表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイの生活
18/615

逃亡者

 何故か侍との戦い以来、少佐の機嫌が悪い気がする。


 多分僕が推測するに、強敵に勝っても、なお気を緩めない覚悟の表れだと思う…さすが若くして出世した野心家は違う。

 これからも、僕の命と生活と報酬の為に、彼には是非頑張って欲しい。



 少佐の調査によれば、強敵はあと一組ある。

 …油断は出来ない。

 午後9時には、エリヤ嬢が後継者であると決定すると少佐から聞いた時、エリヤ嬢が僕に向かい、真面目顔でブイサインしてた。

 信憑性あるんだか無いんだか…それってあくまで予定ですよね?

 腕時計を見ると現在は午後7時。

 予定を信じるとすれば、あと2時間逃げきれば、任務終了でお家に帰れる。


 ペンペン様どうしてるだろうか…?


 魔法生物で知能は僕らより高いから、自分の面倒は見れると思うけど、見た目太ったペンギンだからつい心配してしまう。

 ペンペン様は、お腹が空くと不機嫌になるし。

 ジャーの中には、まだご飯あるから大丈夫だと思うけど。

 今頃、テレビでも見てるのかなぁ?

 夜更かしを注意すると怒るし。

 全く、どうしようもないペンギンです。


 ペンペン様は自分の思い通りにならないと人にあたるのだ。

 自分の欲望に忠実なペンペン様。

 …僕も見習わなきゃ。

 心配だから、仕事が終わったら今日中に帰りたい。

 夜間でも、本数が少ないけど夜行列車がまだ運行してる時間なので帰れる…切符の値段は3倍増しだけど。




 ランクルタイプのクルマに乗り、郊外へ出発。

 乗員は、エリヤ嬢、ディンブラ・セイロン少佐、そして僕。

 あと増員は一人来た。聞いて驚け。

 ジャジャーン!!

 なんと増員は、前回一緒に仕事を受けたルフナ・セイロン兵長だー!

 

 たまたま近場にいた事と、ここ数時間で跳ね上がった、かなりの額の危険手当に釣られたらしい。

 今は、運転してくれている。

 助手席に座っている少佐との会話は無い…どうやら相性が悪いらしい。


 うんうん、分かるよ。相性はあるよね。

 僕も、かなり相手に合わせる方だけど、どうしてもダメな人はいる。

 …仕方ないよね。うんうん。

 深妙な顔で頷いてみる。


「テンペスト、言っておくが、私がこいつと喋らないのは、相性が悪いとかの話しではない。こいつが嫌いなだけだ。」

 少佐が僕が内心思っていることを言い当てた。

 あなた、エスパーですか?

 そして、実は少佐と兵長は知り合いだったんですか?

 言い当てられた事より、知り合いだった方に興味が湧く。


「軍曹殿、少佐とは喧嘩しとるわけではないですから。心配せんでください。」

運転しながら、そう答えるセイロン兵長。


「あら、あら、ディンブラったら、昔はルフナと仲良しだったのに。仲良くして、また私を守って欲しいわぁ。」

と、エリヤ嬢がのたまう。


 僕以外、皆セイロンだ、ややこしい。

 そして、僕以外皆知り合いだった。

 何だか人間関係もややこしい。

 でも、これからこのメンバーで戦うのに、この雰囲気は不味いよ。

 この少数でチームワークが悪いと生死に関わる。

 まずい、まずい、まずい。このままではまずい。


「僕も、二人には仲良くして欲しいなぁ。ほら、任務にも差し支えるかもだし。」

 前席の二人に対し、ぎこちないながらもニッコリと微笑む。

 はは、サービス、サービス。

 めったに笑わないこの僕が、サービスしてるだから仲良くしろ。


 僕の方を見てウッと、一瞬黙り込む二人。


 しかし、少佐が衝撃の事実を告げる。

 「テンペスト、こいつはなぁ、昔逃げ出したんだ、昔は尊敬していた。なのに、こいつは家族を裏切ったんだ。私は、こいつを兄とは思わない。」

 ジャジャーン。

 衝撃の告白、…マジ?君ら兄弟だったの?!

 何故、今、初対面の私に言う。重い、重いぞ、実に。

 何故に、この時、この場所で、カミングアウトするのか。

 そして何故エリヤ嬢は、僕の手をずっと握っているのか。

 分からない、全く世の中は分からないことだらけだ。

 

 「あら、あら、あれは何かしら?」

 エリヤ嬢が、この場の空気に頓着してないユックリとした言い回しで、窓外を指差す。


 ん…?

 あ、あれは、鳥? いや飛行機? 違う、あれは、

 エリヤ嬢の指し示した先、空を人間大の物が飛んでいる。

 目に魔力を集中。

 「expansion。」呟くと視力が拡大し、遠くを飛んでいる人間大の物が、ハッキリと分かった。


 …人が飛んでいた。

 いや、正確に言うと軍服を着て銃を持った軍人が編隊をつくり、空を飛んでいる。


 「search。」呟き、魔力を伸ばす。…届いた。

 パターン赤。

 あれは、空挺魔導部隊。実戦配備されてるとは驚きだ。

 風魔法を使えば空を飛ぶことは可能だが、かなり高度な技術で、希少な魔導師で部隊編成するとは現実的では無いと言われていた。 

 しかも敵だ。その数10人。一個分隊。

「パターン赤、敵です。数は10、方向左上空、距離約10km。」

皆に注意を促す。

 まさか空から来るとは。…対抗策が思いつかない。

 このままだと反撃も、出来ないままやられるだけだ。

 

 制空権を取られたら、戦いは、まず勝ち目がないのだ。


 どうする?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ