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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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ショコラ心情録(後編)

 アールグレイ少尉が創り出したテーブルや椅子、作業台は、表面をなぞると、まるで陶器のような手触りでした。


 うーーーん、やはり凄い。


 だいたい、本職の土専門の魔術師でも、手作業で作る方が楽だと聞きます。

 いったい、どの様に訓練すれば、このような見事な手際になるというのですか。

 考えても、見て触っても答えは出そうにないので、これは、ひとまず保留です。


 さて、お昼ご飯を、料理する事に頭を切り替えます。


 でも、今回は、段取りを、少尉達が指示してくれるので、とても気分が楽です。自分だけのやるべき事だけに集中できるから。


 まずは、ご飯を炊きます。

 飯盒に米と水を入れ、火に掛けました。

 後はルフナ曹長が見てくれるそうです。


 ウバ曹長が、冷却魔法を掛けていたお肉、野菜などをバスからとってきて調理台に載せ、その食材を、アールグレイ少尉が指先一つで突っつくとパリーンとガラスが割れるような音と気配がして、魔法が解除されました。


 へー、魔法って、こんなに簡単に解除できるんだ。


 手を洗ってから、少尉が、包丁を切る見本を見せてくれました。犬の手の様に指先を丸めて、指を切らないように指導されます。


 ああ、とても少尉が近いです。

 うなじが、白くて滑らかな曲線が優美で、とってもキレイ。

 抱きしめて頬ずりしたい欲望がウズウズと湧いてきます。

 ダメよ、もしそんな事したら変な子だと思われで敬遠されてしまいます。

 でも、でも少尉から、とっても良い香りが、微かに漂って来て、これは極上のフルーツのような…柑橘系の…?


 「ショコラ曹長、ちゃんと見てますか?」

 可愛いらしくも凛とした鈴を転がすような声に、ハッとする。

 少尉が私を見ている。

 イエス、マム。勿論ですとも。

 若干慌て気味に返答する。


 ふー、危なかった。でも少尉の色香に、一瞬惑わされるとは、私もフォーチュン曹長を笑うことは、出来ませんね。

 でも、私はノータッチですから。


 でも、でも女の子同士だし、触っても構わないのかな。

 手を握ったりするのは自然だし、親しくなれば、抱きつくのも自然だし、ハグやキスも挨拶の一種であるとする異国があるとも聞きます。…考えるとドキドキしてしまいました。

 動悸息切れがします。でも少尉が、こんなにも近い位置にいるなんて幸せ感満載です。

 クンクン…ご褒美ですよね。


 「ショコラ曹長、やってみますか?」

 キュ!驚きに息を止める。振り向いて私を見る少尉、ああ…素敵。至福の時です。




 気がつくと、至福の時は、終わってました。


 ああ…なんてことでしょう。


 少尉のお陰で、学生時代に習得出来なかったカレーライスの作り方をマスターしました。

 きっと、この至福の時を過ごす為に料理を習得しなかったに違いないですね、学生時代の私、ナイスファインプレイですよ。


 でも、まだです。まだ私のターンは、終わっておりません。

 料理を教えてもらう最中に、少尉が、「カレーには牛乳が合うよね。」と、おっしゃってました。

 情報と言うものは、活用する為にあるのですよ。


 ウバ曹長に、ニコッと愛想笑いしながら、冷えた牛乳を分けてもらう。ビンゴです。ホワイトシチュー用に、何本か冷やしてストックしてあったそうです。


 今後のエペ家とセイロン家の友好の為に分けてもらいました。アールグレイ少尉に献上する為と正直にお話します。


 いそいそと牛乳を持って、少尉の元に出向きます。

 案の定、喜んでくれました。

 少尉と一緒に作ったカレーを、少尉の隣りで食します。


 ああ、このまま時が止まれば良いのに…。


 何気にアールグレイ少尉の左隣りにエトワール少尉が座っていますけど、何も気になりません。

 右隣りの席は、私のものです。


 カレーを食しながら、少尉とお話しします。

 日頃から、情報戦を制する為に、情報収集は怠りません。

 情報を制する者は、世界を制するのです。

 アールグレイ少尉の興味ある話題に即座に対応して、情報を提供する。

 ふむふむ、少尉はデザートとラーメンにご興味が…これは要チェックですね。


 話しの流れで、私の興味ある事を少尉から尋ねられる。


 え!わ、わたしの興味ある事ですかぁ?

 そ、それはですね。…返答に困ります。

 少尉のお顔をチラ見してしまう。 

 「そうですね。今、興味あるのは…ズバリ、レッド(あなた)に相応しい実力を、どう付けるかですかね。」


 少尉は、大変お喜びになられましたが、私の言葉の半分しか伝わりませんでした。

 安堵すると共に、少し残念かも…。

 ドキドキして、顔が熱いです。


 少尉から、僕をしっかりと見ていてねと言われたり。

 「はい、ジックリと見さしていただきます。」

 やった。少尉自ら見て良い許可をいただいた。

 今日から24時間見てても良いんだ…幸せ過ぎる。


 あっ…… 少尉が微笑んだ、幸せそうに。




 

 あまりの衝撃に、思わず声が漏れる。



 こ、これは、ヤバイです。

 威力、半端ないです。

 私、感動で、泣きそうです。

 これ、絶対、少尉から幸せの波動が出てます。



 しかも、少尉のお顔が私に急接近、なんと、私のオデコに少尉のお手が触って…。

 「ひっ…。」

 どうやら、私の顔が赤いの心配されてるみたいですけど、こんなに急接近したり、触られたりしたら逆効果です。

 お手から、少尉の温もりを感じてしまいます。

 はわわ…少尉がジンワリと私の中に流れて来ます!


 心臓がヤバイくらいドキドキして、も、もっと、触っていただきたい気持ちがありますけど、私、これ以上は幸せ過ぎて死んでしまうかもしれません。


 そんな時に少尉に耳元で囁かれる。

 「大丈夫、…しっかりして?」

 少尉要素が私の脳髄に直撃しました。

 これは、少尉が、私の中に強引に入って来たのです。


 多分、ショックと多幸感で、意識と脳がショートしたのでしょう。私の中で何かが焼き切れた感じがしました。


 「あっ…もうダメ。」

 私は、これ以上無い程の幸せ気分に包まれながら、意識を手放しました。



 後から、エトワール少尉も、あの笑顔にヤラレタと聞きました。

 むぅ…浮気はダメですよ、少尉。

 埒もない気持ちが浮かんでくる。

 女の子同士だから、これは浮気とは言わない。


 でも、以来、私の中で、アールグレイ少尉の微笑みを独占したい気持ちと、あの衝撃を受けた際の感想を共有したい気持ちがせめぎあっているのです。


 まったく、困ったものですね、少尉は。


 

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