トゥール・ダルジャン(中編)
僕は構えた。
僕は、居合の構え。
対するダルジャン曹長は、正面に手を正中中段に揃えた構え。
謂わゆる、剣を持ったときの中段の構えだ。
どうやら、曹長は徒手格闘の経験は浅いとみました。
僕は、弱い。…分かっている。
あらゆる防御術を駆使しなければ、たちまちやられてしまうだろう。
同じ土俵には立たない。正面から正々堂々など自殺行為に他ならない。
装備、体調を整え、あらかじめの準備に最善を尽くし、戦略、戦術を駆使して、相手に打ち勝つ。
言わば一人軍隊であると、僕自身を認識している。
軍隊では、まず計画を立てる。
軍事作戦では、計画上既に僕は勝利している。
勝利出来ない時は、戦わない。当たり前の話。
準備9割、実施1割の配分です。
だから、後は計画通り実施するだけ。
実施では、過去、現在、未来の僕が連結、連動、連携しているイメージを持って遂行していく。
計画の有無は、戦いに厚みを持たせ、違いの様相を見せる。
行き当たりばったりで徒手空拳で闘うのとは全く違うのだ。
何しろ戦う前に勝利が確定している。
無論、この考えは弱者の考え方で、強者には、又別の考え方があるに違いない。
前世の僕は、強くもないのに無頓着で、その場限りの行き当たりばったり、それでも何やら上手くいってしまう人だった。
だから、最後には無理してあんな事に…。
僕は弱いから、準備は怠らない。
物資が無くとも、戦略・戦術は練る。
身体だけでは無く頭でも戦っているわけだ。
体調は、ウォーミングアップを充分過ぎるくらいしたので万全。
おそらくダルジャン曹長は、一筋縄ではいかない予感がする。
曹長は常にその場で最善を尽くしている。
彼女には戦術眼がある。
一度、僕に負けたからには、前回を上回る戦い方をするに違いない。
先手、まずは小手調べ。
ℹ︎武術発動…抜刀でダルジャン曹長の手脚を斬るイメージを飛ばす…。
発動せず?!
曹長の顔を良く見る…眼が半眼以下にしている事に気がついた。なるほど、ℹ︎武術対策には有効な手です。
むむ、些か悔し。
でも…これでは僕の足元くらいしか見れないじゃない?
それで戦えるの?
ℹ︎武術が、効かないならば次の手です。
全てが、計画通り。