チョコっとショコラ(中編)
私は、ハクバ山探索行の依頼を受けました。
ダージリンのお姉様から勧められた事も参考にし、最終的に私自身が決めました。
この案件は、きっと私の人生の岐路になる。
そう確信したからです。
これまでを、家を出る前、散々苦悩してから今日までの過程を、振り返る。
…
ここまで、来た。
ここまで私は来たんだ…。
いろんな人に会って助けられた…でも、私は、ここまで一人で歩いてきたんだ。
この気持ちは、きっと今の私にしか分からない。
感高ぶって、涙が出そうになる。
まだだ、まだ泣いてはいけません。
これは試験なんです。合格しなければ道は開けません。
依頼を受けたのは、10人。
内訳は、レッドが3人、ブルーが7人、計10人の1個分隊でブルーは全員星三つです。
…となると、ライバルは6人。
ブルーの星三つに成り立ての私は、7人の中で実力は最下位。
もし、合格枠に人数制限があるとすれば、今のままでは私は落ちてしまうでしょう。
だとすれば、私が合格するには、先任のブルーを追い抜かなければならないのでしょうか。
どうすれば良いのか…考えてみる。
ブルーと、レッドの差について。
ブルーの星三つ…ここに至る道は厳しい…と簡単に言うことさえ、最下層から一段づつ登って来た我が身にしてみれば、憚りがあります。
青星三は、個の頂点に等しい。
どいつもこいつも化け物で一筋縄ではいかない猛者ばかり。
一般には、ブルーに勝負して万が一勝ったとしても、死ぬなどの多大なるダメージを負うので、普通、誰も戦いを挑まない程です。
もし勝負を挑む者が現れたら、そいつも化け物に違いありません。
次に、レッドの星一つ…貴族の子息が、士官学校を卒業すれば自動的になれます。
子供の頃からエリート教育を受け、更に地獄と言われる士官学校で磨かされる。当然頭も良いし、一通り何でもできる。
更にギルドの士官学校出のレッドは、工科、医科などの特殊科を除けば、指揮する下士官、兵隊より強く無ければ卒業は出来ないとされてます。
しかし、これは権力の介入もあるらしく、近年形骸化してるという専らの噂ですよ…ここだけの話しですが。
つまり、士官学校出のレッドは、総じて高性能の能力があるけども、強さは青星三と、さほど変わらないと言える。
次に、特殊事例としてのレッド…叩き上げの赤星…つまり青星から昇格した赤星。
多分、比率で言えば、赤星の1割にも満たないのでは。
この人達は、単純に強さだけで赤星をもぎ取りました。
ギルドが実力主義を採用してると公言してる以上、上げざるを得なかった人達なのです。
単純に強い。
他の士官学校出の赤星、叩き上げの青星が何人来ようが相手にならないでしょう。
私達が、今回受験するのは、後者のレッド枠ですね。
…
………無理だ。思わず肩を落とす。
私に、そんな強さは無いと断言できます。
合格は不可能、私を含め全員全滅。
ああ…儚い夢でしたわ。
…
…んん、ちょっと待ちましょう。
それでしたら最初から試験などしないでしょうに。
レッドの叩き上げの採用枠を広げる話しですよね。
ん…
考えましたけど、どれも仮定の話しに終始してしまうので、確証を得られません。
私、頭から、煙が出そうです。
ええい、女は度胸。ここは当たって砕けろの精神ですよ。
そう思いますよね。
とりあえず、今日は寝て英気を養います。
お休みなさい。