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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
178/617

新生

 10分過ぎたので、バスから外へ出る。

 深緑の薫りがした。


 うんうん…良い薫りです。

 やはり、山は素晴らしい。


 軽くステップを踏み、バスから地面へと降り立つ。


 前を見ると、バス前にブルー達が、一列に勢揃いしている事に気がついた。

 ん?

 見渡す…ロッポ中尉とエトワールは、列外の上席の位置にいる。


 あれ?


 列最右翼に位置するルフナ曹長が、僕に対し敬礼して叫ぶように申告する。

「ハクバ山探索部隊、集合終わり!」


 ??…君達、いったいどうしたの?



 さっきまで、自分勝手にグダグダで、動いていたのに、僕に対しての、あまりの変わりように、少し驚いた。

 えーと、僕、そう言うのはちょっと趣味でないです。

 「…リテイクでお願いします。」




 密集隊形を指示し、皆んなを集めて事情を聞く。


 「俺は、自分の、弱さに呆れちまったぜ、あの時から少尉殿を目指して、自分で修練を積んだつもりだったが、全くなってなかった…やり直しだ。襟を正すぜ。俺なりのケジメだ。」

 「未熟者の私ですが、アールグレイ様の脇に控えてお助けしたいのです。ですから…私と末長くよろしくお願いします。」

 「そうね、少尉殿とは決着はついてないし、ショコラ様が支持するから、私も貴方に付いていくのよ。私が貴方に恩を感じてるとか、ドキドキしてるとかじゃないから勘違いしないでよね。」

 「わたくし、アールグレイ殿の天晴れな決断、対応、物腰に感服致しました。先程の武術的な舞も眼福で、もう一生付いて行きたいです。」

 「もう怖くて怖くて、生きた心地がしません。逆らわないので、もう勘弁してください。」

 「あー、私は、少尉殿の強さは、前から知ってたので、今更ですけど、勿論少尉派ですから。」

 「俺は未熟者で全くなってなかった。見た目で判断する愚かさを思いしったぜ。これからは少尉殿を師匠と崇めるから許して欲しい。」

 「…以下同文。よろしくお願いします。師匠。」

 誰がどの台詞を言っているのかは割愛するけど、態度が豹変してる人や反省してる人、降参してる人、僕に対しての言動、態度が大なり小なり変わってしまっている。



 エトワールが、天を仰いでヤレヤレと首を振っている。

 ロッポ中尉が、瞼を伏せ、腕を組んで、ウンウンと頷いている。



 何が何だか良く分からないけど、僕が着替えてる間に、状況が上手く変わっていた。

 ハッ、…ジンクスだ。

 凄い。ジンクスまたもや達成!

 学生時代の親友の助言、凄いよ。

 聴き入れた当時の僕も、凄い、偉い。



 みんなの殊勝な物言いに、僕の心もジーンと来るものがある。

 僕の皆んなへの想いは、一方通行だと思ってまして、それでも良いと覚悟している自分もいて、…そのように返してくれると、ちょっと感動してしまいますよ。



 クルリと皆んなに、背を向けて眼を瞑る。


 絶句して背を向けてるけど、怒っているわけではありません。…こんな気持ちは、もしかしたら前世を通じて初めてかもしれません。だから、少しだけ待って下さい。



 ロッポ中尉が、訳知り顔にウンウン頷いているのが見えた。

 振り返ると、皆が心配そうに僕を見ている。


 大丈夫。君達は、もう大丈夫。

 きっと全員、試験に合格する。僕が保証するよ。

 今、君達は、素直に耳を傾けることを会得した。

 傾聴と言う、心の有り様。

 指揮官には必須の項目。

 更に、自分が弱いという事実認識。それでいて、諦めず上を目指す覚悟。

 僕を知り、己れを知る。

 人は変われる。君達は変わった。

 準備は整った。

 本番は、これからです。


 僕は、ニッコリ笑って、皆に言う。


 「さあ、模擬戦の続きです。次は誰?」

 全員が手を挙げる。


 いやいや、続きだから…


 



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