表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
128/615

三者会談

 僕の脳内会議終了。


 次は、アリ中尉とエトワールに、僕の基本方針を説明して、協力を求めなくてはいけないと思うのだ。

 自分の想いを晒すのは、恥ずかしいけど、骨子となる部分は共有しといた方が、今後の方針がブレないし、何より、協力を依頼するのだから、伝わるかは別として、話すのが、礼儀であると思う。理屈では無いのだ。


 二人に対し、僕の想いを説明していく。

 もちろん前世の話しは抜いておく。

 うんうん…何だか僕も、話してるうちに高揚して来ちゃったみたい。

 周りは、春の陽気で、暖かい。

 何だか、いつもより、お喋りしてるかも。

 ちょっと、楽しい。

 あれ?…何だか二人が微妙な顔付きをして、僕を見ている。

 どうかした?


 「まー、私はアルが、良ければそれで良いけど。任務に支障無ければ。ついでに私と一緒に会食してくれれば良いわよ。」

 え、エトワールたら、未だに、そんな事拘っていたの?


 「そんなに僕と食事したいのなら、別に構わないけど。エトワールの奢りね。」

 「そう、またダメかぁ…。 え?え?え!えーー!あれ、今、良いって言った…?」

 うん、言ったけど。

 「まあ、嫌なら別に…。」

 「奢る。奢ります。奢るから。や、や約束よ。絶対よ。もし破ったら毎日枕元に立つわよ。やった。やったー。やったわー!きゃー。これで私達、友達ね。私達友達よね?」

 エトワールは、僕の両手を握り締めて、上下にブンブン降り始めた。

 あまりの迫力ある問いの勢いに、思わず頷く。


 え、いや、それ、そんなに喜ぶこと?

 まあ、今のエトワールは素直で、歳相応な少女みたいで、そんなに嫌いでもないけど。

 僕も、今日は機嫌が良い。

 前世からの念願の、皆んなで山登りだからね。

 何だか素直な気持ちで、そのまま今日のエトワールの印象を本人に言ってしまったよ。


 「えー、それじゃ、今までの私は嫌いって言ってるもんじゃない。で、でも、い、い、今の私は嫌いじゃないんでしょう?そうでしょう?…逆に、実は、す、………きとか。」

 そう言うと、エトワールは赤くなって俯いた。

 最後の方は、だんだん声が小さくなって、ゴニョゴニョ言ってて聞こえなかった。

 「普通。」

僕は、質問にキッパリと答えた。

 勢いで頷いてしまったけど、普通です。今のエトワールは嫌味な所が鳴りを潜めていて、総じて、普通です。

 あの子達が、合格する為に、協力してくれるのなら会食くらい付き合います。

 

 「…普通かぁ。でも一歩前進かしら、フフッ。」

 エトワールは、嬉しそうに笑った。

 あれ?今日のエトワールは、マトモだぁ。

 そうだよね。人間は成長するし、変わることができる生き物なのだ。僕も先入観が過ぎたかな…反省。



 「あー、君達がね、そうして会話してると、まるで歳相応の少女達みたいだ。」

 今まで黙っていたロッポ中尉の感想に、僕とエトワールは、中尉に注目。

 それじゃ、僕が、普段は、まるでエトワールみたいに歳相応じゃないように聞こえるじゃない…ちょっと心外です。

 エトワールも不満そうな顔付きになっている。


 僕らの心情を察したか、中尉は言い訳を述べ始めた。

 「いやいや、君らが異常と言ってるわけじゃないよ。ただ普段の君らは、優秀過ぎな言動に終始しがちで、そんなふうに日常会話してると意外な心持ちがしてな。」

 

 なるほど、僕がエトワールに持った印象を、中尉も持った訳ですか。なるほどなるほど…て、僕も一括りですか?

 遺憾です。

 誠に遺憾ですよ。中尉。

 

 「アルと、一緒、…フフッ。」

 エトワールは、何故か嬉しそうだ。


 違いますから。一緒じゃないですよ。

 天才と一緒にされても困ります。

 僕は、普通ですから。

 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ