模擬戦(序)
汗処理をして、水分補給。
サッパリとした気分で、バスの外に出る。
気分爽快。
だけど、そんな気分は雲散霧消した。
あららら、皆んな、どうしたの?
皆んなは、まだ同じ場所で座り込んでいた。
中には五体投地してる者もいる。
お祈りの時間かしらん。
軽い運動した後なので、僕の身体中をエナジーがグルグル巡っている感覚で、僕は今絶好調です。
身体中が覚醒してる感じですから…長く長く、息を吐き出す。
今なら、誰にも負ける気がしないけどね。
僕は、地面を踏み締めて、ブルー達の方へ歩いて行く。
歩きながら、会ってから今までのブルー達の態度を思い浮かべる。
集合を掛けても、歩いて集まってくる。
15分と指示しても、未だに座り込んだまま。
僕、頭から蒸気が出そうです。
ブルー達の前に立つ。
「1番手は誰?」
「キュウィ、運命ーー!」
奇妙な掛け声をあげながら最初に立ち上がったのはショコラちゃんだ。
立ち上がった脚がプルプル震えている。
涙目で天を見上げている。
うんうん…分かった。
ショコラちゃんに対し、僕は一礼して、構えた。
覚悟ある者に対する礼儀である。
掛け声に気合いを込める。
森林中に僕の声が響き渡り、数多の鳥が木立ちから飛び立ち逃げていく。
ショコラちゃんが、僕の声にハッとして、構える。
僕の声は警告音だ。意味するところは…
仮にもギルドのブルーが、いつまでも幼子のように座り込んでいるとは何事であるか。
そんな情けない姿で、都市民を守れると本気で思っているのか。巫山戯ているのか。
一言で表すと、一回死んでみる?
僕は、怒っていない。
僕だって鈍感では無い。
軽運動の最後の辺りでは、もしかして皆んなキツイのかしら…と薄っすらとは感付いていた。
僕が、今、問うているのは、現在の実力では無い。
そんなものは、後から幾らでも付いてくる。
僕が、問うているのは、もっと大切なものだ。
今の時点で、ギリギリ及第点なのは、戦う姿勢を見せたショコラちゃんと七転八倒しながら起き上がろうと足掻いている女騎士、両手ブラリながら死んだような眼で立ち上がったルフナ曹長くらいだ。
他の者は、戦死だ。
僕は、座り込んでいる者は、踏み潰す。
死にたくなかったら、足掻いて動け、運命と戦え、逃げても良いが自分に負けるな。
僕は、お前らの姿勢を問う。
泣いても、文句を言っても、逃げても良い。
だが、覚悟を見せろ。
ギルドのブルーならば、最低限、武蔵坊弁慶なみの最後の覚悟を僕に見せろ。
それが、大人ってもんだろう。
それこそが、社会を支える大人だ。
人は嘘を吐く。だから僕は言葉を信用しない。
言葉だけを駆使して他者を非難している者を、この世界でもたまに見掛けるが、あいつらは偽物だと思う。
本物の覚悟を持っていない偽物の大人だ。霞のようなもので見るにも値しない幻のようなものだ。
僕が信用するのは、行動である。
社会を支え、解決するに奔走する行動です。
どんな思惑があるにせよ、僕は、その人の成した行動を信用する。
さあ、見せてくれ、将来のレッド達よ。
君達が、大人になる覚悟を。