表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
天竺行路
127/615

鬼軍曹

 まさか、この僕が教官紛いの事をするとは。

 発起人は、僕だけど、プランは無い。

 あるわけが無い。

 だって、今思いついたんだもの。


 だけど、感慨一入だなぁ。

 今までは、自分を鍛えることだけ考えて来た。

 だって、自分が変えることが出来るのは、自分だけと言う常識があるから。この絶対の法則は他人にも当然適用される。


 結局、本人のやる気次第だよね。

 他人が提供できるのは、切っ掛けを作ってあげる事ぐらいだよ。

 

 そっかぁ…切っ掛けかぁ。


 前世の経験でも、教官は無い。

 人を教え導くのは、ひよどりを、こっちだよと手を叩きながら、誘導するに似てる。

 ピヨピヨと鳴きながら、付いてくる子は良いが、あさっての方向へ勝手に行く子がいる。…必ずいる。


 僕が、幾ら手を叩こうが関係無しに我が道を行く子が。

 何だろうね…実に多様で、面白いよね。


 …で、結局、僕が出来る事は、見守ることしか出来ません。

 だって言う事、聞かないもの。


 そんな子は、ある日、フッと居なくなる。自然淘汰されたのだろう。

 或いは、此処とは違う世間の片隅で生き残っているかもしれない。

 そうなると、もう神様に祈るしかない。

 あの子が、生き残る道に気付きますようにと。


 自己の命運を自分で決める事ができるのは、生まれは如何ともし難く、頭の良さでも無く、実力でも、腕力でも、努力でも、システムでも無く、小さな気付きと実行する意志だとおもう。

 そこに繋がるのは、観察と疑問と探究心で、更に、それに繋がる最初の一歩とは、心のベクトル。

 好奇心、執着心とでも言い換えればよいのか。


 自分で決めて、自分で実行する。

 至る理屈とか、勝敗とか、成功失敗さえ、どうでもよい。

 まあ、死んだらダメだけど。


 自分で決めて、自分で実行する…そこに生きてる意味がある。

 うん…大事な事だから2度言いました。

 一つしか無い、かけがえない自分の人生を、強制されて、やらされるなんて、真っ平御免だよね?


 だから、僕がする事は、教えるのでは無い。

 切っ掛けを作ってやるだけだ。

 舵取りは本人にさせる。



 

 何となく基本方針は決まった。


 僕は、教えない。何かしら切っ掛けを作ってやるだけ。

 そう思うと、気分が楽になった。


 こいつらに、無数の疑問を投げかけてやるぞ。自分で解くが良いわ。わははは…、なんか楽しくなってきた。


 では、具体的に、この子達に切っ掛けを与え、誘導するのに、何か材料はないだろうか?

 自己の記憶にsearchだ。目を瞑り、記憶を精査する。

 …

 前世で見た、ある映画がヒットした。

 鬼軍曹が士官候補生をしごいていく映画だ。

 確か、タイトルは、愛とか青春とか言ってたような気がするよ。


 うんうん…青春だよね、そうだよね。

 世間は理不尽で、社会は不公平で、大人は何も分かってくれないもんなんだ。

 僕が与える切っ掛けは、試練だよ。薪の上に三年寝起きするような試練だよ。

 思考錯誤する未熟な精神ならではの心の揺らぎ…仲間との愛と友情が試練を乗り越えていく糧になる。

 それこそが青春。


 僕自身は、今まで、やるべき事を淡々とこなすだけであったので、青春の煌めきとは無縁であった。

 だから、僕も、この子達を通して青春を追体験するのだ。

 前世の僕は、若い頃から何だか老成していて冷めた精神状態だったので、青春を体験した記憶が無い。

 …前世の僕の馬鹿。


 僕は、前世の僕とは明らかに違うけど、記憶がある以上、多分に影響を受けてしまったと思う。

 しかも、大人の記憶があるせいで、同年代の子達が、皆子供に見えてしまう。

 こんな、精神状態で、周りの男の子と、色恋できるわけがない。

 これは、前世記憶の弊害ですよ。

 こんなデメリットがあるとはね。


 しかしながら…これはチャンスです。

 女の子達の直近に居て、愛と青春を擬似体験するのだ。


 山は、気分を開放的にさせるのです。

 きっと上手く行く事でしょう。

 だけど、きょうびの子供達は、か弱いから、試練は優しく軽めにしといた方がいいのかも。


 皆さん、試練(微小)な感じで、よろしいでしょうか?


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ