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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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山麓で朝食を

 取り敢えず、ルフナが家来になった?

 何が、取り敢えずなのだろう?


 うーーん、どう考えても、押し掛け家来だよね。


 真剣に問われ、その迫力に、…許すと言ってしまった。

 …しまった。

 …僕、押しに弱いのかもしれない。

 でも、決して僕はチョロインではないよ。

 

 だって友達から真剣にお願いされて、断れる人いる?

 溜め息をつく。


 でも本当に、ルフナ君、それでいいの?

 僕、将来性無いよ。


 僕は、野望も無いし、将来大成する見込みも希望も無い。

 ギルドの階級も現階級で頭打ちです。

 僕の自由な振る舞いに寄っては、降格も有り得る。

 いざとなったら階級より自由を選ぶから。既に経験済みだし。


 そうなれば、主従の階級逆転しちゃうよ。

 そうなれば、食べさしてくれるのかしら。

 そうなれば、僕、お礼に家事手伝いするよ。

 うんうん…良いかもしれない…ある意味スローライフだ。


 僕の将来の夢は、スローライフだから。

 ルフナは、其処のところ分かってるのかな?


 もし将来、ルフナが僕で不本意であるならば、懇意のお姫様達を紹介してあげよう。…うんうん、それで行こう。

 きっと数年もすれば、ルフナも冷静に判断できるはず。


 それでも僕を選んでくれるならば、僕も誠実に応えなければならない。


 …



 それにしても、臣従の誓いの時のルフナ、ちょっと格好良かった。…ちょっとだけだよ。

 少しだけ見直す。


 ブルー同士の模擬戦の際のルフナは、常に接戦。ショコラちゃんに危うくヤラレそうになってたりしてたけど、最後には大勝利。

 非常に見所のある試合でした。

 思わず応援したくなってしまいましたよ。


 うんうん…ルフナって、何だか頼り甲斐のある先輩って感じだよね。


 ショコラちゃんと、隣り同士で朝食を食べながら、昨日の事を思い返していました。




 朝食は、簡単にベーコンエッグ。パンとスープ、サラダ付き。

 昨日の、鉄板が活躍している。

 ロッポ中尉も活躍している。


 この場では指揮官かつ最上位の階級なのに、一番動いている。でも、止めてもきかないし。


 幸せそうで、とっても機嫌が良い。鼻歌うたってるし。

 ロッポ中尉曰く、今回の依頼ほど楽で充実感のある依頼は無いそうだ。

 「君達がいるお陰で、とっても気分的に楽だよ。自分の専門に集中できるし、ご飯も美味しい、最高だ。」

 などと、ベーコン焼きながらおっしゃってた。


 これ、僕ら褒められたの?

 でも、確かに山の中で食べるご飯美味しい。


 それにしても、ショコラちゃんの距離感がおかしい。

 僕にピタッと張り付いて座っている。

 気のせいかな?たまたま座る位置が狭かった?


 少し遠ざかるように座る位置をズラす。

 ショコラちゃんが詰めてくる。

 また、ズラす。

 また、詰めてくる。


 あれ?偶然ではない。おかしい。おかしいのは僕の方?ショコラちゃんちでは、食事の時は、この距離感なのだろうか?

 少し困惑。


 「あのー、ショコラ曹長。」

 「はい。なんですか?少尉殿。」

 素晴らしく良い返事だ。そしてニコニコしている。

 その笑顔を見てると何も言えなくなった。


 すると、反対側からエトワールが詰めてきた。

 きつい、きついよ。君達。

 僕の処だけ、人口密集率が高い。


 たまらずトレイを持って逃げ出す。


 少し先の方でダルジャン曹長とアントワネット曹長が隣り合って食べている。

 「お隣り、よろしいか?」

 僕が二人に声を掛けると、ダルジャン曹長が、どうぞどうぞと座る位置を多少ずらしてくれた。

 お礼を言って、ダルジャン曹長の隣りに座る。


 ダルジャン曹長が、クスクス笑っている。

 普段シッカリ者のお姉さん的な位置にいるダルジャン曹長だけれども、こんなふうに屈託無く笑う姿は、普通の年若い娘さんです。ちょっと新鮮。

 「…少尉殿も苦労されますなぁ。愛されて羨ましい限りであります。」

 「誰にでも良い顔するから、そんな目に遭うのよ。フン。…困ったら、いつでも来ても良いわよ。」

 さて、どっちがどちらの台詞でしょう?


 ダルジャン曹長は、クスクスと微笑んでいる。

 アントワネット曹長は、ツンとお澄まし顔だ。


 向こうを見ると、ショコラちゃんとエトワールが、しばらく呆然と見つめ合って、互いにフンッと顔を背けていた。

 でも、その後も移動せずに、隣り合って食べていた。

 仲悪くは、ないのだと思う。



 「少尉殿、今日の予定はお決まりか?」

 「はい、お決まりです。…朝食後、指示説明しますけど、軽く運動した後に、エトワールから訓練重点を個別に指導を受けて下さい。その間、僕とロッポ中尉で、先の方を実査して来ますね。山頂までの測量もして来ますので遅くなりますけど、日没までには戻ります。」

 ダルジャン曹長の世間話しを模した質問に、行儀悪いけども、モグモグ食べながら答える。


 軽い運動と言ったところで、アントワネット曹長がウヘーと言う顔をしていた処が、正直で可愛い。

 「少尉がいないからって、別に寂しくなんかないんだからね。…お夕飯は一緒に食べるんだから早く帰って来てちょうだい。」

 うんうん…ツンデレですね。

 アントワネット曹長は、僕のアドバイスが効いたのか分からないけど、序列を上げた。武術序列第5位。大躍進だ。

 昨日のブルー同士の模擬戦では、武器を変え、迷いが消えたかのように、戦っていた。


 昨日、一番変わったのは彼女だ。一番頑張ったのも彼女だ。

 …僕は、誇らしい。

 僕の自慢の弟子で、自慢の妹だ。

 勝手に僕が、そう思っているだけなので、アントワネットには内緒です。

 若干、僕に対し天邪鬼的な物言いだけれども、全然気にならない。可愛い、可愛い、頭撫でたいです。

 「…なるべく早く帰ってきますね。」

 僕は、スープを飲みながら答えた。

 うん…出汁が効いてます。美味しい。



 朝食後、ブルー達に、これからの予定を指示説明し、ロッポ中尉と共に、実査と測量に出発した。





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