表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
152/615

ダルジャン・ブルーと試練(前編)

 アールグレイ少尉の終了宣言を聞いて、途端にズシリと身体が重く感じられた。認識したら、足腰が砕けるように力が入らなくなって座りこんでしまった。


 私の名は、ダルジャン・ブルー・ダーマン・エペ。

 護民の騎士を志し、ギルドレッド第一次試験に、今、合格した者です。


 8名全員合格。

 それが何より嬉しい。

 やりましたわ。アントワネット。私達合格したのよ。


 疲労は、今まで経験した事が無い程のもの…。

 身体中が悲鳴を上げている。

 今になって、自分自身の呼吸音がうるさい事に気がつきました。


 ハッとして、周りを見渡す。皆は無事なのでしょうか…?


 死屍累々のていを為していますけど、何とか大丈夫そうですね。

 …良かったわ。

 ホッと安心していると、ふとアールグレイ少尉と眼が合いました。

 私を見ていた…何故?

 目線が合ったのは一瞬、でも、その刹那に、少尉の目の中に何かがあり、私はそれを受け取った気がしました。


 今のって何なのかしら…?



 少尉が、模擬戦前の指示を出し、バスに向かって歩いて行ってしまった。その足取りは軽いように見える。

 もしかして、少尉にとっては本当にウォーミングアップだったのですか?まさか、いや…まさか…。



 模擬戦前に水分だけでも、取らなければ…と思い返す。


 その時、ロッポ中尉が水缶を、持って来てくれたので、皆、飲む事が出来た。

 でも中尉も私達と一緒に走っていたはずなのに、少尉といい、レッドにとっては、この程度の運動はあまり応えないのか…。掠れた声で、お礼を何とか言えた。

 息を整える。

 水分が身体を染み透るように巡っていくのが分かる。


 あーーー ーー。



 その後、身体を引き摺るようにして、バスへ武具を取りに行く。

 あー、この時ばかりは、後衛や体術のみの者が羨ましいです。



 バスに入ったら、上半身を肌けたアールグレイ少尉が立っていた。


 タオルを首に掛けて、ペットボトルからストローをくわえて、片腕を腰に当て、美味しそうに飲んでいる。


 少年のように無防備な身姿に目が引き寄せられた。


 女性同士だから、恥ずかしがるべきではないけど、少尉の肌はきめ細かく、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる。滑らかで真白で艶めかしい。

 何だか目にしてはいけないものを見たような気にさせる。

 身体は少女なのにポーズは少年のようで、ギャップにドキドキする。


 見つめていると、また、少尉と目が合った。

 フッと笑った顔が、私より歳下で小さいにも関わらず、私よりも遥かに大人な気がして、いたたまれなく、私から目を逸らしてしまった。

 失礼しますと声を掛けて、武具を急いで取り出すとバスを出た。

 何あれ…?

 先ほどの少尉の身姿を思い浮かべる。

 顔が上気して赤くなるのが分かる。

 少女なのに、とても色っぽかった。


 …


 いけません…いけません。

 私ったら何を考えているのかしら。


 皆んなが居る場所に戻り、少し回復したアントワネットに、一緒に取ってきた武具を手渡す。


 「…どうしたの?ダルジャン、顔赤いよ。」

 不思議そうにアントワネットが聞いてくる。


 「…何でもありません。」と答えておく。

 だって私にも、よく分かりませんから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ