都市
僕が転生した異世界の住んでる都市を紹介しましょう。
イメージしやすいようにね。
さて、僕が転生した、この異世界は、地形が前世に似ている。
もしかしたら年月だけ遥か過ぎ去った未来の世界かもしれない。
しかし、検証のしようがないから、ひとまず異世界と認識しておこう。
…問題はない。
だって転生者は、今のところは僕一人だけだから、話し合うこともできやしない。
僕が住んでるこの都市は、今現在はトビラ都市と呼称されている。
その昔は天の扉市と呼ばれ、宇宙ステーションと繋がれ、交易、観光、政治の中心であり、発展していたそうな。
その頃の面影を残した残骸の跡に、トビラ都市は築かれた。
廃墟と侵食した森、そこの狭間に復興した建物を建てた混在都市…それが、僕が住んでいるトビラ都市だ。
都市の成り立ちは、約5000年前にさかのぼる。
文明が崩壊して以来、資力を都市に集中させ、他を切り捨てた結果、人類の生存圏は都市とその周辺になってしまい、都市部とそれ以外が、ハッキリと違いが分かるほどになってしまった。
都市内はリング状となっており、真ん中から、王城、貴族の屋敷、都市を円滑に運営する為の公共施設となっている。
ここまでが都市の中央、内周部に当たる。
更に外周部に、外敵から守ってくれる騎士団や衛士隊、冒険者ギルド本部が配置し、内周と外周の間には交通機関、商業施設、公園等がドーナッツ状に配置されている。
更に都市の外壁の周りには、都市計画とは関係無く、自然に作られた、遥かにテクノロジーが落ちる石造り、木造が入り混じった、農場、工場の施設、庶民、スラム民が住む都市外がある。
前世の歴史を思い浮かべてもらえば、古代ギリシャのポリスと言えば分かりやすいかも。
さて、この都市で私が住んでいるところは、幾重にも囲まれた壁の南側の最外壁寄りに作られた古ぼけたマンションです。
…ギリギリ都市内と言えないことはない。
一番外側の外壁にへばりつくように建てられているこのマンションは、かなりの年代物だが、人類文明絶頂期のテクノロジーが未だに生きて使えることから庶民には人気の物件なんです。
何しろ蛇口を捻ればお湯がでるし、エアコンが使えるし、ガスも通ってる。
文明って素晴らしいよぅって感じました。
都市外では、なかなかこうはいかない。
なにせ都市外は、まるで中世の生活が一般的なのです。
前世の便利で裕福な社会を経験している僕には耐えられません。
僕は、都市民に生まれ育ち、14歳の飛び級で学校を卒業した際、冒険者ギルド試験に及第し、この都市と自営業者が共同運営する下部組織に滑りこむことができました。
この組織は半官半民で運営している公社から仕事を斡旋してもらえる自営業者の組合で、通称を冒険者ギルドと言う。
なんと登録すると登録業者運営資金補助費という名目の基本給与が貰える。
給料ではないが実質給料と同じと見なされ収入が安定していることから、賃貸マンションの応募資格に該当し、幸運にも当選し一人暮らしを始めることが出来た。
…仕事と住む所を得た。
これって自立出来たと言ってよいよね?
幾ばくかの寂しさと、未知へ一歩踏み出した興奮、そして大人となった嬉しさに、しばらく寝付けなかったのを覚えている。
…
出勤するため、最寄りの駅から電車に乗り、都市方向へ向かう。
働かざるもの喰うべからず。
古代のトビラ都市黎明期に初代都市王がうちたてたこの鉄の掟は今でも健在で、百人議会の開催時には、その場にいる全員が唱和するのが伝統となっている。
資本は、都市政府が統括しているから、都市民全員が資本家であり、労働者です。
異世界へ転生するも、僕にはチート能力などなく、働かなくては食っていけないのだ。
異世界なのに、夢も希望もありゃしない…やれやれだ。
都市南門駅で乗り換える。
都市内を丸く走っている電車に乗り換える。
都市西門駅で更に乗り換える。
ターミナル駅では、流石に人の流れは多いが、電車内は座れるので、前世ほとに混んではいない。
しかし、何処もかしこも古いのを直し直し使っいるので、ギシギシ言ってる電車が最初怖かった。
職場は近いほうが良い。
だがしかし、居住地は変わらぬのに、職場には転勤があるのだよ。
住居地から、遠いから左遷かもしれない。
何やったんだとお尋ねの諸兄に答えよう。
異世界に来ても、人生とは、ままならぬものなのだ。
…
さて、ここまでこのトビラ都市を紹介した。
前世から比べたら厳しく夢も希望も無い世界に思えるかもしれない。
うん、確かに厳しい…かもしれない。
だがしかし、この世界には前世と違い、夢と希望と自由があるのです。
それは、もう少し読んでもらえれば分かります。