修練
さて、途中でアクシデントがあったけど模擬戦の再開です。
山中を駆け回り、七転八倒し、二人ほど救出するなど密度の濃い時間を過ごしましたけど、時間にすれば、それ程経っておりません。正味ニ時間弱くらい。
僕は、黒山羊様に、業が一部食べられちゃったけど、体調がすこぶる良いので、再開なのです。
でも、僕を助けに行く為、組織した別働隊のメンバーである、ロッポ中尉、ショコラちゃんとダルジャン曹長は、休憩です。かなりの強行軍で追跡してくれたらしい。
木陰で、すっかり伸びてしまっている。
ルフナ曹長も強行に自己推薦してたらしいけど、あまりにチーム分けがアンバランスになるとよろしく無いという理由から、エトワールに外された。
直接的には、ショコラちゃんとダルジャン曹長にジャンケンで負けたらしい。
うんうん…皆んな友達だものね、ありがとう。
ダルジャン嬢からは、友情というよりも畏敬の念とか別の情念みたいものを感じたりするけと、友情の一種と看做してもよいよね。
アントワネット嬢は、体力不足から断念したらしい。
ごめんなさいと謝られたけど、気持ちだけで嬉しいですから、無理しないでね。
ちゃんと観測してるかねとエトワールの方を見ると、ティア君がくっ付いていた。引っ付き虫だ。
お父さんが、すっかり良くなったので、安心してこっちに遊びに来たらしい。
お母さんと一緒に暮らしてないから、きっと寂しいのだろう。エトワールも満更じゃない顔をして、頭を撫でたりしている。
それにしても、ティア君、僕のことを憎々しげに睨むのは止めて欲しい。
こんな小さいお子に恨まれるのはダメージ大きいよ。
さて、無理矢理に気を取り直し、次の相手は、もう決めている。
「ルフナ・セイロン曹長、前へ。」
「おうよ!」
ルフナ曹長は、勢いよく返事をして、僕の前まで来ると一礼した。
粗野で男らしいのに、ちゃんと礼儀は守るし…僕も男だったらルフナ曹長みたいになりたかった。
ボゥッとしちゃったけど、僕も若干慌てて返礼する。
構える。…曹長も無手だ。一緒だ。
僕に合わせてくれたのかな。
ちょっとウキウキしながら双手防御の構えを取る。
[火手]には、基本防御技は無い。だからこの構えは、防御の構えではなく、双手攻撃の構えと言うべき構えである。
しかも、防御を考えない超攻撃的な構えなのだ。
対して、曹長の構えも、双手防御の構えだ。
但し、僕が手の平を相手に見せ、前へと突き出し、体をほぼ正面に向けてるに対し、曹長は、手の甲を相手に向け、顎の両側付近まで上げて、体は半身の構えだ。
防御回避に特化した構えだ。重心を後ろに掛けている。
ならば…こちらは前進あるのみ。