模擬戦(破)
僕は、人差し指を、ショコラちゃんの額に突き出した。
ショコラちゃんは、当然避ける。
だが僕の人差し指は、小回りで追尾する。
まるで、僕の身体は無く、人差し指だけが存在して、自在に動いてるかのようだ。
避けても退がっでも、追尾は続く。
最後は、後ろに倒れたショコラちゃんの額に着ける際に、デコピンに切り変える。
ショコラちゃんの頭が勢いよく飛び、後方に倒れて動かなくなった。
多分気絶したのだろう。
「次。」
声を掛けた同時に、女騎士が突き掛かって来た。
ジャルダン・ブルー曹長。
美しい、迷いの無い渾身の突きだ。
だが、火手の手甲で弾く。
僕は、今日、武器対策用に手に小手当を付けてきた。
掌を構え、制空圏を形作る。自分の周りの陣地からは武器を入らせない。全て手甲で弾くのだ。
火手に防御専念技は無い。
あるとしたら、全て攻守一体技である。
つまり、防御が攻撃の基点になっている。
僕は、左手の甲で突いて来たランスを弾くと同時に一歩踏み出し、右手の掌をジャルダンの右胸部分に突き出した。
カウンター気味にジャルダン曹長が吹っ飛ぶ。
おそらくジャルダン曹長の胸甲は、以後歪んで使い物にならないはずだ。
茂みに突っ込み、そのまま動かない。
気絶したようだ。
次と言おうとしたら、後ろからルフナ曹長が体当たりで突っ込んで来た。
流石、ルフナ曹長。良い判断です。
振り返りながら、スマッシュが自動発動。
初見では、まず避けられないスマッシュをルフナ曹長は、無理矢理態勢を崩し、避けた。
凄い、僕の自動パンチが避けられるなんて初めて。
ドキドキする。
だけど、このパンチは起点に過ぎない。
伸ばした右腕は防御になると同時に、ニ撃目の準備完了である。右手を手刀にして、振り下ろす。
これは、全身の体重を乗せての振り下ろしで、大抵の物は真っ二つになる。
初撃のパンチが、トルネードならば、ニ撃目は、ギロチンと呼んでいる。自動コンボなので考えずに身体が動いていく。驚いたことに、これも彼は避けた。
まあ、避けなければ、真っ二つになっただけだけど。
でも、僕はルフナ曹長ならば避けてくれると信じていた。
本当だよ。
ルフナ曹長、あなたには、そろそろ、僕を脅かすような攻撃を期待して良いのかな。
ギロチンは、この後、相手の出方に寄って動きが異なる。
さあ、見せて。
ルフナ・セイロン、あなたの覚悟を。
さあ、ここから、どう動くの?
ドキドキです。
だが、ルフナ曹長は、避けた状態なまま、その場に崩れ落ちた。…え?
顔を、よく見ると、まったくの虚脱状態。白眼になり身体は力が全く入っていない。
あ、れれ…。
僕の中で、意識が切り替わる。
こ、これは、全力を出し切って精も根も尽き果てた状態と見ました。
もう、こんなになるまで、頑張って…。
ルフナ、あなたの全力を見してもらった。僕、概ね、満足だよ。
流石、ルフナ曹長です。
だから、今は、僕、君に結果を求め無いよ。
早く、僕に追いついて来て。
優しい気持ちで、ルフナ曹長の頭を抱えようとする。
虚脱状態で頭が地面に当たったら、危ないからね。
その時、ルフナ曹長の左手が僕の右胸に伸びた。
僕の意識の外からの予想外の突きだ。
やられた。…これは、当たる。
と、思ったら、曹長の左手は、僕の胸まで来ると、…を掴んで揉んだ。
アッ
胸から妙な感覚が登ってくる。
…恥ずかしい。
多分僕の顔は赤くなっている。
だって初めてだもの。
まさか、わざと?思わず頭を抱えたまま、ルフナ曹長の顔を見る。
意識は無い。白眼のままだ。
無意識なの?
もう。意識を無くしたまま、最後に一撃を僕に伸ばしたとこまでは、お見事だったのに。
僕は、溜め息をついたまま、こんな状態でも、尚も揉もうと動く曹長の左手を胸から外した。
最後の最後は、格好つかなかったけど。
ある意味曹長らしい。
嫌いには慣れないよ。だって友達だもの。
ルフナ曹長の覚悟は見してもらった。
抱えて、木陰に身体を持って行き、慎重に横たえる。
エトワールと中尉が、ショコラちゃんとダルジャン曹長を介抱してる姿が見えた。
気絶している3人は、及第点です。
ルフナ曹長に至っては、なんて言うか、想定外の行動まで取っている。あれ、合格なのかな?…分からない。恥ずかしい。
さあ、そろそろ良いだろう。
僕は、充分待ったはずだ。
僕は、振り返り、座っていた者どもを睥睨す。
さあ、見してくれ。君達が、偽物なのか、本物のブルーなのかを?
言葉は、必要ない。
行動を見してくれ。