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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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期待可能性

 お昼に、少しアクシデントがあったけど、午後からは真面目にやろう。

 いや、今までも真面目にやってましたよ、もちろん。


 しかしながら個々のデータは、まだアントワネット曹長しか取れてない。

 準備期間は、今日一日で済ませたいから、少し押してるかな。

 しかし、最大難問であった序列最下位のアントワネット曹長が終了してるので気分的に楽ですが。



 でも、アントワネット曹長との模擬戦で、改めて自分の立ち位置が分かりました。

 僕は、この世界に、何処にでもいる平民の凡人として生を受けた。

 異世界チートな能力を授からなかったのは、正直少し残念ではあるけれど。

 でもね、五体満足な身体だし、この世界には魔法がある。

 …ワクワクするよね。

 鍛えれば強くなるし、技能は修業すれば身につくし、知識を身につければ、視野が広がり、思考に深みを増す。

 十分過ぎる。


 だから、僕は神様がいるとしたら、感謝したい。

 ありがとうごさいます。

 取り敢えず、今日も黒山羊様に感謝の念を送っておく。

 ナムナム…。


 僕が村人Aと同義ならば、僕は、この世界では、何の使命も無い、プレーヤーに関わる重要人物でも無い。

 自由です。

 何を、僕がどうしようと、世界の命運に関わる事は無いのです。偶然に気をつけさえすれば、巻き込まれることは無いでしょう。黒山羊様と面会したのは偶然ですから。

 もう無いですよね、あんな偶然は。


 自由って素晴らしい。

 僕の人生は、僕の自由だ。

 今更ながら、それは前世でも言えることだった。

 しなければならぬと概念に縛られて、自由ではなかったと、今なら分かる。

 今世、僕の中で一番重要なのは、意志の自由だ。

 誰かの思惑に縛られず、誰かの欲望に巻き込まれず、誰かの概念に強制されたくはない。


 しかしながら、僕の意志と社会との関わり方については、100%自由とはいかないのは分かっている。

 人は一人では生きて行けないし、社会的な恩恵を受ける以上、社会的義務・役割を担わなければならない。

 もし、怠れば一人の負担が大きくなり社会は崩壊してしまう。それは困る。

 無理ならば転進も已む無しな状況もあるかもしれないけど。

 要は、バランスだと思う。

 公共の福祉と個の自由、バランスを見極めなければ。

 

 前世の社会が、あれほど眼に見えない縛りが多かったのも、主権者が自分自身に甘かったせいだろうなと、今更ながら思う。正当な理由も根拠も無しに、ネットから自分に都合の良い言い分を見つけ出して正当化し、嫌だ嫌だと文句ばかりで何もしやしない人が多すぎた。


 それは自由とは言わない。


 それは欲望とか怠惰とか我儘と言うものだよ。

ならば見えない鎖で縛ってやらせるしかなかったのだろう。

 守る人を、後ろから刺す行為。責任取らず文句ばかり言う。

 いったい何様なんだろうか。


 前世の社会構造の弱点は、自分に甘く、なるべく自分が責任は取りたくない社会構造だから、いざ有事の際も、早急に誰も事態解決に動くことが出来ないことだ。

 権限無く動くことは、無理なのに、要求するのは如何なものか。現場で犠牲者が出る社会構造でした。

 

 社会を身体に例えれば、癌細胞が発見されても医師に執刀する権限すら与えず、病院にも行かず、痛いのは嫌、面倒なのは嫌、お金払うのは嫌、と文句を言いつつ、でも何とかしろと言っているようなものだ。

 こんな患者に関わったら、訴えられるのは眼に見えてるから、誰も助けようとしないね。

 まあ、実際は、それでも助けようとするのだろうけど。

 ハッキリ言って異常な社会構造でした。

 でも、中にいて異常に気づくことは難しいと思う。

 至難の業だ。


 今世では、基本自力救済だから、その様な人が居たとしても淘汰されてしまうので、会うことは無い。良かった良かった。


 前世は、僕にとっては、既に過去の出来事で、僕の魂の歴史の一部に過ぎないけれども、もし僕の今世の知見が、前世の僕に影響を与えるとしたら…もし与えるとしたら…。

 溜め息をつく。

 いやいや、それこそ無理な話しだった。

 過去には戻れない。

 僕は、前世を含めこれまでの過去を反省して、今に生かして行くよ。

 それが前世の僕に対する供養というものだろう。



 取り敢えず、今世では思い残すことはしたくない。

 人は、いつ死ぬか分からないから。

 

 だから、ショコラちゃんに、感謝と友愛の思いを伝えよう。

 僕の理念どおり、言葉では無く行動で、模擬戦の相手を全力でして伝えるのだ。

 友達…友達になりたいから、まずは、自分からアクションを起こすのだ。



 

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