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アールグレイの日常  作者: さくら
東方見聞録
102/615

尋問

 いつの間にか、皆んな周りに来ていた。

 [白掌]の灯りを宙に飛ばす。


 皆んなと言っても、ファーちゃん以外は、先程知り合った方達だけだけど。

 陽が落ちた元公園広場に、[白掌]の灯りに、それぞれの姿形が照らされる。

 ファーちゃん、火猿さん、そのお弟子さん、影の人…。


 ギャラリー達は、満足したのか、三々五々帰ったらしい。


 件の子供は大人に囲まれた真ん中で、でシュンとしている。

 

 静まりかえった中、影の人が僕に言う。

 「さて、テンペストよ、試しの儀は終了した。あなたは裏に相応しい実力を示した。よって、裏は貴女に過度な干渉はしてこないでしょう。…それでは縁があれば又。」

 おおっ、影の人、霞のように消えたよ。…ビックリです。

 カラクリが見当もつかない消え方をした。

 世の中には僕の知らないことが沢山あるのだと再認識する。


 さてさて、僕を、見張っていた妙な気配の正体は判明した。

 おそらく[蜘蛛]の一員か、関係者だよね、この子。

 僕に実害は無い。


 でも、このままでも困る。

 ドアーズとキームンの争いを誘導したとしたら、責任の一端も担って欲しい。


 つまり、なんて言うのだろう…このモヤモヤとした胸の中。

 荒らすだけ荒らして、放置ってそれはないだろうって感じ。

 僕の気持ち分かるかな?


 今回、そのツケは僕が払ったのだ。

 まあ、もちろん報酬は貰うけれども、ギルドから。

 だが、そういう問題ではない。

 僕としては、一発ぶん殴って「二度とするな。次はこんなものじゃ済まないぞ。」と啖呵を切ってやりたい。


 でもさすがに、…子供は殴れないよ。

 きっと指図している大人がいるに違いない。

 自分からは前面に立たず、子供を使うところが、更に気にくわない。


 「お名前は何て言うのかな?お姉ちゃんに教えてくれるかな?」

 お子様を怖がらせないように、ニッコリ笑って、まずは名前を聞く。友好、友好。

 途端に男の子の顔が真っ赤になって、口を金魚のようにパクパクしだした。小声で必死になって言葉を紡いでいる。

 「テンペスト…敵…苔蜘蛛様言ってた…敵、でも…悪い人に見えない…守ってた…守るために闘ってた…綺麗、優しい……闘う姿、美しい…きっと良い人分かった、…好き。」

 最後の方は、消えるような声で涙目になってしまった。


 まあぁ、…小さい子から好かれて、素直に嬉しい。

 よしっ、僕はこの子の味方だ。

 …この子は、聡い。

 小さいながらも、大人の言いなりにならず、自分で是非を判断したのだ。

 探知魔法のパターンが、赤と青に明滅してたのは、世話になっている大人の指示と自分の気持ちの板挟みになっている状況を反映させていたのだろう。…可哀想に。


 思わず抱きしめてしまう。

 「ダメ、離して、男女が抱き着いたらダメ、柔らかい、良い匂いダメ…恥ずかしい、やめて。」

 むっ、顔を、真っ赤にしてバタバタしてるけど本気で嫌がっていないとみた。


 「テンペスト様、止めて上げてください。こちらが恥ずかしくなってきます。」

 ファーちゃんから止められた。

 何故?いいではないか。


 子供は、質問に、言葉が拙いながらもポツポツと話してくれた。

 「名前は、シッキムです。テミ・シッキム。僕、小さい時、苔蜘蛛様に拾われました。以来お世話になってます。父、母微かに覚えている。ダージリン家のお屋敷に遊びに行った際、襲われた。…父母僕を逃してくれた。それから会っていない。苔蜘蛛様に恩返しする為、仕事したいとお願いした。渋々手伝わせてくれた。お願い…苔蜘蛛様良い人、酷い事しないで。」

 ファーちゃんが、名前を聞いて驚きの声を上げる。

 「テミ君! テミ君なの?テンペスト様、私、この子知ってます。私がまだこの子位の時、自宅で会っています。私の遠縁に当たる子です。よく無事でいてくれて…。」

 ファーちゃんが涙ぐんでいる。


 えっ、お知り合い!遠い親戚なの?

 そう言えば、何となく華麗な顔立ちとか、庶民的ではない高貴な雰囲気とか…似てるかも。


 テミ君の方も、ファーちゃんを見て、アレッて顔をしている。多分見覚えがあるのかも知れない。

 ファーちゃんが、僕の方に向き直る。真剣な顔だ。

 「テンペスト様にお話しがあります。テミ君の処遇を決める為にも、私の過去を聞いていただきたいのです。」


 真剣には、真剣で対応しないとね。

 …分かりました。聞きましょう。

 ただ、場所を変えましょう。

 周りを見渡す。こんな寒空の暗闇の広場ではね。


 「それだったら、わしの道場に来るか?事情があるんじゃろう。何だったら泊まってもいいぞ。母ちゃんに端末から連絡しとくから遠慮するな。」

 今まで黙って聞いていた火猿さんが、提案してくれた。


 え?!




 ……火猿さん、結婚されてたんですか?



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