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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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レスキューアフター

 まず結論から言おう。

 子供は救かった。…メデタシメデタシ。


 ロープの足りない部分を、付近に、自生していた蔓で代用したのだ。僕が噴火口に降りる直前で思いついた。

 もちろんそれだけではなくて、浮遊魔法も使って、浮かないまでも身体を軽くし、土魔法を使って崖の壁面を固めた。

 落ち着いて考えれば、結構思いつくもので。


 何も単発の要因で、解決しなければならないわけではない。

 一つで駄目なら、複合的に、編み込んだ切れない縄のように、折れない三本の矢のようにすれば良いだけの話しだ。


 現実の因果を考えてみるば、大抵の結果は一つではなく、いくつもの原因が、それこそ無数にあるのが普通だもの。

 ただ、事後では誰でも分かる事でも、急場では、なかなか思いつけない。

 火事場の馬鹿力は出る代わりに、判断力、思考力はすこぶる性能は落ちる感がある。

 だいたい半分も出せれば良いほうだ。

 こればかりは修練と経験を積むしか対策は無い。


 でも、僕が思いついたのって黒山羊様との取引の効果?

 もしそうならば、半身を引き裂かれ喰われた割には、ショボい効果です。異議申し立てをしたいけど、多分却下でしょう。

 そんな事したら、今度は黒山羊様の鼻息の一息で消されるかもしれないしなので絶対やらない。


 ヘタレと言うなかれ。


 それぐらい戦闘実力に差があり過ぎるのです。

 三回目は、絶対に黒山羊様とは邂逅したくございません。

 まあ、子供が救かったのは感謝している…いまいち釈然としないけどさ。


 あれから、救けた子供に事情を聞いて、子供のお父さんも救けた。[白掌]で直したの僕です。


 でも何故か僕、子供に嫌われてしまったみたい。

 事情を聞いたのも、後から駆けつけてくれたロッポ中尉とショコラちゃんだし。

 僕とは口さえ訊いてくれないし。声を掛けても親の仇みたいに睨みつけてくる。

 名前は、ティア君と言うらしい。ショコラちゃんから聞いた。


 恩に着せるつもりないけど、ティア君とお父さん救けたの、僕なんだけど。

 お父さんは、とっても感謝してくれてたよ。


 あれから、人恋しいのかティア君は、キャンプ場所に、よく来るようになったけど、ショコラちゃん達には懐いているのに、僕には近寄ろうともしない。

 エトワールにさえ、普通に懐いているのに。


 …解せぬ。


 もしかして、黒山羊様から半身を喰われた際、七転八倒して獣のように泣き騒ぎ悲鳴を上げてた様子が聞こえていて、僕を軽蔑又は畏れを抱いてしまったとか…。


 或いは、もしかして、清浄の魔法を使っていたのがバレたのかしら…僕が痛みと苦しみのショックで漏らしてしまったのバレていたとしたら、子供とはいえ恥ずかしい。


 はたまた、もしかして、救けることが出来ずに崖上で右往左往してたのを感じて、頼りない大人だと見限られたのかもしれない。だとしたら本当だけに痛恨の極み…不安にさせて御免なさい。自業自得なだけに…悲しいです。


 ティア君の信頼を勝ち取る為に、地道に頑張るしかないよね。それでも駄目なら…なるようになるしかないか。


 それにつけても僕の体重は、本当に減っておりました。

 僕が感じた半分くらい減ってた。

 でも体調は、実はすこぶる良い。


 黒山羊様は、前世の善のカルマが無くなると幸運が無くなる云々言ってたけど、全く僕の日常には支障は無い。

 いったいどういうことだろうか。


 それでも胸に、何やら空虚な感じがあるのは拭えない。


 この空いた穴は、何かで塞ぐ事が出来るのだろうか。



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