仮説と交渉と育成
僕の仮説をエトワールに話す。
「今回のハクバ山探索は、試験を兼ねている。君は、さっき訓練と言っていたけど。違うと僕は思う。書面上では訓練と称しているかも知れない。でも、これは事実上の試験だ。」
様子を見る。
エトワールの顔色は変わらない。
多分予想済みの発言なんだろう。
でも僕もエトワールの反応は予想済みです。
よって、話しを続ける。
「そう、これは試験です。ブルーのレッド昇任試験。そして、僕のレッドの承認試験。更に、中尉殿とエトワールの査定です。僕は後者が本命だと思ってます。前者は、その理由付け、材料、付け足し。ついで。」
中尉殿が、愕然とした顔をした。
エトワールの表情がピクリと動く。
まさか、自分達だけが蚊帳の外だと思っていたのか…この人達。
更に話し続ける。
「エトワール、一石二鳥は君の専売特許じゃないよ。頭の良い人は必ず多くの結果を望む。効率的だと思っているのかな。おそらく発案は君だよね?でも君の上は更に思惑を重ねたんじゃないかなぁ。優秀な人は、より優秀な人を真似るんだよ。どう?心当たりあるんじゃないかな二人とも?」
中尉殿の表情が愕然としたまま凍結している。
エトワールは、無表情のまま答えない。
でも答えないことが答えになっている。
今、彼女の脳細胞はフルに可能性を演算してるはずだ。
だが、その答えを僕は既に予想している。
僕の台詞の後半は、僕のハッタリである。
意趣返しとも言うかも。
でも当たらずとも遠からずだと思う。
反応から、ブルー達のレッド昇任試験であるのは確実だ。
うーん、彼らを受からせてあげたいなぁ。
とりあえず、僕の事は、どうでも良いので考えない。
だって、ブルーに降格しても全然困らないです。
いや、正直、ブルーの方が、好きな依頼を受けやすいぞ……うーん…メリット、デメリットを考える…保留です。
しばし、…ブルー達の事を考えた。
彼ら若者は未来への人類の資産とも言っても過言ではない。
何より幸せになってもらいたい。不幸になったら僕が悲しい。泣くのは嫌だ、良かったねと笑いたい。
何とか良い方向へ話しを持って行きたいものだ。
ある程度、僕の考えがまとまったので、2人への説得に移る。2人の眼を見て話す。
僕は、真剣だよ。何しろ10人の幸せが掛かっているから。
「少なくとも僕達は、ハクバ山探索成功の目標達成の為に協力できると思う。僕は、彼ら8人のブルー達を、この探索行でレッド並みの実力に急成長させる。当然、その実力をもって目標も達成する。彼らも当然合格する。上の思惑は無視する。どっちにしろ彼らを指導した僕達の評価は、高評価にならざるおう得ない。どう?」
僕ら3人は、互いに顔を見合わせた。
…無言で、握手を交わす。
契約成立だ。
僕が、言い出した事なので、率先して考えを述べる。
まず立案者が動かないと計画は成功しないからだ。
よく立案だけして、後は丸投げの人がいるけど、成功はしない。もし成功したとしたら引き継いだ実務者が超優秀だった場合だ。だが、その場合、栄誉は立案者が受けるので、組織的には更なる拡大した不幸の丸投げが、何人もの実務者を襲う。
だから、丸投げの計画は失敗した方が世の為人の為だと思う。
「探索しながらの育成計画を立てましょう。その為に、まず彼らの実力を今日一日で見たいです。模擬戦は僕がします。体力、戦闘力、魔法力を見ます。中尉には、探索に必要な知識、技能の有無を面接で確認してください。エトワールは実力を数値で記録化を。終了したらエトワールが作成した資料を元に育成計画を立てましょう。」
提案したら、二人共、快く了承してくれた。
もし、断ったら僕の役割を二人の内どっちかに振ろうと思ってたので、了承してくれて良かった。
「では、まず模擬戦から、中尉は映像記録を、エトワールは記録紙に記載を。後、何の実力を見たいか指示出しして。ブルー達には、僕が話すよ。」
うーん、何て話そうか。
でも、昇任試験については僕でも気づいたから、当然、当事者である彼らも、薄々は気づいているんじゃないかな。