三者会談
僕の脳内会議終了。
次は、アリ中尉とエトワールに、僕の基本方針を説明して、協力を求めなくてはいけないと思うのだ。
自分の想いを晒すのは、恥ずかしいけど、骨子となる部分は共有しといた方が、今後の方針がブレないし、何より、協力を依頼するのだから、伝わるかは別として、話すのが、礼儀であると思う。理屈では無いのだ。
二人に対し、僕の想いを説明していく。
もちろん前世の話しは抜いておく。
うんうん…何だか僕も、話してるうちに高揚して来ちゃったみたい。
周りは、春の陽気で、暖かい。
何だか、いつもより、お喋りしてるかも。
ちょっと、楽しい。
あれ?…何だか二人が微妙な顔付きをして、僕を見ている。
どうかした?
「まー、私はアルが、良ければそれで良いけど。任務に支障無ければ。ついでに私と一緒に会食してくれれば良いわよ。」
え、エトワールたら、未だに、そんな事拘っていたの?
「そんなに僕と食事したいのなら、別に構わないけど。エトワールの奢りね。」
「そう、またダメかぁ…。 え?え?え!えーー!あれ、今、良いって言った…?」
うん、言ったけど。
「まあ、嫌なら別に…。」
「奢る。奢ります。奢るから。や、や約束よ。絶対よ。もし破ったら毎日枕元に立つわよ。やった。やったー。やったわー!きゃー。これで私達、友達ね。私達友達よね?」
エトワールは、僕の両手を握り締めて、上下にブンブン降り始めた。
あまりの迫力ある問いの勢いに、思わず頷く。
え、いや、それ、そんなに喜ぶこと?
まあ、今のエトワールは素直で、歳相応な少女みたいで、そんなに嫌いでもないけど。
僕も、今日は機嫌が良い。
前世からの念願の、皆んなで山登りだからね。
何だか素直な気持ちで、そのまま今日のエトワールの印象を本人に言ってしまったよ。
「えー、それじゃ、今までの私は嫌いって言ってるもんじゃない。で、でも、い、い、今の私は嫌いじゃないんでしょう?そうでしょう?…逆に、実は、す、………きとか。」
そう言うと、エトワールは赤くなって俯いた。
最後の方は、だんだん声が小さくなって、ゴニョゴニョ言ってて聞こえなかった。
「普通。」
僕は、質問にキッパリと答えた。
勢いで頷いてしまったけど、普通です。今のエトワールは嫌味な所が鳴りを潜めていて、総じて、普通です。
あの子達が、合格する為に、協力してくれるのなら会食くらい付き合います。
「…普通かぁ。でも一歩前進かしら、フフッ。」
エトワールは、嬉しそうに笑った。
あれ?今日のエトワールは、マトモだぁ。
そうだよね。人間は成長するし、変わることができる生き物なのだ。僕も先入観が過ぎたかな…反省。
「あー、君達がね、そうして会話してると、まるで歳相応の少女達みたいだ。」
今まで黙っていたロッポ中尉の感想に、僕とエトワールは、中尉に注目。
それじゃ、僕が、普段は、まるでエトワールみたいに歳相応じゃないように聞こえるじゃない…ちょっと心外です。
エトワールも不満そうな顔付きになっている。
僕らの心情を察したか、中尉は言い訳を述べ始めた。
「いやいや、君らが異常と言ってるわけじゃないよ。ただ普段の君らは、優秀過ぎな言動に終始しがちで、そんなふうに日常会話してると意外な心持ちがしてな。」
なるほど、僕がエトワールに持った印象を、中尉も持った訳ですか。なるほどなるほど…て、僕も一括りですか?
遺憾です。
誠に遺憾ですよ。中尉。
「アルと、一緒、…フフッ。」
エトワールは、何故か嬉しそうだ。
違いますから。一緒じゃないですよ。
天才と一緒にされても困ります。
僕は、普通ですから。