鎮魂の舞
ええ!また…どうなってるの君達?
呆れてしまった。
僕の今の状態は、完全に不完全燃焼です。
両耳から、不平不満の蒸気がプシューと噴き出しそう。
気分は、青菜に塩。シオシオノパーです。
そもそも、降参とは何事か。
(貴様、それでも戦士か、腹を切れ!)
剣呑な言い回しが、刹那にダブって浮かぶ。
いやいや…怒ることではないよ。
怒っても、何のメリットもないから怒らないし。
だって、前世の僕の20歳前後の頃と比べたら、遥かにましだもの。
落胆と怒りの感情の波が、交互に訪れるも表情に出さず。
瞼を閉じる。
何となく身体に力が入り過ぎている気がする。
少し放出した方が良いかも。
僕は、他人のアドバイスは、聞くほう。
友達ならば、尚更だ。
学生時代の親友から、アドバイスを受けた事がある。
(不平不満が心の中で、渦巻いているのを感じるときは、心と身体のバランスが崩れている時。修練すると良いわ。思い切り震脚を踏んで、気分がスッキリすれば、きっと物事は上手く動き出すわよ…。)
うんうん…そうだよね。
だから、これは整理体操みないなものだよね。
脚を揃えてから、震脚を踏む。
僕の震脚を踏む振動が辺りに響く。
学生時代に、親友の助言を聞き、この整理体操をした後は、滞っていた物事が、必ず上手くいくようになった。
むろん、関連性が無いことは分かっている。
これは、ジンクスです。
幸運の御守りを使うような感じです。
実際の効果は、僕の気持ちが身体を動かすことで、スッキリする事。
きっと、僕の気持ちが変わった事で、自然と周りに良い影響を及ぼすのだろう。
モヤモヤとした気持ちが、震脚を踏むたびに昇華していくようだ。
だから、今の僕の気持ちを込めて、大地を踏み締める。
大地が振動してるように感じるけど、人跡未踏の山の麓だから、誰にも迷惑は掛けていない。
だから、思い切り、大地を踏む。
身体の中をエネルギーがうねっているのを感じる。
何でもかんでも、安易に他人に頼るのはいかがなものか?
自分の主張をしたいならば、自分の責任で行動するのは当たり前で、何故に他人にやらせようとするのか?
他人は良くて自分だけが悪いのかと、第一声の反省の声がコレなのはいかがなものか?
反省すると言いながら、あからさまに自分の責任では無いと言を述べる不誠実な口を縫い付けろ。
僕は、質問することを許した覚えはないし、何故に僕がお前の質問に答えなければならないのか?
現在と全く関係無い、前世の憤りが、僕の落胆と怒りに起因して噴き出して来る。
今世では、他人の無責任に起因する理不尽に遭遇することは、ほぼない。単純に理不尽なだけなので、こちらも理不尽で対抗するだけ。だから思う処は無い。
でも、僕には前世の記憶がある。
理不尽な目に遭遇する事が、たびたびあり、何処にも行き場の無い憤りが渦巻いている。言わば悪の業みたいなもので、逆チートだ。
だから、たまに鎮めてやるのだ。
僕の震脚は、鎮魂の舞。
踏むたびに、前世の僕の憤りが、今世の僕の気持ちと重なり、鎮まるのが分かる。
…
数えているわけでは無いけど、震脚を踏んだ数が300以上を越えた頃、…僕は動きを止めた。
昇華したのが分かったから。
全身が汗だくだ。
全霊を込めた震脚を数多く、踏んだのだ、…さもあらん。
噴き出しかけた僕の前世の憤りも鎮まった。
同時に今世の僕の気持ちも収まった。
額の汗を拭い、辺りを見渡す。
ブルー達が僕を見ている。
いつの間にか起き上がったショコラちゃん、ダルジャン曹長、ルフナ曹長、ロッポ中尉とエトワール、ティナ君、ここにいる全員が僕を見つめている事に気がついた。
…少し、恥ずかしいです。
僕は、15分の休憩を皆に指示すると、そそくさとバスに戻った。全身全霊を込めたので、全身汗だくなのです。
着替えたい。