ディープ・ブルー(後編)
こうなれば、残りの3人も紹介しなければ。
最初は、ジャルダン・ブルー・ダーマン・エペ曹長。
おお、キリッとした眼差し、長めの腰まで伸ばした編み込んだ金髪。引き締まった身体。
騎士です。まるで女騎士を体現したような女性です。
御歳21歳。スラッとした体躯が素晴らしい。
絶対前衛の剣かランスを使用してそうです。
甲冑は、現在、部分甲冑を着けています。
凛々しいお姉さまって感じです。
あっ、見てたら、親指を立てて、イイネ!されました。
次は、マリー・アントワネット・ディスティルリー・エペ曹長。
派手です。まるでお姫様のようです。
ジャルダン曹長と仲が良いみたい。ブルーの制服が、これ程似合わない人も、珍しい。
ゴージャスな金髪を腰まで流している。
何故に彼女が、ここに居るのか、僕には分からない。
ブルーなんですよね?と聞いてみたくなる。
御歳21歳。後衛の魔法系かなぁ?
あっ、目が合ったら、ウインクされました。
少なくとも、悪い人では無いみたいです。
最後、ルフナ・セイロン曹長。30歳。
ん?…なんかどっかで聞いたような名前。
こちらから、顔を背けてます。
長身の引き締まった体躯。黒髪短髪。
ブルーの制服が、とてもお似合いです。格好良いです。
僕も、男だったら、こんな感じに生まれ変わりたかった。
テクテクと歩いて、顔を両手で、ガシッと掴んで前に回す。
「うぉ、痛てっ…て、何すんだ!」
それは、こっちの台詞です。
久しぶりに会ったのに、その態度はなんですか?
両手で顔を掴んだまま、無言で、ジッと顔を見つめる。
「あー、何だか、照れ臭くてよ、…悪かった。」
ならば、許します。仲間だから。友達だものね。
ニッコリ笑って、手を離す。
「おおー、いや、ははは、まあ、来たかいがあったぜ。」
ルフナ曹長は、照れくさそうにして、にこやかに笑い返した。
「それにしても、いったいどう言う事なんでしょう?」
僕は、ルフナ曹長に問うた。
「いやいや、それは、こっちの台詞にしたい。下士官講習が早めに繰り上がってよー。やっと終わったと思ったら、少尉の一大事だから至急帰って来いと言われて、急いでギルドに着いたら荷物持たされて、あのバスに乗れと、ダージリン嬢に押し込まれてよー、詳しくは少尉に聞けと言われて、現在に至るんだが、…教えていただけますか?少尉殿。」
うん…端折り過ぎだよ。ダージリンさん。
応援を派遣してくれたのかしら?僕にも分からない。
でも、まあ、ありがたい。
ルフナ曹長は、往年の僕より、遥かに歳下だけど、信頼しがいのある男だよね。魅力があるっていうかさ。
僕が、女だったら惚れちゃうね。って、今、僕、女じゃん。
嘘、嘘、違う、…まあ、それぐらい信頼に足る人物という事ですから。誤解しないように。
僕は、皆に一旦休憩を指示すると、ルフナ曹長を広場の端に連れて行って、全部説明した。
「あー、すると、何ですかい、わっしが合格すると、少尉になると?」
曹長、言葉使いが変だよ。
信じられないような顔だけど、本当ですから。
「で、俺の任務は、影の試験官の炙り出しですかい?」
いやいや、曹長は、自分の目的に沿った目標を達成して下さい。と言ってみた。
だって、あなたがいるだけで、僕は心強いですから。
「俺の目的、目標ですか…。」
そう言うと、曹長は、黙って僕の顔をジッと見つめた。
ん?何かな…。
僕も、曹長を見上げて、見つめ返す。
…
「…コホン。」
ハッ、声をした方に向くと、ショコラちゃんがいた。
「アールグレイ少尉殿、ルフナ曹長、大変恐縮ですが、お互い見つめ合ってから、大分時間が経っております。少尉殿が戻らぬと話しが進まないので、失礼ながらお声を掛け差していただきました。」
エッ、そんなに経ってた?
ショコラちゃんが、うんと頷いている。
時計を見る…本当だ。15分以上経っている。
…ビックリだ。
うーむ、摩訶不思議よ。
きっと山の陽気のせいですね。
僕は、少し焦りながら皆んなの前に戻って指示を出す。
「では、模擬試合の前に、ウォーミングアップで軽く走りましょう。重たい物は置いて来て、軽装スタイルで、5分後に再集合お願いします。」
傍らで、エトワールが、あの曹長とどんな関係なの?と、しつこく聞いて来たけど、無視です。
だって、僕だって良く分かりませんから。
でも、友達です。友達ですから。