模擬戦(残)
華麗で豪華で豪快。
迷いが無く、思い切りが良い。
正々堂々と不意打ちで大斧を真上から、大上段で振り落とす。
これ当たったら、真っ二つのアールグレイになっちゃいますね。あー大変大変。
マリー・アントワネット曹長は、外れたのに不敵に笑う。
「やりますわね、あなた、フフフッ…。」
二人と一旦距離を置く。
アッサム曹長の蹴りを受けた左腕が、まだ痺れている。
途端に、高笑いしながらマリー曹長の鞭が飛んでくる。
軌道が読めないなぁ。
身体を丸めるようにアッサム曹長が突っ込んで来る。
フォーチュン曹長の呪いが、僕に降り掛かる。
前衛、中衛、後衛、揃い踏みの攻撃、連携の妙。
ははは、凄い、凄い。
はははは
アールグレイ少尉の顔が無表情になった。
はは…つまらない。
それが、あなた達の覚悟?
今までの、あなた達から、一歩も踏み出さないで、僕に勝てるとでも、本気で思っているの?
なんて、つまらない、時間の無駄。
僕は、あなた達の本気が見たかっただけなのに。
心が沈む。
落胆した。あー落胆。落胆。
いったい、あなた達はリスクも無しに、何を為すのか。
少なくとも、前の子らは、足掻いていた。
自分の限界を、越えようとする気概を感じた。
小さくまとまって、小山の大将である、あなた達に問いたい。
勇気とは何か?真剣とは?真実を知りたくないのか?
遥かな先には何があるのか?
そして、あなた達に冒険者を名乗る資格はあるのか?
僕は、先へ、行くぞ。
呪いは、爽やかなシャワーの時雨
鞭は、そよ風のように優しく
突進は、子犬が戯れるかの如く
全て何ほどの事も無し
詩を口ずさみ、ただ真っ直ぐに歩く。
軸をブラさずに、ひたすら真っ直ぐ歩く事だけに集中する。
途中で、アッサム曹長を跳ねる。吹っ飛ぶ。
アントワネット曹長にビンタをかます。吹っ飛ぶ。
フォーチュン曹長が足に引っ掛かる。吹っ飛ぶ。
吹っ飛んだ先で、もう、誰も動くものはいない。
そして、誰も居なくなった。