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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
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異世界料理

 僕は、アントワネット曹長にアドバイスをした。

 素直に耳を傾けてくれたけど、やるかやらないかは、アントワネット次第である。


 性格上の向き不向きは一朝一夕で直らない。

 でも僕は、センスが無いなんて一言で、若者の未来を閉ざすことは、絶対にしない。


 煉瓦を一個一個積んで、大きな家を建てるように、ステップアップすれば良いと思う。

 センスの有無なんて、些細な問題だ。

 そうだろう?


 僕なんて、ズボラでナマケモノで気が効かなくて、センスのカケラも無い無い尽くしだよ。

 でも、僕は、自分自身を知っている。


 アントワネット、今日、君は自分が弱い事を知った。

 何も出来ない、情け無い自分を知る事が出来た。

 一番大切な事を、今日、君は学んだ


 自分自身の正確な実力を、現在位置を知る事が出来た。

 僕を倒す目標を定め、方向を決めた。

 だからこそ、今スタートすることが出来る。


 だから、アントワネット、決して諦めないで。

 僕は、君を見ているから。

 応援しているから。


 組織の強さとは、底辺の強さである。

 序列最下位のアントワネットが強くなれば、組織全体の強さとなる。

 底上げです。

 アントワネットを鍛えて強くするだけで、全員強くなる…多分。




 太陽が中天に差し掛かっている。


 

 そろそろ、お昼ご飯の時間ですね。

 僕のお腹も、先程から、オナカスキモウシタ ハヤクイレテタモレと、うるさい。


 「模擬戦は一旦止めて、お昼ご飯にしましょう。…今日の献立何ですか?」

 僕は、ブルー達に、模擬戦の一旦中止を指示すると、エトワールに今日のお昼のメニューを聞いた。

 「え?知らないわよ。」


 え?何ですと。


 大事な事が発覚した。

 メンバーを集めて確認した所、ロッポ中尉と僕、ルフナ曹長以外料理が出来ない事が判明した。

 なるほど、そういえば、皆んな生まれながらの貴族ばかり。


 腕を組んで考える。


 貴族は料理しないのでしょうか?

 でもでも、一人暮らししてる人もいるよね。

 食事は、どうしてるのか聞いたところ、メイドが来て作ってくれるとか、外食しますとかの回答でした。

 剣は握っても、包丁を握ったことが無い者が大半だという事実に、頭が痛くなりそう。普通逆だよね。

 そう言えば、ウバ君も前回の探索では料理以外の作業してたわ。

 …いやいや学校の家庭科で習ったじゃん。

 カレー作ったでしょうに。えっ、周りの平民の子達がテキパキ作ってくれて鍋の火を見てただけ?盛り付けしたら褒められた?

 つ、つまり、君達料理スキルは無いのね。

 ロッポ中尉とルフナ曹長以外が、堂々と、うんうん頷く。

 エトワールなどは、胸を張って自信ありげに頷いていた。

 言っとくけど、僕、誉めてないからね。


 それにしても、…マジですか。

 どーしよう。精鋭を集めた弊害が料理面で出るとは。

 僕の料理技能は、最低限自炊できるだけで、自信持って料理と言えるものは作れませんし。

 ちなみに僕の最近のスペシャリテは牛丼です。


 でもまあ、3人いれば何とかなるかな。

 それにしても11人中、料理できる人が僕以外、男二人とは。唯一女子の僕だって前世は男だから、精神的には純粋に女子100%とは言い難い。女子率低いよ。

 これは女子の沽券に関わるのではないか。せめて平均化したい。

 「アールグレイ少尉。」

 うんうん考えこんでいると、ショコラちゃんが声を掛けてきた。うん、何かな?

 「私、料理、初めてですけど、少尉に手取り足取り教えていただければ、頑張れると思います。」

 「わ、私も、教えられても良いわよ。模擬戦では世話になりましたし…。」

「私も是非、アールグレイ少尉殿に、ご指導いただきたい。」

 おお、エペ家の女子達は、やる気十分ですね。

 こうして見ると、三者三様なのに、団結して助けようとする心意気とか雰囲気とか似ているよね、君達。


 それでは、まあ定番のカレーならば、初心者でも作れるかな。僕とロッポ中尉、ルフナ曹長に、それぞれエペ家の女子達が補助で付けば、なんとかなるかな。

 他の人達には、テントを張ってもらおう。


 そこの関係無いフリしてるエトワール君、頼んだよ。


 誰が誰に着くかは、いつの間にか、女子三人でくじ引きで決めていた。

 僕の担当は、ショコラちゃん。

 ロッポ中尉が、アントワネット。

 ルフナ曹長が、女騎士のダルジャン。


 皆んなで、手分けして料理する。

 と、言っても食材を切って炒めて、鍋で煮るだけだから超簡単です。初心者にはちょうど良い。

 ご飯を、飯盒で炊く方が難しいかも。

 

 料理してる間、気づいた事がある。

 アントワネット曹長との決闘の後から、何故だか女騎士さんから見つめられてるのを、感じる。


 どこと無く熱い視線を感じて、振り向くと、ダルジャン・ブルー曹長と目が合う。

 目が合うと、嬉しそうに目が輝き、鼻息が荒く、僕をジーと見続ける。

 別に女の子から見つめられるのは嫌ではないけど。


 あれは、……何だろうか?

 分からない。

 意味が、まるで分からない。

 なんだか主人を待つ犬っぽいと思ってしまったのは、ダルジャン曹長に失礼だろうか。

 しかしながら、あの反応は何なのだろうか

 

 分からないので、取り敢えず保留としておく。

 直接聞くのは、何だか怖い気がするので。



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