官の一人だと分かった。

 しかも、あんな幼い見た目で、貴族では無く、兵卒からの叩き上げの少尉だと知ったときは、もっとびっくりした。


 でも、私には関係ない。

 どんなに凄い人だろうが、凄い可愛いかろうが、私には関係無い。

 その時は、そう思っていました。

 

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