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アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
133/616

模擬戦(破)

 僕は、人差し指を、ショコラちゃんの額に突き出した。


 ショコラちゃんは、当然避ける。

 だが僕の人差し指は、小回りで追尾する。

 まるで、僕の身体は無く、人差し指だけが存在して、自在に動いてるかのようだ。

 避けても退がっでも、追尾は続く。

 最後は、後ろに倒れたショコラちゃんの額に着ける際に、デコピンに切り変える。

 ショコラちゃんの頭が勢いよく飛び、後方に倒れて動かなくなった。

 多分気絶したのだろう。


 「次。」

 声を掛けた同時に、女騎士が突き掛かって来た。

 ジャルダン・ブルー曹長。

 美しい、迷いの無い渾身の突きだ。

 だが、火手の手甲で弾く。

 僕は、今日、武器対策用に手に小手当を付けてきた。

 掌を構え、制空圏を形作る。自分の周りの陣地からは武器を入らせない。全て手甲で弾くのだ。


 火手に防御専念技は無い。

 あるとしたら、全て攻守一体技である。

 つまり、防御が攻撃の基点になっている。

 僕は、左手の甲で突いて来たランスを弾くと同時に一歩踏み出し、右手の掌をジャルダンの右胸部分に突き出した。

 カウンター気味にジャルダン曹長が吹っ飛ぶ。

 おそらくジャルダン曹長の胸甲は、以後歪んで使い物にならないはずだ。

 茂みに突っ込み、そのまま動かない。

 気絶したようだ。


 次と言おうとしたら、後ろからルフナ曹長が体当たりで突っ込んで来た。 

 流石、ルフナ曹長。良い判断です。

 振り返りながら、スマッシュが自動発動。

 初見では、まず避けられないスマッシュをルフナ曹長は、無理矢理態勢を崩し、避けた。


 凄い、僕の自動パンチが避けられるなんて初めて。

 ドキドキする。


 だけど、このパンチは起点に過ぎない。

 伸ばした右腕は防御になると同時に、ニ撃目の準備完了である。右手を手刀にして、振り下ろす。

 これは、全身の体重を乗せての振り下ろしで、大抵の物は真っ二つになる。


 初撃のパンチが、トルネードならば、ニ撃目は、ギロチンと呼んでいる。自動コンボなので考えずに身体が動いていく。驚いたことに、これも彼は避けた。

 まあ、避けなければ、真っ二つになっただけだけど。

 でも、僕はルフナ曹長ならば避けてくれると信じていた。


 本当だよ。

 ルフナ曹長、あなたには、そろそろ、僕を脅かすような攻撃を期待して良いのかな。

 ギロチンは、この後、相手の出方に寄って動きが異なる。


 さあ、見せて。

 ルフナ・セイロン、あなたの覚悟を。

 さあ、ここから、どう動くの?

 ドキドキです。


 だが、ルフナ曹長は、避けた状態なまま、その場に崩れ落ちた。…え?

 顔を、よく見ると、まったくの虚脱状態。白眼になり身体は力が全く入っていない。

 あ、れれ…。


 僕の中で、意識が切り替わる。

 こ、これは、全力を出し切って精も根も尽き果てた状態と見ました。


 もう、こんなになるまで、頑張って…。

 ルフナ、あなたの全力を見してもらった。僕、概ね、満足だよ。

 流石、ルフナ曹長です。

 だから、今は、僕、君に結果を求め無いよ。

 早く、僕に追いついて来て。


 優しい気持ちで、ルフナ曹長の頭を抱えようとする。

 虚脱状態で頭が地面に当たったら、危ないからね。

 その時、ルフナ曹長の左手が僕の右胸に伸びた。

 僕の意識の外からの予想外の突きだ。


 やられた。…これは、当たる。


 と、思ったら、曹長の左手は、僕の胸まで来ると、…を掴んで揉んだ。

 アッ

 胸から妙な感覚が登ってくる。

 …恥ずかしい。


 多分僕の顔は赤くなっている。

 だって初めてだもの。


 まさか、わざと?思わず頭を抱えたまま、ルフナ曹長の顔を見る。


 意識は無い。白眼のままだ。

 無意識なの?


 もう。意識を無くしたまま、最後に一撃を僕に伸ばしたとこまでは、お見事だったのに。

 僕は、溜め息をついたまま、こんな状態でも、尚も揉もうと動く曹長の左手を胸から外した。


 最後の最後は、格好つかなかったけど。

 ある意味曹長らしい。

 嫌いには慣れないよ。だって友達だもの。


 ルフナ曹長の覚悟は見してもらった。

 抱えて、木陰に身体を持って行き、慎重に横たえる。


 エトワールと中尉が、ショコラちゃんとダルジャン曹長を介抱してる姿が見えた。



 気絶している3人は、及第点です。

 ルフナ曹長に至っては、なんて言うか、想定外の行動まで取っている。あれ、合格なのかな?…分からない。恥ずかしい。





 さあ、そろそろ良いだろう。

 僕は、充分待ったはずだ。


 僕は、振り返り、座っていた者どもを睥睨す。

 さあ、見してくれ。君達が、偽物なのか、本物のブルーなのかを?

 言葉は、必要ない。

 行動を見してくれ。


 

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