色々
休憩地に着くまで、運転を交代して回す。
一人だけ妙に上手いブルーがいる。
20歳代で、リムジンに乗ったような快適さを醸し出す運転技能だ。
うーん、君、凄いよ。
僕、気持ち良さに、思わず寝てしまったから。
これは、決して僕がサボっているわけではない。彼の高度な運転技能の成せる技なのだ…きっと。
起きた時、エトワールが間近でガン見してたのは寿命が縮む思いがしたけど。それ、怖いから止めて欲しい。
仮に、この運転技能秀逸な彼を、よく見ると目立つ頭の色に因んで、ブルー君と心の中で呼んでおく。黒髪なのだが光りの加減でブルーに見えるのだ。ランちゃんと一緒だ。
もしかしたらブルー君はキームン系の血統なのかもしれない。
まだ名前と顔が一致しないので特徴で覚えよう。
運転補助は、先程エトワールに首と言われた金髪の子だ。
淡い金色なので、黄色に見える。イエロー君だ。
ん…やけに線が細くて小さいと思っていたら、短髪の女の子だ。
服のサイズが大きめで身体のラインを隠している。
ならば、イエローちゃんだ。
後の2人は、僕の真後ろに一人、最後尾に一人鎮座してます。何故僕の真後ろ?
一番後ろに居る人も、そんな後ろに居て、事案に即時対応できるのだろうか。
一番後方左側にいるのがゴールド、僕の真後ろにはレッドがいる。
ゴールドは、体力温存しているのか寝ている。
レッドからは視線を感じる。
昔から初対面の人にジロジロ見られるのは頻繁にあるので、今更だ。でも慣れる事はない。不躾な視線は好ましくないです。
普段は隠形の術を常時掛け始めてからは、この手の視線は減ったけど、マジマジと見たら、破られる程度の術だ。
隣と後ろから、見られているなぁ。
何かな?
振り向いて、レッド君を見ると驚いた顔をして視線を逸らした。
顔が、頭と一緒で赤くなっている。
こちらも観察してやるぞ。フィフティフィフティだ。
年齢は、僕より歳上か、同じ位かな…20歳位に見える。
見事に赤い短髪を無造作に伸ばしている。
顔は、ソバカスが散っている。顔の造作は悪くない。
特に眼を逸らしながらも、まだこちらをチラチラと見てくる。意志の強そうな眼だ。
ヤンチャ坊主が大人になり掛けたような印象だ。
身体は小造りながも鍛えているのが分かる…ふむふむ。
「…少尉殿、そんなにマジマジと見られると恥ずかしいのでですが。なんですか?」
ジロジロ見返してたら、キッとコチラを見て反論された。
君こそ何ですかとは何ですか?
うら若き乙女を、そんなにジロジロ見るなんて不躾ですよ。
もっとも彼と僕の精神的な歳の差は、人の一生分の開きがあるので、気分はお姉さんか母親か、下手すると祖母が孫を見るような気分だ。
もちろん、そんな事は言わない。
だから僕は、溜め息を付きながら、やれやれと言う表情をしてみる。
「こちらこそ、後ろから、そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいです。分からないと思ってるんですか?」
言葉に詰まるレッド君。
「初対面の女の子を、そんなに穴を開けるようにジロジロ見るようなものではありませんよ。気分の良いものではありませんからね。見たい時は、さり気なく見なさい、さり気なく。」
「…では、遠慮なく。」
僕の言葉に、レッド君は僕を見つめ返す。
いやいや、分かってないじゃん、全然君さり気なくないよ。
でも、根性はある。悪く無い。
前世の僕なら、押し黙るような状況だ。…僕、シャイだったからね。
「貴様ー!私に断りも無く、嫌らしい目でアルを観るとは何事かぁ。貴様、クビだ、クビ、今すぐに帰れ。むうっ…そんなに飢えて女を見たいなら私を観るが良いぞ。」
隣が色々とウルサイ。だが美術的鑑賞と言う観点ならば、確かにエトワールは美人だ。
「オリッサ少尉殿、自分にも好みがありまして、自分は美人よりも可愛い系が良いのです。残念ながらごめんなさい。」
エトワールに頭を下げるレッド君。
「何故私が振られている状況になるのか、違うぞ。クール・アッサム曹長。」
地団駄を踏むエトワール。
うーん、レッド君は、アッサム君だったか。
エトワールのあしらい方が上手い。流石若く見えても海千山千のブルーだ。
エトワールは、既に全員の名前を覚えたようだ。
そんなこんなで、休憩地に着いた。