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アールグレイの日常  作者: さくら
東方見聞録
105/615

新月

 ラプさんと奥様にお礼を言って、邸宅を後にする。

 あと、テライさん、ご馳走様でした。

 今度、ペンペン様と料理店にお邪魔しますから。



 急ぎ、可愛い子の後をつける。

 気分は、ストーカーだ。

 いささか背徳的な気分だけれども、仕方のないことだ。


 子供が大切にしている思いを曲げて欲しくない。

 [蜘蛛]のアジトを無理矢理聞き出す事はしたくない。

 それは子供に育ての親を売らせる行為だ。

 きっとテミ君は傷つく。だから…


 悪役は、大人がなるべきだ。

 ピーターパンのフック船長のように。

  

 「テンペスト様、私、なんだか悪い事してるような、ドキドキしてしまいます。」

 僕の後ろから、追てきてるファーちゃんがのたまう。

 振り返って見ると、ファーちゃんの表情がワクワクしてるかのように見えてしまう…あれれ?

 なんだか僕の思惑とはズレてるけど結果オーライで、いいのかな?良く分からない。


 テミ君には印を付けてみた。

 僕印です。

 瞼を閉じれば、暗闇にボゥッと光って位置が分かる優れものです。

 陽が落ちれば、辺りは暗闇だ。


 住宅街を離れて、閑散とした雑木林の中へ。


 そこは、原初の闇。

 入るのに一瞬躊躇する。

 

 前世でも、夜、もし山の中に一人でいれば、こんな気持ちになるかも知れない。

 想像してみて。


 何も見えない闇の中なのに、生き物の気配がする。


 樹々の間から夜空を見上げればグレイ。


 樹々の葉が、ガサつく音。


 遥か先に、闇の中を、ボゥッと光る印が…宙に舞うように移動していく。


 それを追う僕達。


 息遣いが聞こえる。

 自分の呼吸か、ファーちゃんの呼吸音が分からない。

 ふと、ファーちゃんが付いてきてるか心配になる。


 でも振り返らない。

 古今東西の慣わしで、振り返ってはならない。

 大抵の物語では、振り返って、碌な話しを聞かないから。

 僕は、迷信は、一つの定跡ではないかと思うので、今日は従う。…正直に話すと振り返るのが怖かったからです。


 時間と距離の感覚が麻痺していく。

 暗闇に神経が摩耗していく。


 そんな折、遥か先を動いていた灯りが消えた。


 …見つけた。

 

 あそこがアジトだ。

 

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