ダルジャン・ブルーの追憶(後編)
勝負です。
フフフッ…。
これは、テンペストとの体力勝負。
仕切り直しであるから、今までの私は無し。
ノーカンです。
勝負であるから、チームプレーもありですね。
休憩が無ければ、作るまで。
私は、右側から走り登り、右例の人に一列縦隊になり先頭から休憩して最後尾に着くよう話しを持ちかけた。
最初は、戸惑っていた人もいたけど、自然と前に倣って休憩するようになった。最後尾でキツそうな人には後ろから背中を押してみた。
フォーチュン曹長は、見た感じ一番平気そうだったけど、「もう駄目だー。僕はブルーでいいよ。アイラブブルー。」とか言って、戦線離脱する気満々で列から遅れだしたので、後ろに回りこんで、背中をどつきました。
許しません。全員で合格するのです。
振り向くフォーチュン曹長に、たかだか17歳位の女の子に負けて悔しくないのですかと、高速手話で話したら、僕全然悔しく無いからと、高速手話で返して来たので、この人どんだけ多才なのかと吃驚しました。
仕方なく、握り拳を見せると、持ち直したので、きっとフォーチュンさんは余裕ありと見ました。
心配なのは、アントワネットとレイ・キームン曹長、クール・アッサム曹長、ウバ・セイロン曹長の4人です。
ショコラ様とルフナ曹長は、なんだか平気なような気がします。勘ですけど。
私は、もう大丈夫。騎士ですから。
チームの全体を俯瞰して見る。
こうして見始めて、レッドの御三方が、列の全体を見ていることに、初めて気がつきました。
ああ、なんて事でしょう。
最初の走り始めた私では、自分のことばかりで、こんな事、気がつきもしませんでした。
成長している…私は。
これは、踏み込んで初めて解る境地。
ショコラ様とルフナ曹長も、同様の印象を受けました…この二人は、今の私と同じ見方をしていると。
フォーチュン曹長は、あの方は…よく分かりません。
一番危ないのはアントワネットです。
明らかに無理がたたっている感じです。
だけど、気力と根性と誇りと怒りなど、ありとあらゆる感情を結集すれば、二周までは持つ。そんな印象でした。
もし、三周目に差し掛かったら、私がアントワネットを抱えよう。
そう覚悟しました。大丈夫。私は騎士だから。
その時が来ました。
アールグレイ少尉は、当然の様に折り返して、三周目に差し掛かる。
当然でしょうね。フッ、何せドラゴン級。
しかも、彼女の足取りが、段々と軽くなっているような気がします。怖るべし。
その時、彼女の隣りを走っていた、エトワール少尉が声を上げました。終了の提案をしている?!
キョトンとして立ち止まったアールグレイ少尉。
アールグレイ少尉は、私達を見てしばらく考えていました。
少尉、私は、まだ大丈夫ですよ。
来るなら来なさい。
私は、まだ戦える。騎士ですからね。
私は、少尉を見つめる。
けど、アールグレイ少尉は、終了宣言を出しました。
え?終わり…本当に…終わり?
私は、それを理解すると、途端に腰が砕けるように座り込んでしまいました。
…という事は、全員合格。
良かった。嬉しい…。